• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民91人目
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  • 2011.05.19

 今週は講談社 元専務取締役 五十嵐隆夫さんです。

 講談社のマンガ雑誌を牽引し、マンガ出版界に君臨されて来た五十嵐さんに初めてお会いしたのは何時だったでしょうか。もちろん「金田一少年の事件簿」の時はしっかりお話しさせてもらってますが、その何年も前から完全に雲の上の人としての存在でした。「少年マガジン」編集長時代は1986年から11年にもおよんだ、ときいております。その時期前半にお目にかかってるはずですよね。

 そのマンガ界に残された功績は莫大なものがありますが、僕にとってはまず金田一であり、それから現小学館常務取締役・亀井修さんと大きく対を成された人物です。日本の超大手出版社である講談社と小学館、そのトップ同士が見事にライバルな立場にたち、お二人の力量もハタから見て完全に拮抗してたように思えたものでした。

 あれは金田一とコナンが同時に放送されてた時期のこと、「天下分け目の決戦」なる身内のイベントをしたことがあります。簡単に言えば「少年マガジン」VS「少年サンデー」の戦い。プライベートゴルフのチームバトルに僕らTV局スタッフも参加、ゴルフに対しては見事に平等なルール下において、マジに激しい戦いを繰り広げたのです。戦いの結果報告は差し控えますが、こんな事が出来たのも五十嵐さん亀井さんの、ステキなライバル関係があってこそ。思えばマンガではなくアニメのスタッフにも差別無く暖かく、そして作品に対しては厳しく指導してくれました。

 そのライバルな二人、記憶に新しいところではマガジンサンデー創刊50周年記念の様々なイベントでしょうか。その当時アニメ日記にも書いたのですが、僕はこの二大少年誌とひと月違いのまったく同い年。50歳となる時期の記念イベントは僕にとっても自分のことと重なり記憶に残るものでした。大きなパーティーも催され、その象徴ともなるTV番組「カンブリア宮殿」で雌雄を決するがごとく論舌をかわされてたのが、二人ともきわめてかっこよく印象的でした。

 五十嵐さんは「天才バカボン」赤塚不二夫先生の名作ですが、その初代担当編集者だったそうです。もう話を聞くだけで僕なんか震えそうな歴史ですよね。「ウナギイヌ」キャラクターの誕生とか、五十嵐さん独特のウラ話こぼれ話には、今の記憶の中でも輝いてる何かがありました。少しトーンの高い声で弾丸のように語る五十嵐さんのエネルギーに圧倒されながら、その体育会系?説得力に心地よいものを感じてたのは僕だけじゃあないはず。

 このほど45年にわたる講談社における最前線から退かれた、という手紙をいただきました。書中にある“これまでのご支援に深く感謝申し上げます”の文章に、思わずこちらこそ!の気持ちがほぼ条件反射にこみ上げます。長い間のご活躍そしてご指導を、本当にありがとうございました。

 先述の「カンブリア宮殿」の中で、五十嵐さんは特にマンガの未来について語ってましたね。大先輩編集者としてその後数年のマンガ界アニメ界はいかがでしょうか。どうかこれからも機会あるごとにご意見をいただけますよう、よろしくお願いいたします。