• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民102人目
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  • 2011.08.04

 今週は音響監督・長崎行男さんです。

 「名探偵コナンスペシャル 夏の怪盗キッド祭り」音響監督・長崎さんと初めてお会いしたのは1987年2月でしたか。

 今は押しも押されもせぬピカ一の音響監督のひとりですが、初めて会った時の長崎さんはレコード会社エピック・ソニーの人。あの「シティーハンター」の音楽打ち合わせが最初だと思うのです。でもその音楽の打ち合わせって普通は劇伴BGMについてのはずなのに、記憶ではそれはあまりない。いや、音楽も途中で国吉さんから矢野さんに変わったりしていろいろあったはずだけど、それよりもなぜか劇中歌挿入歌の話題の方が印象が強いんですよね。

 まだ大きなジャケットなLPの時代だったなあ、記憶にあるのが1987年にそれぞれ10曲入りのステキなジャケットでリリースされた2枚。「シティーハンター オリジナル・アニメーション・サウンドトラック」とそのVol.2。当時は歌入りの楽曲がアニメに使用されるってこと自体が、今のようなステイタスを持ってたわけではありません。なのに驚くようなアーチストたちに歌ってもらえたのは、当時の最先端としての「シティーハンター」の作品性もさることながら、曲選び・アーチスト選定など音楽ディレクターとしての長崎さんの力量のおかげということになります。だって番組のOP曲やED曲を歌ってくれたから、というつながりじゃあないのですから。

 事実、神谷明さん[12]も歌で参加してる、アニソンの走り的なこれらアルバムはかなりな売り上げを記録。曲全体が英語詞になってる大滝裕子「Mr.Privert Eye」なんて、僕は大好きで未だに脳裏に流れていますし、鈴木聖美さんにも参加してもらってました。それらがその後ベスト盤的なアルバム「シティーハンター ドラマティックマスター」を出すに至るのですから。ここには曲のイントロにドラマの1シーンのようにセリフがかぶる、本編のED的なシーンセリフ作りで僕も参加させてもらいました。で、それがこのアルバムタイトルの由来でもあります。

 その頃から所ジョージさんらの担当ディレクターとして天才的なセンスを発揮した長崎さんは、しかし意外な転身をとげます。発足当時のあのソニーコンピューターという会社でプレイステーションを手がけるのです。おかげでプレステのゲームにはかなり詳しくなれましたし、ゲーム開発の面白さだけでなく難しさやコワサも間接的に教わりました。

 で、何時の間にか音響監督であります。「エンジェル・ハート」が音楽監督デビューあたりの時期のはずですが、いわゆる音響全般に対するモノの見方が音楽を創り出す発想に近いのでしょう。大きく3つの職種を経験しているのに、それを感じさせない仕事の大きさというかおおらかはちょっと比類ない人ですよね。

 あれはもうバブルの真っ只中。六本木は鳥居坂にあった超オシャレなカフェレストランでの結婚式。あんなことはもう出来ないですよね、場所も建物も無いし。芸能人も多く参加され、その披露パーティーそのものが記事になるかのようなものでした。ゴージャスな照明の中で白く浮かびあがった長崎さん夫妻のシーンは、別世界の出来事のようでくっきりと心に焼き付いています。

 「名探偵コナンスペシャル 夏の怪盗キッド祭り」から始まるだろう「まじっく快斗」伝説はこれから僕たちスタッフとファンのみなさまとで新しく創り上げていくものになるでしょう。なんと言ってもキラキラしてたあの時代の輝きは、怪盗キッドの存在に通じるものかもしれません。これからもキッドにはちょっと派手めな音響演出をよろしくお願いします。そして僕らの仕事や生活にもにぎやかに楽しく派手な感覚をどんどんブチ込んでいきましょうね!