「交ぜ書き」というのは、この本のタイトルのように、「完璧」を「完ぺき」、「拉致」を「ら致」、「憮然」を「ぶ然」、「毅然」を「き然」と、熟語を「平仮名と漢字を交ぜた書き方で書かれた熟語」のことである。なぜこんなことになるかと言うと、新聞や放送、お役所など、公的な場所の文章で使う漢字は、「常用漢字表」に載っている1945字を基準にして、それ以外の漢字はなるべく使わない、もし使うならルビを振るという原則があるからだ。しかしその原則によって、不自然な「交ぜ書き」が生まれ、意味がとらえられなくなる愚を犯している、熟語は漢字で書くべきである!とまあ、そういう主張が世の中にはあるが、この著者はそれを強く主張している。私の知り合いで、元・産経新聞校閲部長(現・論説委員、特別記者)の塩原経央さんも、以前から強くこのことは主張してらした。
基本的には正しいと思う。特に「ゆとり教育」の揺り戻しの中で「漢字は覚えないと!」という意見には、今、力がある。要は「程度問題」だと思うんですけどね。
中には、恐らく「交ぜ書き」によって、間違った意味が使われて定着するようになったと思われる言葉もある。上にも挙げた「憮然」だ。この「憮然」の「憮」を平仮名で書くことによって、「ぶ然」となり、「憮」の持つ意味が感じられなくなり、「ぶ」という音声の持つ「ブスっとした」「ブーブー言う」などの「音の持つイメージ(=不平・不満を言う)」が定着して、言葉の意味が変わってしまったのだと思う。これは、ちょっと、困る。 |
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