• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民61人目
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  • 2010.10.07

 今週は小学館集英社プロダクション 故三野裕久さんです。

 どこがどうしてこんなことになってしまったのでしょうか。何がこのような運命を定めているのでしょうか。僕は今回のアニ民の三野さんに故の文字をつけるのがつらくて仕方ありません。ここではいつものように三野ちゃん、と呼ばせてもらいます。

 僕が三野ちゃんと初めて出会ったのはTVアニメ「YAWARA!」の頃でした。当時の小学館プロダクションは「ドラえもん」版権関係業務が中心で、他の多くの作品に対する業務比重があまり大きくなかったような気がします。その当時、小学館ビッグコミック・スピリッツ「YAWARA!」編集者・奥山さんを中心にした編集者チームや、われわれアニメ制作チームが一緒にいかに面白い作品を作っていこうか、と頻繁に交流してた中に徐々に溶け込んできたのが三野ちゃんだったように思います。

 その後「少年サンデー」の担当になると、メキメキ頭角を現してきましたよね。本来クリエイティブ志向もあった三野ちゃん本人が持つ芯の強さ固さを、そのソフトな物腰に包んでのもの言いが何かととっても説得力を持ってましたね。しかも常に冷静たらんところがあってホント頼もしかったなあ。そうやって20世紀の時代から、いわゆるキャラクタービジネスを新しい時代へといざなっていくチカラがありましたね。「名探偵コナン」はまさにそんな三野ちゃんに率いてもらった代表作のひとつだと思います。

 子供の頃から野球をやっていたそうで、身体ががっしりして大きくてスポーツマンタイプな三野ちゃんは、見た目どおりで運動神経抜群。とくにゴルフの腕前がすんごい。同じ場所から同じボールを打ってるのになぜ僕とこんなに飛距離が違うのだろうか、と思ったことはありましたがすぐに「僕は、飛距離は三野ちゃんの半分でいいや」と思うようになる始末。楽しい会話と目の覚めるようなプレイを何度楽しませてもらったことか。

 海外で交通事故に巻き込まれてつらいリハビリ生活を送ったことがありましたね。でも復活した三野ちゃんからはその後遺症など微塵も無く、相変わらずの楽しい会話と見事なショットに本当に驚いた記憶があります。みんな冗談で、「あんなにボールが飛ぶには、事故のあと三野ちゃんは身体の中に大きくとぐろをまいたバネをしこんだんだ、だから三野ちゃんが飛行機に乗る前の金属チェックには必ずひっかかってしまうんだ。」なんて言ってたことも思い出されます。

 川越の広大な施設に設けられた祭壇にはいつもの三野ちゃんがいました。手前に飾られた野球道具やゴルフクラブが妙にきれいなのはちょっと悲しかったです。こんな結果になって一番驚いているのはやっぱり三野ちゃん本人でしょうね。とにかく僕らは一緒にがんばった作品同様、三野ちゃんを忘れません。仕事に遊びにいっぱいいっぱい本当にありがとうございました。享年43歳。今はただ安らかにお休みください。