• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民100人目
  • 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民100人目

  • 2011.07.21

 ジャーン!というわけで記念すべき100人目はどうしてもこのお方で行かせていただきます。声優・田中真弓さんです。ここではいつものように真弓ねーさんと呼ばせてもらいます。

 真弓ねーさんと初めて出会ったのは1985年11月、僕のデビューアニメ「ロボタン」のオーディションでした。めでたく九官鳥のキーコという役をお願いしたのですが、その時点からその相方ボッチ=坂本千夏さんと共に役柄はもちろん、普段もけたたましくもにぎやかな人柄とずっと付き合うようになったのでございます。

 その次の年、真弓ねーさんの結婚式に招かれました。って言ってもフツーの式ではございません。普通の式はあったのでしょうが僕が見せていただいたのは「渋谷エピキュラス」という舞台であった「田中さん新婚夫婦馴れ初めショー」だったのです。満席の数百人の前で繰り広げられたのはその日限りのミュージカル。でも本人たち含め役者仲間の三ツ矢雄二さんたちが完璧な一本の演劇として約2時間、もう立派な興行公演そのものだったのです。この公演までに如何な労力が必要だったことか。まだ20代だった僕は、この業界は例えば役者だったら結婚するのにもここまでしなくちゃいけないのか…的な感想を持ったものです。で、今は立派な母子家庭!ってのは本人談であります。

 本人の自叙伝『ぶさいくに生きて、そこそこ幸せをつかむ法』はその当時に読ませてもらいました。タイトル表現はご謙遜に違いないのですが、ご自分にハンディキャップがあるとして、それを予想のつかないところから持ち出して爆笑を誘うという見事な技は何度見ても飽きません。そしてそれらをぶさいくと言ってのけるその余裕がまたねーさんをでっかく見せます。

 僕と真弓ねーさんとは時間を重ねるうちに、基本的にお仕事では会わない=お仕事をしない的な握りになっていました。たとえば「名探偵コナン」「犬夜叉」には出演してもらってません。「結界師」で雪村時子をお願いするまでは「金田一少年の事件簿」「ブラック・ジャック」などで少しお付き合いしてもらった程度。「ロボタン」でもそうなのですが、真弓ねーさんはどうも人間以外のキャラを得意とする分野に思われがちなようで、僕の番組では「ロボタン」以外は基本的に人間を女性を演じれる!ってことに喜んでくれてます。

 それにしても真弓ねーさんは心底舞台女優です。まだ渋谷に「ジャンジャン」っていう小屋があったころから「おっ、ぺれった」という歌にドラマにコメディーな公演を主宰してもう20年以上。演出主演の永井寛孝さんと音楽竹田えりさんたちとのチームワークにはいつも感心しきり。それ以外にも本人ゲスト出演舞台が大体年4作はあるんじゃないでしょうか。こーゆーのを女優魂というのかどうか、あの忙しさの中でいったいいつセリフを覚えて稽古されてるのか、主演級公演案内をもらったりするといつも意味がわからないような気になったりします。

 真弓ねーさんの舞台からはいつでも確実に“元気”をもらえます。背が小さいこともギャグにしてしまうほどの小さい身体から、どうしてあんなに大きなエネルギーが出るのでしょうか。自分が関わる作品じゃないのが残念ですが、もう存在がルフィのキャラそのもの。

 真弓ねーさんのキャッチフレーズは「浜田山の吉永小百合」。ぼくも近所なので一緒になったら帰りは必ず一緒です。ねーさんのキメワード、さよならの代わりに「ハゲしい夜を!」を言われるとどんな時にもなぜか背筋がピシッとします。公私なんかとっくに超えたステキな仲間たちと、どうかこれからもおおらかで楽しくもゆるい時間を過ごして行きましょう。ゆるいとかそんな事言ってたって、どんな時にもストイックな女優魂をチラチラ燃やしている真弓ねーさんを、身近に感じて刺激を受けているのが僕は本当に大好きなのですから。