ヘッダー Space『サッカーの国際政治学』
(小倉純二、講談社現代新書:
2004、7、20)
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実は2年前に出た本。なかなか読めずにいたが、ワールドカップ・イヤーの今年のうちに読んでおかねば、と頑張って読んだ。読んでみると、日韓共催の舞台裏やJリーグ立ち上げの舞台裏など、川淵キャプテンの懐刀として日本サッカーの縁の下を支えてきた小倉氏の貴重なコメントが満載。
たとえば、日韓共催ワールドカップの際、日本のスタジアムの女性トイレには洋式が少ない点が指摘されていたことなども記されていて、国際競技を行なうスタジアムは、競技以外の面でそういったことも必要条件になるのだな、と思った。指摘を受けて調べたところ、ワールドカップ開催の日本の10会場の女性用トイレの総数は2941、うち洋式は1557、和式は1384。大阪・長居スタジアムは、洋式が33.1%しかないということも分ったそうだ。知らなかったなあ。
また、日本サッカー協会の面々が、アベランジェ(当時のFIFA会長)派だったことが禍いして日本単独開催がなくなった事情や、票の取り合いに関するFIFAいわば「なんでもあり」という国際舞台の事情などが興味深く、なるほどサッカーは「国際政治学」なのだなあ、と。小倉氏は政治家っぽくないけど、川淵氏は十二分に政治家っぽい。小倉氏は政治家の秘書という感じか。
そのほか1997年11月、フランスワールドカップの最終予選、ソウルでの韓国戦でのチャムシル・スタジアムで「LET'S GO TO FRANCE TOGETHER」という横断幕を見たとき、「韓国のサポーターがこれほど親近感を持ってくれたことはかつてなかったことだ。私は自分の目を疑う同時に、胸に熱いものがこみ上げてくるのを禁じえなかった。」(67ページ)とあるが、そのスタジアムに、私もいた。その横断幕を見た時に同じように感じた。それだけに、この本の著者にも親近感を覚えた。

★★★

(2006、8、7読了)

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