#41
2013年1月20日
「あと80分の命」
「我々がダミアンとヒビトにしてやれること――2人とも必ず生きて帰ると信じること」
いまだ通信が途絶えたままの日々人たちを救出しようと、クラウドの言葉に一丸となるNASA職員たち。
救出に使用するビートルの充電を待っている間、吾妻の提案で、今すぐ動かせる無人ローバー・BRIAN3号を向かわせることとなった。
月面の谷底では――。
『メインタンク酸素残量ゼロ……予備タンク酸素残量……80分……!』
崖を上ろうとした際に酸素タンクを破損してしまった日々人は、救出までの時間を考え愕然としていた。
『俺は……助からないかもしれない……』
しかし、日々人が子どもの頃、素直に月へ行きたいと思えたのは、アポロの飛行士たちがちゃんと無事に帰ってきたからである。
これから宇宙を目指す子どもたちのためにも、日々人は諦めるわけにはいかなかった。
時間をかけ、再度崖を上り、ギブソンを使ってダミアンを運ぶ日々人。
凍え続けるダミアンの体を温めるためにも、早くひなたに行かなければならないのだ。
日々人はギブソンの上にダミアンをロープで固定し、緩やかな斜面を駆け出した。
『酸素残量、あと40分!』
一方つくば宇宙センターでも、日々人を救おうと星加たちが3Dマップを作成し、奮闘していた。
そこに、連絡を受けた六太が駆けつけた。
日々人たちの現状を聞きくや否や、地図の谷の端を指すと――。
「ヒューストンに頼めませんか、ビートルの行き先をもっとこっちの方に変更してもらえないか……」
その位置は2人が落ちた位置から20キロも離れた場所。
2人が緩やかな場所から谷を上ろうとしていると仮定して、ビートルをそちらに向かわせて欲しいというのだ。
「日々人は多分、じっとしてないから――」
だが六太の意見をNASAは承諾しなかった。
救助が来るまでは、落下した現場に待機している可能性の方が高いと判断したのだ。
しかし日々人は、六太の予想通りに行動しており――……?