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身近に迫る危機…有事の際はどこに避難する?

【独自解説】もし、日本に“ミサイル”が来たら…国民保護法に基づく「緊急一時避難施設」に「地下施設」が少なすぎる現実 日本は本当に安全な国なのか?

 ロシアのウクライナ侵攻や、北朝鮮がミサイルを発射するなど、すぐ身近に危機が存在する島国・日本。そんな日本にも“有事の際に身を守る場所”があるのをご存じでしょうか?

 実は、全国に約5万か所、「緊急一時避難施設」があるのですが、そのうちミサイルの攻撃から身を守るのに有効とされる「地下施設」は、東京の港区ではわずか1か所、新宿区では“ゼロ”というのが現状です。はたして日本は安全だと言えるのでしょうか?陸上自衛隊で陸将も務められた元東京都危機管理監、田邉揮司良(たなべ・きしろう)さんと、軍事ジャーナリストの黒井文太郎(くろい・ぶんたろう)さんが解説します。

ロシアのウクライナ侵攻の影響 日本の安全保障に懸念

日本周辺の情勢悪化 ウクライナ侵攻の影響も懸念される

Q.世界情勢を見ていると、日本は色んな国と隣国という地政学上、一歩間違えると危ない国ですよね?
(元東京都危機管理監 田邉揮司良さん)
「はい、おっしゃる通りだと思います。北朝鮮の金正恩総書記の妹・金与正氏の『軍事的対決を 選択するならば、我々の核戦闘兵器は任務を遂行することになる』という発言、朝鮮半島がありますよね。それから、ウクライナへの侵攻で今、懸念されているのは、やはり台湾の情勢に対する教訓をどう日本は取り入れていくのかということ。もう一つはウクライナの安保政策です。同盟はないですが、非核・専守防衛という日本と重なるような部分がありますので、その中で我が国は今後どうしていくか、まさかの事態にどう備えていくのか、というのが重要だと思います」

“ミサイル対策”は大丈夫?…日本の「緊急一時避難施設」の実態

日本のミサイル等の「緊急一時避難施設」

 今回のウクライナ侵攻で、多くの市民が避難した地下鉄やシェルター。日本では、政府が2021年度~2025年度の5年間を避難施設指定の集中取り組み期間に定め、緊急時の避難先を増やし、国民に周知させる動きを進めています。

 2021年4月1日の段階で、全国の「緊急一時避難施設」は、5万1994か所あり、そのうちミサイルの攻撃から身を守るために有効とされる「地下施設」は、わずか1278か所。施設の指定が進まないのは、「管理者が複数いて許可を取るのが難しい」ことや「避難施設として対応してもらえない」、「もともと地下が少ない」といった課題があります。

元東京都危機管理監 田邉揮司良さん

Q.地下でも管理者が複数いたりするケースは多いのですか?
(田邉さん)
「はい。例えば東京駅の地下で考えて頂くと、地下鉄の管理者、商業ビルの地下街とそれを繋ぐような地下の歩道等がありますが、それぞれ管理者が違います。適応される法律も違うということで、そこを総合的に避難所とするためには多大な理解と労力がいるように思います。これを一方的にまとめるのは非常に難しいと思います」

軍事ジャーナリスト 黒井文太郎さん

Q.仮にミサイル攻撃があった場合は、地下鉄の駅や地下街に降りるのが良いのでしょうか?
(軍事ジャーナリスト 黒井文太郎さん)
「そうですね。避難所としては、特に核ミサイルなどが来た場合には圧倒的に地下がいいです。」

Q.例えば、北朝鮮からミサイルを発射したら何分ぐらいで日本に着弾するのですか?
(黒井さん)
「10分弱ですね」

Q.「Jアラート」はどれぐらいで鳴るのですか?
(黒井文太郎さん)
「数分で鳴るとは思いますけれども、そこからとにかく、近くのビルに入るということになりますね」

有事の“ミサイル対策”は? 神戸で“日本初”の取り組みも

民間の地下施設を「緊急一時避難施設」に指定(兵庫県神戸市)

 2022年2月、兵庫県の神戸市は、民間の鉄道事業者を含む地下施設を、まとめて「緊急一時避難施設」に指定しました。これは全国初の試みで、阪神・淡路大震災以降「有事の際には協力しよう」という民間企業が立ち上がって、指定につながったということです。田邉さんによると「どこにいても近くに避難施設があることを確認できる」ことが指定するメリットとする一方、「一時的な避難にしか対応していないので、中長期に滞在できる場所が新たに必要」という課題もあるということです。

ミサイル着弾への備え 「核シェルター」とは

「核シェルター」 日本では“普及率”が低い

 着弾に備える「核シェルター」の世界の普及率は、イスラエルや、設置が義務化されているスイスでは100%、ノルウェーやアメリカは高い水準なのですが、日本はわずか0.02%、1万人いて逃げられる人は2人という計算になります。田邉さんは「日本でもまず公的施設から核シェルター導入や義務化の議論が必要では」といいます。

ウクライナ侵攻後 日本でも「核シェルター」の注文急増

 そんな中、日本でも「核シェルター」の注文が急増しています。「核シェルター」を取り扱う「ワールドネットインターナショナル」に話を聞くと、ウクライナ侵攻後1か月で、問い合わせが150件、注文が10件あったということで、年間の注文が12~13件だった2021年と比べると、実に10倍の注文を受けているということです。このような「核シェルター」は、放射性物質、生物兵器、化学兵器から守られ、耐震、そして爆風などにも対応しているということです。

Q.「核シェルター」の導入、「核シェアリング」などについて日本では議論が遅れていますよね?
(田邉さん)
「全然できてないですね。やっぱりそこを避けてきているところがあると思います」

Q.日本では、「軍事的にアメリカは守ってくれるんだから」とか、こういう議論しようとすると「戦争前提にしているのか、それは憲法9条に反する」という意見もあってタブー視されてきたところもあると思いますが、どう思われますか?
(黒井さん)
「そうですね。そういった議論も、もちろん必要なんですけれども、私は立場上思うのは、やはり政治ですよね。責任逃れみたいな話で、政治が後ろ向きになってしまう。ここは本当に反省してほしいなと思います」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年4月7日放送)

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