#21
2012年8月19日
「久しぶりの空」
『迷った時はね――どっちが楽しいかで決めなさい』
3次試験の最終日、シャロンの言葉を思い出した六太は、ジャンケンで宇宙飛行士にふさわしい2人を選ぶことを提案した。
その理由は、楽しかったこの2週間を、楽しい5人のままで終わりたいと思ったからであった。
そして、A班のみんなはこれに賛同してくれ、勝負はたった1回で決まることとなる。
2人が勝って、六太を含む3人が負けたのだ――。
全課題を終え、閉鎖ボックスから出た受験者たち。
そんな彼らに、茄子田JAXA理事長はこのまま外に出てもいいと許可を出した。
極秘施設にも関わらずシャッターが上がると、外には本物の太陽がさんさんと照っており――。
「まっぶっしー!」
思わず感激の言葉を発し、外へと出ていく六太たち。
しかし辺りをよく見ると――。
「あれ……? ここって……」
そこは極秘施設ではなく、バスの出発地であるJAXAの敷地内だった。
茄子田がドヤ顔で言い放つ。
「ガッカリした!? 残念ながら極秘施設なんて建てる資金はありません!」
数日後――。
古谷は、宇宙服の開発をしている職員・馬場広人に会うため、JAXAへと来ていた。
『身長が足りなくてスタートラインにすら立てない』
実は古谷は、自分の背が低いせいで、ずっと宇宙飛行士にはなれないと思っていた。
宇宙服は1着作るのに10数億円かかり、使用頻度の少ない小さいサイズは、これまで作られることはなかったからである。
だが、背が低くて宇宙飛行士になれないという悔しい気持ちは、馬場も同じだった。
そのため研究を重ね、身長150センチから対応できる宇宙服を作ったのだという。
馬場の作った新しい宇宙服は、どんなに努力しても身長だけは応募条件に届かなかった古谷にとって、『宇宙飛行士を目指しても良いという許し』そのものだった。
「俺は絶対あの宇宙服着るで。遠い先でも……!」
実際にその宇宙服を見せてもらうことが出来た古谷は、また決意を固めたのだった――。