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【独自解説】組織委元理事が“みなし公務員”の規定「知らないはずがない」特捜の強気捜査は「内通者により物証抑えている」五輪汚職問題の今後を弁護士が解説
2022年8月19日 UP
東京オリンピック・パラリンピックの大会スポンサー契約をめぐり、大会組織委員会の元理事・高橋治之容疑者が「受託収賄罪」の容疑で逮捕されました。また、大会スポンサーだった紳士服大手「AOKIホールディングス」の前社長ら3人も、賄賂を贈った疑いで逮捕されています。夢の舞台の裏で起きていた、不透明なカネの流れ…今後の捜査のポイントを、亀井正貴弁護士が解説します。
2017年、高橋容疑者が代表を務める会社が、「AOKI」とコンサルタント契約を結びました。そして2018年に、「AOKI」側は組織委員会とスポンサー契約を結び、公式ライセンス商品を販売することになります。高橋容疑者は、この大会スポンサーの契約などを巡って便宜を図るように依頼を受け、その見返りに現金5100万円を受け取った疑いが持たれています。
今回の逮捕理由の「受託収賄罪」とは、刑法第197条第1項で「公務員はその職務に関し賄賂を受け取ると罪に問われる」というものです。大会組織委員の理事も、法律で“みなし公務員”と定められていて、職務に関する金銭の受け取りが禁止されています。
Q.今回の事件のポイントはどこですか?
(亀井弁護士)
「お金の流れは明白なので、このお金の趣旨です。高橋容疑者の『理事』としての職務権限の、何を期待して『AOKI』側が依頼したかが問題です」
Q.今後の流れはどうなるでしょうか?
(亀井弁護士)
「状況証拠的には、高橋元理事が電通もしくは組織委員会に対して影響力を行使したのではないかと考えられます。最近の捜査では、“ライン”や“メール”などで『賄賂の趣旨=何を頼んだか』の物的証拠を支えにして、供述を得ていきます」
高橋容疑者は「『AOKI』から受け取った資金は、オリンピックとは無関係のコンサル業務の正当な報酬だ。理事の仕事は契約を結んだコンサル業務とは別なので、オリンピックとは無関係だ」と否定しています。
「AOKI」側の青木容疑者は「高橋氏の人としての力に期待した」と、資金提供を認めています。「AOKI」側は、コンサルタント契約をした後、都内の飲食店で高橋容疑者と面会して、オリンピック関連の要望をまとめた書面を直接手渡し依頼した疑いがあります。
Q.この「書面」というのはかなり強い証拠になりますよね。
(亀井弁護士)
「受託収賄というのは、相談事を具体的にお願いするということなので、『書面』はかなり強い物証になります。出てきたら弁解をするのは難しいと思います」
Q.高橋容疑者は「自分はみなし公務員だとは思わなかった」と言っているようですが…
(亀井弁護士)
「受託収賄罪は、“送る側”と“受け取る側”の両方が認識していないと犯罪が成立しません。どちらかが『私は公務員ではない』『この人は公務員ではない』となると、受託収賄罪が成立しません。しかし今回の場合、どちらも大きな組織の長ですから、周りにサポートする人間がいるはずで、その人が“公務員性”についてチェックしていないことはないと思いますし、その物証もどこかにあるはずです。高橋容疑者は長年スポーツビジネスをやっていて、この立場が“みなし公務員”だと知らないはずはないと思います」
また新たに、大会のスポンサー集めをしていた電通の関係者から「スポンサーの正式決定前に、高橋容疑者から『スポンサーは「AOKI」に決まったからよろしく』と言われた。すでに決定した話だった」との証言が出ました。東京地検特捜部は「AOKI側がスポンサーになれるよう、電通に働きかけていた可能性がある」として捜査しています。
Q.特捜は強気ですが、自信があるのでしょうか?
(亀井弁護士)
「多分内通者がいるはずですので、物証は抑えてあるでしょう。物証を抑えた上で身柄を拘束しています。後は、その物証に沿うような供述を得ていく作業になりますので、かなり自信があると思います」
(情報ライブミヤネ屋2022年8月18日放送)