“食い倒れの街”大阪で…50年間愛され続けた町中華 「十八番」閉店 最後の日

150種類以上ある豊富なメニューと驚異的な安さ。“食い倒れの街”でお客さんのおなかを満たしてきた人気店「中華食堂 十八番」。さらに、朝4時59分から深夜0時1分までという営業時間でお客さんを虜にしてきました。しかし(2023年)4月1日に突然の閉店を発表…。大阪天満で50年愛された名店になにがあったのでしょうか。最終営業日までを密着しました。
(かんさい情報ネットten. 2022年4月25日放送)

【密着】町中華『十八番』閉店 最後の日 “食い倒れのまち”大阪・天神橋筋で150種類以上のメニューと驚異的な安さで50年以上愛され続け… 常連客から惜しむ声

中華食堂「十八番」最後の日

 驚異的な安さと150種類以上のメニュー、しかも美味しくボリュームも。誰からも愛された町中華の店が4月25日、暖簾を下ろします。食い倒れのまち大阪・天神橋筋で愛され続け50年、その最後の日に密着しました。

責任を取れる、体力のあるうちにやめなければ…

天神橋筋で50年以上の歴史を誇る 中華食堂「十八番」

 店の外は行列、店内はいつも満席。開店最後の日もたくさんのお客さんがその味に舌鼓を打っています。常連のお客さんは店の魅力を、「この雰囲気と味とボリュームと値段と…」「全部全部。メニューがすごい種類もそうやし値段もそうやし…」と語ります。

驚異的な安さ!150種類以上の豊富なメニュー

 「十八番」は、150種類以上ある豊富なメニューと驚異的な安さを武器に、この“食い倒れの街”大阪でお客さんのおなかを満たしてきました。そして、朝4時59分から深夜0時1分までという営業時間にも意味があります。

「十八番」代表取締役 山本かがりさん

(「十八番」代表取締役 山本かがりさん)
「1分でも早くお客様にご入店いただいて1分でも遅くまで営業。『町の時計になろうや』と、ここのお店が開いたら1分前っていう風に分かってもらおうということで、創業当時からずっとその1分を守っているんです。」

50年以上前 昭和47年(1972年)

 昭和47年に開業し、時を刻むこと50年。大阪の町で朝の活力を、昼のもうひと頑張りを、夜のお疲れさまを支えてきました。しかしスタッフの高齢化や人員不足で増える臨時休業に未曽有の物価高で、いままでのサービスを続けたくても続けられない現実に山本さんはこう語ります。

(山本さん)
「やりたかったのはやりたかったですね。やりたかったですけども、『十八番』が違う形になっていくのは心もとなかったんですね。私が責任を取れる、体力のあるうちにやめなければ、あまり引きずっても迷惑かけるかなと」

 営業時間を短縮したり値段を上げればまだ続けられたのかもしれません。でもそれでは半世紀愛してもらった「十八番」ではなくなってしまうと山本さんは話します。
(山本さん)
「よく、お店の前で財布を開けて小銭を持って入ってくるお客さんを目にしたので、そのためにある店かなと思いながらやってきましたので、(お店の形態を)変えられなかったです」

かがりさんの息子で「十八番」チーフ智彦さん

 閉店にこんな思いを持つ人も…
(山本かがりさんの息子で十八番チーフ智彦さん)
「僕は逆にほっとしているんです。やっと家族にもどれるなと」
(山本さん)
「親子でありながら社長としか呼ばないし、お店の中では家族じゃなかったですからね…」

思わず感極まる智彦さん

Qそれだけこれまでの時間大変だったのというのもあると思いますが、どうですか?
そう聞かれた智彦さん
「泣けてくるわ…」
と一言の後、目を伏せました…

ついに最後の営業日

最後の日替わりメニューを掲げる智彦さん

 50年の想いを胸に、迎えた最後の日。4月25日午前2時半ごろ、最後の深夜の仕込みです。
智彦さんが日替わりメニューをボードに書き込んでいます。

(智彦さん)
「社長が最後に一番人気だったメニューをここに出しているんで…」
Q:最後の実感ありますか?
(智彦さん)
「ありますね、かなり。子どもの頃からの思い出の店やから。ね、もう…」

最後の日、開店10分前には20人超の列が…

 開店10分前、20人以上の行列ができています。
(列の先頭のお客さん)
「ずっと10年以上は来てましたね。いつも朝です、仕事前に。味わって食べます。」
午前4時59分最終営業日の開店時間です。人気メニュー朝限定の「かす汁定食(420円)」を多くの人が食べていました。

Q.朝並ぶのが思い出ですか?
(お客さん)
「そうですね。ここの風景でしょうね…」
智彦さんが常連のお客さんに声をかけます。
(智彦さん)「やっと帰んのか~またな~」
Q.お馴染みのお客さんですか?
「もう毎日ですね。ああやって漫才してるんですよ。いつも」

家族連れのお客さんも

 家族連れのお客さんもいます。二人の子どもがおいしそうにご飯を食べていました。
(父親)
「早く起きたらご褒美に(食べに来ます)。僕は高校生くらいの時から来ていて(子どもと)一緒に行けるのが楽しみでしたね。」

手土産を渡す人も

 一人の女性が山本さんに紙袋を渡しています。中身は手土産でしょうか。
(女性客)「今までお世話になったんで。ここに来てから会社に行こうと思ったんで…」
山本さんは驚いた様子ですが嬉しそうです。

正午の厨房

 正午、大勢のお客さんが来店します。スタッフは手慣れた様子で手際よく料理を作って提供しています。

赤ちゃんを抱いた女性がいました。
「きのうもきょうも来ました。独身の時から来てたりとか…思い出深いですね」
男性のお客さんは…
「お金が安くて美味しい最高」
Q.食べ終わってしまいましたね…
(男性のお客さん)
「終わった…寂しいもんやで…」
そう言って、表情を見せないためか、むこうを向いてしまいました…

愛された「十八番」は、幕を閉じますが…

『十八番』の第2章は…

(山本さん)
「皆さん、独立希望の方(スタッフ)も何名かいてるんです。『十八番』の信念とか心意気とか、お客様への思いとかは引き継ぐということで、第2章はその子たちが引き継いでくれる、ということになっています」

(「かんさい情報ネットten.」2023年4月25日放送)

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