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『アニメ村のステキな住民たち』アニ民138人目
- 2012.04.19
今週は長い間「名探偵コナン」の音楽プロデューサーを務めてもらった元ビーイングの渡部良さんです。渡部さんと初めて会ったのは六本木の事務所でした。
「悪女(わる)」というドラマを一緒に立ち上げた僕の先輩・山本和夫さん(現ドラマデザイン社社長)と一緒に当時の六本木ビーイングのお伺いしたのが1993年初め。「悪女」からちょうど1年経って「彼女の嫌いな彼女」というドラマ企画の主題歌相談にお伺いしたのです。僕たちを迎えてくれたのは、もう飛ぶ鳥を落とす勢いのカリスマ性を持つ長戸大幸さん。そしてその案内をしてくれたのが渡部さんでした。
身体が大きくコワイというかイカツイ容貌の渡部さんや、業界トッププロデューサー長戸さんを前にして、音楽業界に慣れていないこともあって僕たち二人は言い知れぬ緊張感に包まれてしまいました。言葉にすると「でも負けないぞ」とか「絶対飲みこまれないぞ」とでもいうのでしょうか。結果お世話になったドラマ主題歌がZARD「君がいない」でした。
その次は1996年金曜ロードショーで放送された「YAWARA!」でした。TVスペシャルとして異例な成立をみたこの作品、音楽面でもいろいろありましたが、ここでも主題歌はZARD「Today is another day 」 でお世話になっています。そしてビーイングが番組スポンサーになってくれたご縁で、小松未歩「謎」という新人ながらグッとくる名曲を引っ下げ「名探偵コナン」に参加、それからは何かと言い合いながらも渡部さんとは不動なコンビを組んでこれました。
こーゆー主題歌は僕ら作品のプロデューサーが、直接アーチストにアプローチするわけではありません。音楽メーカーさんの窓口担当の方々と、こちらの希望も含めて番組の方向性や使用楽曲を議論し、いくつかの楽曲の中からOPとEDそして映画などの主題歌を決めていきます。というわけでZARD、B’z、倉木麻衣、愛内里菜、GARNET CROW…、渡部さんを通してさまざまなアーチストとコナン世界のフィールドで交わってくることが出来ました。
渡部さんとの仕事で一番の記憶は、コナンを除けば2003年放送された「ブラック・ジャック〜命をめぐる4つの奇跡〜」です。そうです、TVシリーズの前に放送した2時間スペシャルで、ここでは渡部さんのおかげもあって、主題歌はB’z「ROOTS]でしたが、それ以上にすごかったのがテーマ曲としてB’z松本さんがブラック・ジャックのために曲を書き下ろしてくれたことです。「THE THEME OF B.J.」と題されたあの名曲、まだどこにもCD化されていないんじゃないでしょうか。
大きな転機になったのはZARD坂井泉水さんの訃報でした。この僕にとっても大きかったのですから、渡部さんにとってのショックは想像を超えるものだったと思います。僕にとって番組主題歌数でもダントツですし、渡部さんにとっては人生の一部と言えるものだったのでしょう、長らく所属されたビーイングを退社されたのは彼女の1周忌後でした。
そんな渡部さんの現在のお仕事はVeinte y unoという事務所を立ち上げ、azusaと言うアーティストのプロデュースをなさっています。この前久しぶりに食事をしたらお互いに、怒涛のごとく積もるお話の応酬でした。思えば初めて会った時に言い知れぬ緊張感を感じたと書きましたが、実は渡部さんサイドも逆にTV界の僕たちに対して同じような気持ちを抱いていたそうです。これにはちょっと笑ってしまいました。コミュニケーションを通じて知り合えるというのがいかに大切か、ですよね。
azusaさんはアニメ「アマガミSS」の主題歌で有名ですね。もと「スパークリング☆ポイント」のメンバーだそうで「100もの扉」の時には某TV局でお会いしてるはず。そんな彼女のライブパフォーマンスを見ることが出来ました。ピュアな元気、というのが一番合うのかな。すぐそこにいる感じの明るいステキな女の子、という人柄が楽曲からにじみ出ています。
僕とのお付き合いで一番の思い出楽曲は、渡部さんがZARD「Today is another day」だそうで、僕は愛内里菜「Dream×Dream」です。でもどの曲にも大きく言えば、その瞬間をギュッと煮詰めた人生みたいなものがありました。そしてそれは今もお互いに続いているんだなって感じられます。というわけで本当に人生の節目節目にちょっと言葉に出来ないような出会いをしてくれる渡部さん。これからも何時でも連絡を取り合って、いろいろいっぱい会話していきましょう、そしてお互いかっこよく張り合っていきましょう!