• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民121人目
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  • 2011.12.15

 今週はキャラクターデザインの故荒木伸吾さんです。

 なにげなく新聞を読んでいて知った訃報でした。最近は「聖闘士星矢」新シリーズはもちろん、「リングにかけろ!」の新シリーズにも参加されてたので、今回の訃報には驚くばかりでした。

 だいたい僕らが育ってきた時代のアニメキャラクターは、荒木さんのものによることがほとんどでしょう。というのも世の美形キャラは荒木伸吾デザインの代名詞とされる状態で、それらが主人公などになってバッタバッタと活躍するのですから、その刷り込みされた方はハンパ無いですよね。

 キャラクターデザインをされるようになってからの作品を並べても「キューティーハニー」「バビル2世」「銀河鉄道999」「ベルサイユのばら」などメジャーな作品のキリがないし、YTVとしてもそのころ「新巨人の星」「新巨人の星II」などでお世話になってたようです。

 僕が荒木さんとお会いしたのは「金田一少年の事件簿」です。というかそれ1作なのに当然のように強烈な印象が残っています。原作者さとうふみやさんによるちょっとキュートなイメージのある主人公金田一一と七瀬美雪が、荒木さんの手にかかるとなんというかそこにもうひとつ“端麗さ”が加わるんですね。そのキャラデザにTVシリーズはもちろん、映画「金田一少年の事件簿2 殺戮のディープブルー」でも基本は窪秀已さんにお願いしましたが、荒木さんのデザインコンセプトにずいぶん助けてもらった記憶があります。

 その初対面は当時のプロデューサー東映アニメ清水さん[8]の紹介。東映アニメ大泉スタジオでのその瞬間、予期せぬタイミングで急だったし、エーッあの荒木さん?みたいな動揺が走り、荒木さんとどんなお話が出来たのか、なんだか舞い上がった記憶しかありません。正直な第一印象は、アニメーターさんにしては(ここは非難集中するかも、ゴメンナサイ)かっこいいダンディな人だなあ、だったんですから。実際は家族の方も口をそろえるほど物静かな方だったそうです。うーん、やっぱりそんな方からあのキャラクターたちが生まれてくるのはかっこいいとしか言いようがありません。

 そんな凄い実績を持っていながらご本人はなんとマンガ家になりたかったそうです。ベッドの上でもずっと絵を描かれていたそうで、最後まで夢をかなえようとされてたその証は「Sourire」と言う作品になり荒木さんの公式HPで第一話だけ会えたりします。この作品の「つづく…」の直前に主人公が見た「あれは何だ?」、それを今荒木さんは天国で見ながら描いているのでしょうね。

 西武新宿線下井草駅近くの葬儀場には、制作会社やテレビ局など組織をまたいだ大勢の弔問客が集まっていました。さらには荒木さんから教えを受けた現役著名なキャラクターデザイナーもいっぱいで、なかなか帰らない弔問客が多いのにも、荒木さんが残した歴史を重く感じさせます。この4月の出崎統さん[89]のときにも感じたのですが、彼らの仕事のひとつひとつが明らかに今も僕の身体に流れています。記憶として残ってる、というようなレベルじゃないんです。その事実をしっかり捕え、自分の仕事に対する向き合いを見直していこうと思わせてもらいました。享年72歳、心よりご冥福をお祈りいたします。