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『アニメ村のステキな住民たち』アニ民62人目
- 2010.10.14
今週はワーナーミュージックジャパン社長 故吉田敬さんです。
このアニ民連載、正直言ってこのようなカタチになることを想定してませんでした。本当に残念ではありますが、今週も僕個人の私信のような追悼文になってしまいます。それにしても先週のみのちゃんの時もそうですが、人間の運命とか宿命とかいったい何が影響して道が定まっていくのでしょうか。僕には10月8日午後3時ころのあまりの急な訃報に厳しく脱力、未だ一種の無常感にさいなまれています。
吉田さんを“アニ民”と呼ぶのに?の関係者もいるでしょうね。実は1997年のTVアニメ「ガンバリスト駿!」のスポンサーの一社はソニーミュージックだったのですが、その窓口として主題歌などを担当してくれました。オープニング曲は「キラキラ キセキ」REDIEAN MODO、エンディング曲は「天使のラブソング」NOKKO、「ミラクル」プロペラの2曲でした。この番組では他の2曲はもちろん、特にNOKKOさん楽曲に尽力してくれました。
楽曲のタイアップ宣伝マンとしてその数年前から存在は知っていましたが、その売込みが他のスタッフとはちょっと違っていたような記憶があります。売り込む相手にもよるとは思いますが、一緒に会話してるときプレゼンする楽曲と吉田さんの距離が近いのは当然、話をされている僕らもいつの間にかそのエリアに入れられているのです。その感覚で一番記憶に残ってるのが古内東子さんのプレゼンでした。
1996年4月から放送されたYTVドラマ「俺たちに気をつけろ。」の挿入歌となった「誰よりも好きなのに」を僕の先輩・藤井裕也プロデューサーと一緒に
初めて聞かせてもらったのは新宿の普通のカフェ。その時間だけ貸しきられたお店のグランドピアノで、ご本人による生演奏に僕らが心惹かれてしまったのは言うまでもありません。
ソニーの中で独立してデフスターレコードの初代社長に就任したのには正直驚きました。失礼な物言いに聞こえるかも知れませんが、それまでのつきあいの中で経営者としての吉田さんの顔がちょっと想像できなかったのです。でもCHEMISTRYや平井堅・ブリグリらを育て、格別の地位を築いちゃうんですもんね。その手腕を請われて2003年ワーナーミュージックの社長になった時にもやはり驚かされました。いずれの時期にも藤井さんと一席設けて、吉田さんの野望なんかをちょっと茶化しながらも楽しく食事したことを覚えています。
狙ったアーチストのタマゴを口説きに行く時の新幹線での心構えとか、社長としてというより現場のスタンスでの絶妙な語り口に料理もお酒も一層おいしくなりました。「外資系はいろいろちょっと大変だね。香港に自分の業績評価をされに行ってくるよ。」その大変さがいかばかりなものかは解りません。部外者の僕らにそれを分けられる部分なんてあるとも思えません。そして単純にその大変さに追いやられていたとも思えません。今はただ訃報を知った時の衝撃の大きさと、その拭い去れない余韻をこの身の内に感じてることが必要かと思っています。もっと何度も御一緒したかった…。享年48歳、心より御冥福をお祈りいたします。