• 『アニメ村のステキな住民たち』アニ民143人目
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  • 2012.05.31

 東宝宣伝部、上田太地さんと初めて会ったのはコナン映画3作目「世紀末の魔術師」だったでしょうか。見た目はそのアタリの柔らかさが目立つ上田さん、ここではいつものようにタイチ、と呼ばせてもらいます。映画コナンの宣伝プロデューサーを務めてもらったのが出会いですが、彼の宣伝活動は何というかすこぶる直球で、ミステリーとしてのコナン映画の面白さを余すことなく伝えてくれたように思います。

 コナン映画の宣伝プロデューサーとして3人目になるタイチ。この頃は毎年成績も内容もレベルアップしていくのが当たり前のような時期でしたね。そんなコナン映画が背負うハイレベルな宿命を達成していくというプレッシャーは、毎年タイチにかなりな要求をした気がします。結果は宣プロとして見事な成績を重ねていきました。

 あれはタイチ最初の担当の初日劇場挨拶の後、恒例の制作委員会メンバーでのビュッフェスタイル食事会でしたね。その映画の成績がまるでわからないうちにその食事のメニューになぜかフルーツポンチを導入。確かに中華なビュッフェスタイルの食事だったのですが、その後の成績も含めてタイチに会うとどうしてもそのフルーツポンチが思い出されます。と言うのも彼はこれをちゃんと最初から“勝利のフルーツポンチ”と宣言してメニューに入れ込んだのです。

 タイチの出身は大阪だそうです。縁あって彼の身内がやっているステキな天ぷら屋にもお世話になったり、何の気なく観た映画がエンドロールでタイチ担当なことを知り、そう言えばこの映画の宣伝活動は他ではやらないような話題を振りまいていたな、とそこで得心を得たりして、タイチのカゲはいつも僕の周りに漂っていました。

 そうじゃなくてもコナン担当を外れた後でも、タイチが宣伝プロデューサーを務める作品では、まずその作品を観る前にその宣伝周りの活動をチェックしてタイチの仕事を別の面から味わっていく、そんな楽しみ方をしていたのは事実です。直球以外にいろんな球種を自在に使えるようになり、たまに東宝宣伝部に行ってちょっと成長したタイチに会うと、何だかこっちが照れながら「今は何してんだよー」って聞いたりしていました。

 タイチの特徴はその話し方や当たり方がソフトなことです。すべてのコトが交渉事のシビアなモノばかりの仕事の中で、そのシビアさを決して第一に打ち出さない、これは人となりというか、彼のキャラクターであります。照れ隠しのようなその笑顔の裏で、どんなにしたたかに映画作品にとって正しい計算をしているのか、ちょっとそこが知れないですし、味方にするとこれほど頼もしい人はいないですよね。

 このほど東宝さんの組織の移動で会社の中枢・東宝株式会社 映像本部 映画調整部に異動した上田さん。そして肩書きが昇格して、なんと映画調整室室長になられました。TV局で言えば編成部にあたる、より中枢な頭脳的な部署でかなりハードな要求を強いられることでしょう。でもどこの職場に行っても変わらないコナンの“勝利のフルーツポンチ’精神で、これからもとにかく面白い映画をお客様に送り届ける、その気持ちは絶対変えず変わらず前向きにいきましょう。