• 『アニ民232人目』監督の土田豊さん
  • 『アニ民232人目』監督の土田豊さん

  • 2014.07.17

 今週のアニ民は「金田一少年の事件簿R(リターンズ)」の監督・土田豊さんです。ここでは土田さんのことをいつものようにツッチーと呼ばせてもらいます。
僕がツッチーと初めて会ったのは東映アニメの会議室、金田一Rのシナリオ会議の席。1997年の前作は監督が西尾大介さん(=だいちゃんアニ民164)だったのですが、今回だいちゃんはプロデューサーとして参加。そして監督に白羽の矢が立ったのが若き演出家ツッチーだったのです。

 ツッチーの印象は物静かで寡黙な感じなのですが、いったんミステリーの内容に入るといろいろ意見をくれます。美術背景やキャラクターの動きなど、原作に対してどう映像化しようかかなり突き詰めて打ち合わせをしてくれます。シナリオの内容もアニメーションの演出としていかにリアル感を出すかについて深く突っ込んでお話ししてました。

 毎回のアフレコやダビングでもいつもの席につくと物静かにじっと画面を見つめ、いざ監督に聞かねばと言うシーンが来ると、それはこういきましょうと的確に指示。それ以外はずっと自分の映像世界の中で自由自在にドラマを紡いでいるようです。

 もともとはコンピューター会社でプログラマーをしていたというツッチー。アニメを見るのは好きだったので、アニメの勉強をしようと東映アニメーション研究所に入ったのがこの世界へのきっかけだったそうです。実はその同じ時期に僕もここで一度講師をしていてツッチーはその事を覚えているんだって。

 基本的に原作にないセリフはシナリオ作成時に加えたりしますが、さらに絵コンテ時にもツッチーはいろいろ仕込んでくれます。7月19日放送「高度一万メートルの殺人 File1」のアタマにもちょっとしたツッチーの仕業が入ってます。もし原作との差異や付加を見つけられたみなさま、ストーリーの面白さに加えて、ツッチー監督の小技もしっかり楽しんじゃってる事になりますね。引き続き主人公が犯罪者?ヒロインが主人公糾弾する一週読み切り作品も出てきます。それはツッチーが見事にさばいた金田一が中学生時代の作品となってるんですよ、それもマジお楽しみにです。

 ツッチーは「金色のガッシュベル!」の助手から演出デビュー、この作品は少年マンガとしてシリアスとギャグのバランスがバツグン!多くをいっぱい学んだそうです。実はアクションものという「スマイル プリキュア」では、小さな女の子の視聴者に向けてデリケートな演出に努めたと言います。

 そんなわけでこの金田一が監督としてのデビュー作だというツッチー。この作品はツッチーという船長が操舵する見事な豪華船になりました。今回のシリーズで大切にしてることは旧作のイメージを壊さずにいく、ということだそうです。ですが前作を知ってる人はわかると思いますが、歴史がある作品に新しい感覚を持って乗り込んできたツッチーのおかげで、作品の色合いがずいぶん変わってます。原作の面白さは変わらず、少しでも新しさを吹き込もうとするのはかなり難しいこと。1シーン1シーンこだわった演出意思を持って丁寧に紡いでいくことで、ツッチーはツッチーなりの金田一を構成しつつあります。

 監督作業始まってから伸ばしているトレードマークのヒゲはまだしばらく剃れそうにありません。アフレコ後の食事会でゲストに出演した女性声優たちの中に意地でも混じって話して反省会、今後の演出プランに少しでも役立ててるというツッチー。その若いエネルギーでこれからの金田一をさらにぐいぐいと牽引していって下さいね。