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#6689月25日(日) 10:25~放送
ペルー

 今回の配達先はペルー。伝統舞踊「マリネラ」のダンサーとして奮闘する菊田真志さん(29)へ、奈良県に住む父・正人さん(67)の想いを届ける。正人さんの妻で、真志さんの母であるロサさん(57)はペルー人。母国に不動産を所有するロサさんは、維持管理のため日本とペルーを行き来する生活をおくっていたが、コロナ禍でこの3年ほどは日本に帰れていない。現在はマリネラ発祥の地として有名なペルー第三の都市・トルヒーヨで、ロサさんと真志さん、妻のモニカさん(28)が一緒に暮らしている。日本に1人残る正人さんは、ペルーに移りたいというものの、「身体が動く間は日本で稼いで、みんなを支えてあげないとだめかなと思っています」と状況を明かす。
 男女ペアで恋の駆け引きを表現するマリネラは、ペルーでは学校でも習うほど身近なもので、子どもから大人までが情熱を注ぐ国民的ダンス。真志さんとペアを組むモニカさんは、この地で開かれる世界大会出場を目指している。日本の大会では8回も優勝した実力者の2人だが、ペルーではまだ地方の予選ですら結果を残せていない。マリネラは即興性が高く、本場のダンサー達と戦うにはブレないメンタルが必要とされる。しかしモニカさんは決してメンタルは強い方ではないといい、またレッスンを受ける先生からは、「テクニックはトップレベルながら息の合った情熱的な表現力がまだ足りない」という指摘も。2日後に大会の予選を控える中、真志さんは「ちょっとピンチかな」と本音を漏らす。
 奈良で育った真志さんは、21歳のときに母の故郷を知りたいとペルーへ留学。そこで初めて見たマリネラに強い衝撃を受け踊り始めた。当時、たまたま隣のスタジオで別のダンスを習っていたのが、東京育ちでアメリカ人の祖父を持つクオーターのモニカさんだった。留学中の1年間、みっちりとマリネラを学び、帰国後も会社に勤めながら踊りを続けていた真志さん。しかし「このまま終わってしまったら、自分の人生として完成しない」と3年前、夫婦で仕事を辞め再びペルーに渡った。目標は世界チャンピオンになること。そして、「日本にもっとマリネラを広めたい。世界大会の一角を日本選手団みたいな形にして、『日本はマリネラの強い国だよね』と言われる…。それが生きている間にできたら最高ですね」と夢を語る。
 迎えた地方予選。優勝すると、全国大会へのシード権がもらえる大切な大会には15組が出場し、半分が準決勝に進める。練習では息が合わないままだった真志さんとモニカさん。しかし本番ではステップもピッタリ決まり、まるで別人のようなダンスを披露する。「楽しかった!」「今までの踊りの中で一番良かった」と、これまでにない感情と手ごたえを感じ、結果発表を待つ2人。まずは予選を通過して準決勝に進めるのか。さらには決勝への切符をつかみ取ることはできるのか…。
 覚悟を決め、日本を飛び出し夫婦二人三脚でマリネラに打ち込む真志さんとモニカさんへ、父からの届け物は故郷の奈良で有名な芸能の神社である天河大辨財天社のお守り。添えられた手紙には「マリネラは、楽しんで踊る事が一番です。2人の呼吸をあわせることも大切ですが、緊張することなく、楽しく踊れますように御参り、御祈りをしてきました」と綴られていた。モニカさんは涙ぐみながら「今までで一番楽しくできたのは、お父さんがお願いしてきてくれたからだったんだ」と感謝。真志さんも、「できるだけ早く、僕らだけで安定した生活ができるようにしたいし、だからといってマリネラを諦める訳ではなく、早くいい結果を両親に見せたいなと思いました」と決意を新たにするのだった。