#15
2012年7月8日
「宇宙の話をしよう」
閉鎖ボックス内の合宿も後半をむかえる。六太たち受験者は、交代でボックス内にあるテレビ電話ルームへと入っていた。テレビモニターの前には医師がおり、一日に一回、個人問診を受けることになっているのだ。福田の番になると、医師は『古谷からプレゼントがある』と伝える。パスボックスを開けると、そこにはケースに入った眼鏡が置いてあった。古谷の気持ちを尊重した管制が、用意してくれたのである。
その夜、ケンジのいるB班では――。真夜中だというのに、寝室にはけたたましいアラーム音が鳴り響いていた。みんなで解決策を探そうとするケンジ。だが、メンバー内で主導権を握ろうとする溝口は、犯人捜しに躍起になってしまう。意見がわかれB班の雰囲気は悪くなる一方。最終日に自分が選ばれるため、互いに争う形になってきてしまっていたのだ。
翌朝。事件は六太のいるA班でも起きていた。唯一の時計がなくなっていたのだ。管制に聞いてみるも、『中で起こった問題は、自分たちで解決するように。』としか言われない。そしてようやく見つけるも、その時計はめちゃくちゃに壊されていたのだった。
そんな中、真っ白なピースのジグソーパズルを3時間作業しろという課題が出される。時間もわからずなかなか進まない作業状況。イライラを募らせた古谷が口を開いた。
「誰やねん、時計壊したやつ。」
犯人は名乗り出るはずもなく、空気は険悪なものになってしまう。しかし、それを打破するように六太が立ち上がった。
「宇宙の話をしよう――もっと宇宙飛行士気分でいこうぜ。」
六太はさらに続ける。もし火星へ行く船の中で時計が壊れたとして、その時自分たちはどう行動するのか、それを見るためにJAXAの人が壊したのだと――。
だが、そう言いつつも六太の頭の中は混乱していた。
『できれば俺が言った通り、JAXAの人が犯人ならよかった……!』
なぜなら、六太は昨晩見てしまったのだ、福田が時計を壊しているその姿を――!