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【独自解説】”統一教会“が元信者に「念書」を返還 鈴木エイト氏「首相の発言が教団にとってダメージ」対応が変化した背景を解説
2022年12月13日 UP
12月10日、“統一教会”の被害者を救済する法律が成立しました。そんな中、献金を自主的に行った証拠として教団側が信者に求めていた「念書」が、一部の元信者に返還されていたことが分かりました。教団の対応が変化した背景には、いったい何があるのでしょうか?鈴木エイト氏が解説します。
岸田首相の国会での発言が「教団にダメージ」
“統一教会”の「念書」というのは、献金をした信者に対して「献金は強制ではなく、自主的にしたものだ」ということの、念を押すために書かせたものです。過去には、教団側が献金などの返金を求められた裁判の時に、信者の自主的な献金である証拠として、「念書」や「動画」を自ら出していました。ところが、11月29日に岸田首相が国会で、「念書を作成させ、あるいはビデオ撮影していること自体が、法人等の勧誘の違法性を裏付ける要素の一つとなる」「民法上の不法行為に基づく損害賠償請求が、認められやすくなる可能性がある」と発言しました。また、困惑した状態で意思表示していたとしても「効力は生じないと考える」とも発言しています。
Q. これまで教団は、自主的な献金だということを示すため、にこうした証拠を作っていたということですが、今後は逆に違法性を裏付けてしまうということでしょうか?
(鈴木氏)
「教団が、信者にこういった『念書』を書かせる理由は、裁判対策の前に脱会者からの献金返還自体を諦めさせる目的もある、といわれています。そんな中で、岸田首相の発言は非常に重要で、教団にとってはかなりのダメージになったと思います」
発言を受けてか?「念書」を返還された元信者も
この念書を教団が返還した、という事例が出てきています。8年前に“統一教会”に入信したA子さんは、今年11月に脱会したのですが、入信中に現金や物品の購入で2500万円ほどを教団に渡していました。今年9月上旬から10月下旬にかけて、顔見知りの信者二人が何度も訪ねてきて、「返金を求めない」という旨の念書へのサインを迫ったため、A子さんは嫌々ながらも、念書にサインをしてしまいます。その後、A子さんは11月18日に、教団からの脱会を決意して念書の撤回を求める手紙を地元の教会長宛に出しました。すると、婦人部長ら二人が家に訪ねてきて、「A子さんのように返金を求めた人が別にもいたが、その方の息子さんが自殺された」と言われたそうです。しかしその後、11月の30日の消印で、教会長からその念書の原本が郵送で送り返されて来たということです。これについて、A子さんの代理人の中川亮弁護士は、「岸田首相の答弁もあったので、念書が違法性を際立たせる証拠になってしまったと思ったのでは」と話しています。29日の岸田首相の発言を受けて翌30日にすぐ返却したのではないかといいます。
Q.教団は、かなり政府の動きを見ているのですね。
(鈴木氏)
「教団は、こういう国の動きであるとか、社会の動き、世論の動きに非常に敏感に動いています。『解散命令請求をしないでほしい』という嘆願書を書いたり、各地の地方議員に対して『教団は反社会的団体ではありません』というような内容の手紙を書いたりもしています」
Q.中川弁護士の「念書が違法性を際立たせる証拠になってしまったと思ったのでは」という意見についてはどう思われますか?
(鈴木氏)
「教団の動きは、非常にわかりやすいですね。この流れからして、教団が念書を持っているのは非常にまずいと感じて、これを返したのでしょう。しかし、返したことによってこの念書がなくなるわけではありません。念書が被害者の手元にあることによって、今後裁判を越した時に、岸田首相が言う不法行為の証拠として原告側から出せるという事は、逆に教団側に不利に働くと思います」
Q.教団は岸田首相の発言の後、どういった動きを見せると思いますか?
「教団は法整備であるとか、国の動きに対してそこの抜け道を見つけ、どうすれば罪に問われないか、不法行為に問われないかという事を考えています。今回の法案に関してもかなり詳細な分析をして対応してくると思います」
ミヤネ屋はこの件に関して、なぜ念書を返却したのか“統一教会”に問い合わせましたが、回答は得られませんでした。
会見で流された元妻の映像に抗議した橋田さんに教団が反論
10月に教団が会見を開いた時に、教団の被害を訴えている橋田達夫さんに対して、橋田さんの元妻の女性信者の映像が流されるという事がありました。これに対して橋田さん側は、「会見で突然、元妻が話す数分間の映像を流し橋田さんを非難。橋田さんの言論封殺だけでなく、同様に声を上げようとする者への委縮効果を狙ったものと言わざるを得ない」と抗議をしました。これに対して、教団は「映像については、元妻が事実のままを述べたものです。また映像の公開は、元妻の了承のもとに行ったものです。よって、何ら問題ないと考えます。橋田達夫氏に対する言論封殺の意図もありません」と反論がありました。
また、10月の会見で、教団の勅使河原本部長は「何が起きたか真摯に耳を傾けて、そして事実関係を明確にして、私たちが改めることは改めて、返金が必要であれば返金に応じるということが基本であります」と語りました。これを受けて橋田さんは、元妻の献金が教団の問題視する“過度な献金”にあたるかを確認するため、元妻の献金について情報開示請求をしました。それに対して、教団側は「元妻の献金について、返金しなければならない事情はないと考えています。また、献金額を開示すべき理由もないと考えています」と印鑑もないA4の紙1枚で返答してきました。これに対して橋田さんは「紙切れで判も何もないじゃないですか。これが回答書と言えます?こっちの意見を全く聞いてないじゃないですか」と憤っています。
Q.教団のこの回答をどうみますか?
(鈴木氏)
「元妻の献金額などの開示をしてしまうと、教団に不利なものが出てくると危惧しているじゃないかというのが読み取れます。組織性であるとか、違法性であるとか、社会通念上問題である行為が出て来そうな感じがします」
Q.会見では勅使河原本部長は「被害者に向き合う」という発言もあったのですが、どうしてこういう対応になってしまったのでしょう?
(鈴木氏)
「表向きは向き合うといいながら、完全に情報を開示してしまうと、教団に不利なものが出てきてしまうという事です。教団のメンツを保ちつつ被害者に向き合うというのは、勅使河原本部長にとっても苦しいところだと思います。そもそも教団は相手を被害者だとは思っておらず、教団の対応は非常に不誠実に見えます」
(情報ライブミヤネ屋2022年12月8日放送)