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『アニ民236人目』東映アニメプロデューサー木戸睦(あつし)さん
- 2014.09.04
今週のアニ民は東映アニメプロデューサー木戸睦(あつし)さんです。
木戸さんに初めて会ったのは「金田一少年の事件簿R(リターンズ)」第一回シナリオ会議からです。今回のRを始めるために相談したのはもちろん東映アニメの清水慎治プロデューサー(アニ民8)。清水さんが「ウチのとっておきの敏腕プロデューサーをつけるよ」と言われたのが木戸さんでした。そして初めまして、のはずなのに実は僕は木戸さんを知っていたのです。
それはTV番組からでした。以前、一人のプロデューサーにスポットを当ててその担当作品ともに紹介する「アニP」という番組がありました。僕の後輩で今は電通の斎藤朋之君が担当していたこの番組、一度見てみようとしっかり見たのがなんと偶然木戸さんの回だったのです。「探検ドリランド」という番組の企画の舞台裏や制作側のスピリッツなど、すごくわかりやすく話していたんだよな。ドリランドアニメの重箱の端っこまでわかっちゃうような、立派な理知的な話し方に「ああ、東映アニメってすごいよな。僕がまったく知らないこんなプロデューサーがぞろぞろいるんだよな」と超感心したコトをよく覚えていました。名前は聞いていても初めて会った時にその番組映像や木戸さんの立ち居振る舞いがクッキリ思い出されたのです。
先輩の西尾大介プロデューサー(=大ちゃんアニ民164 )と一緒に金田一Rのすべてを仕切ってくれてる木戸さん。チーフディレクターとして20世紀の金田一のすべてに関わってきた大ちゃんと、見事なコンビネーションでこの難しい作品を思い切り引き立ててくれます。
シナリオ会議での木戸さんの発言は、的確にして必要な分量を満たしたもの。ああ、ここはそんな風にも考えられるんだ、なんて教えられたことは何度もあります。内容に奥深く侵入していく大ちゃんに対して、大局観から発せられる冷静な意見はその切り口が鋭いものが多いですよね。舞台設定に対する時代考証などその知識にはいつも助けられました。
そんな木戸さん、実は昔から推理小説は大好きで、例えば殺人事件が起きるといういわば非日常ドラマを表現することは、ずっとやりたかったコトだそうで。20世紀末、同じ社内で金田一が進行してた時も指を加えて見ていたとか。でも実際にやってみて登場人物の心情や動機など、セリフを追求すればするほど壁にぶつかり、その難しさをしみじみ体感した、それが金田一Rという作品だそうです。
もう一つ清水さんが木戸さんのコトを表現した言葉が「木戸くんはキドッてるから」があります。これは清水さんの単なるダジャレではあるんですが、実はそのキドリ方がホント素敵。背筋が伸びてるというか、まったくイヤミがないというか、逆に任せられるようなキドリというのか。番組アフレコやその後のPRや多くの素材を収録し、様々な問題をクリアしたあと、遅れながらも必ず食事会に参加してくれます。そしてその木戸さんのメガネの奥の細い目をした気持ち良い笑顔に触れると、今やってる番組の充実度がわかりますね。
「金田一少年の事件簿R」はもうすぐ終わってしまうので、今後はなかなか会えなくなっちゃうんだよね、わかっていてもこれはすごく寂しい。でも木戸さんみたいな人と出会えたのも番組を継続的にやってきたおかげです。今は好調に走っている番組「金田一少年の事件簿R」に心から感謝しながら、そして最終シリーズ「ゲームの館殺人事件」にもう少し手をかけながら、さてこれからは何を仕掛けていきましょうか…。手を休ませず、さらに未来に向けて、ぜひ定期的に会話させて下さいね。