#37
2012年12月16日 「公園におっさん2人」
JAXAの合格発表を待つため日本に帰国した六太は、この2~3日、プチ幸運が異常に続いていた。引き出しの奥から商品券が現れたり、合計額が777円になったり、小銭がピッタリだったり、茶柱が必要以上に立ったり――。『逆に怖い!! 逆に不吉!!』六太が合格するかどうかは、もう運に頼るしかない。にも関わらず、限られている運はどんどん減るばかり。やけについている日々に、六太の不安は募るばかりだった。その頃、受験者の一人、溝口大和の部屋では――。『残念ながら今回は、不合格となりました』JAXA職員・星加からの電話で、溝口は不合格となったのである。理由を問いただす溝口に、星加は言う。溝口はリーダーとしてこれからどんな職場でもトップに立てる人材だと思う――だが一つ、足りないことがある『仲間に頼る』ということだ――と。それを聞き、溝口は閉鎖ボックスでの試験を思い出していた。『初めて僕に反対意見を言う奴が現れた』溝口よりも大人な、ケンジのことだった。『真壁ケンジ……――真壁は合格だろう。そうでなきゃ、困る……』一方、南波家リビングでは――。幸か不幸か、おでこをケガして絆創膏を貼った六太が、「う~ん」と腕を組み、電話機の前で悩んでいた。連絡がくる予定の時間を、もう2時間以上も過ぎていたのだ。『忘れられてる……? もしかして……』――とその時、ようやく、プルルル! と電話が鳴った。内容は、星加による『呼び出し』だった。六太が公園に着くと、大勢の遊ぶ子供たちの中で違和感を発しているおっさん・星加がいた。会話の中、六太が子どもの頃に星加と会っていたことを思い出すと――。星加は六太に握手の手をさしだした。「我々JAXAは君を――宇宙飛行士として迎えます――おめでとう! 君には運がある!」あまりの感動で泣き笑いの顔をする六太。さらに星加は続けた。「これからさっそく記者会見だ! 今日から君の、宇宙飛行士人生が始まるぞ!」