• 『アニ民312人目』小説家・柳内たくみさん
  • 『アニ民312人目』小説家・柳内たくみさん

  • 2017.10.26

今週のアニ民は小説家・柳内たくみさんです。柳内さんとは仕事でのつながりではなく、各種の食事会などで出会えました。仕事での共有点はないのですがやはり業界内の共有友人は多く、「出会うべくして出会えたな」という印象が強い作家さんです。

柳内さんの代表作「ゲート 自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」はファンタジー小説というジャンルになるようです。しかしその小説の舞台設定の異色さや登場してくるモンスターにはそう言えても、実際に派遣される自衛隊の戦い方はその武力も含めかなりリアルなもの。これは自衛官経験のある柳内さんだから表現できるもので、実際その世界観が多くの読者に支持されています。

柳内さんは東京生まれの東京育ち。自衛官を志し数年にわたって経験を重ねるも、医療分野に目覚め精神科病院に勤務。そして患者さんの必要に応じて鍼治療も勉強し、メンタル系の鍼灸院を開業、それが4年続くことになりました。特殊な領域の医療分野で奮闘するも、本人いわく「経営的な才能が欠けてた」そうで、残念ながら撤退を余儀なくされる。でも病院などで患者さんのカルテを書くにあたって、医療に必要な患者との会話を文章に落としていくのがすごく役に立ったと言います。すなわちメンタル問題を抱える患者さんたちの突飛な表現を、少し置き換えて多くの医師にも伝わるようにしたためる、これが明らかに小説を書く修行につながった、なんて、なんか普通じゃありません。

柳内さんとお話するとミリタリー分野の知識の豊富なことに驚かされます。最近は64式銃が部品が落ちやすく、黒ビニルテープでぐるぐる巻いてあることが多い(カッコいい)話や、今はそれが89式銃と型が代わって主流になってる話とか。この64と89はそれぞれ開発された年代だそうです。

なので先日、ボクの友人の紹介で、その友人とリアルな防衛省 陸上幕僚監部のスタッフ二人と柳内さんの5人で食事したのですが、そのお話が奥深くて面白いのなんの。劇場版「名探偵コナン 絶海の探偵(プライベート・アイ)」では海上自衛隊の方々にお世話になりましたが、この分野ではまだまだ面白いネタ?が転がってるんだな、と再認識。いや、慎重に扱うべきものではありますが。やはり経験者であり、小説でそれを表現している柳内さんに対しては、現役で現場で汗をかいている人たちも一目置かざるをえないですよね。そしてその人たちのお話をさらに小説に取り込んで生かしていくという、柳内さんならではの作家としての素敵な循環を成していく、ああなんて理想形なんだ!ですよね。

そんな柳内さんにボクのラジオ「スワラジ」に出演してもらいました。表現する形態は小説とアニメと異なっても、面白さをどう伝えていこうかという努力は同じです。小説家としての柳内さんのスタートは鍼灸院勤務のころからの小説投稿サイトだったそうです。2006年連載開始した小説「自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」その面白さにまずネットユーザーが着目。それが高じて文芸出版のアルファポリスから出版されることになります。そして「GATE自衛隊 彼の地にて、斯く戦えり」は2015年7月にアニメ化、その制作の際には、柳内さんはアフレコ・ダビング、なんと全話参加されていろいろと監修されたとか。確かに作品世界の中で使われる言葉のイントネーションなど、実際の自衛隊でのそれを表現するのがいかに大切か、ボクも前述の劇場版コナンでしっかり体験してます。というわけで、その辺も含めて今からでもじっくり見たいと思います。

今年は新シリーズ「ゲートSeason2自衛隊 彼の海にて、斯く戦えり」(抜錨編)を刊行。今度は舞台を海上自衛隊に移して怒涛の新展開、そしていずれサイコサスペンスな分野にも進出していきたい、とおっしゃる柳内さん。これからもメチャ楽しみですが、それらの作品世界の魅力はともかく、ボクら仲間との飲食世界の魅力はこれからもさらに深く掘り進めていかせてくださいね。