利用者激減の「バス会社」の生き残り戦略とは 移動式の出張〇〇〇?! フレイル予防ツアーも!?

新型コロナウイルスの収束も見えない中、鉄道やバスなどの交通機関は乗客激減と大きな打撃を受けています。そんな中、兵庫県のバス会社が様々な新規事業にチャレンジし、注目を集めています!“バス会社の生き残り”と“地域の活性化”を目指した戦略を取材しました。

【特集】出張サウナ?!コロナ禍で困窮するバス会社の生き残り戦略とは? 社員のアイデアを採用!観光バスで高齢化対策も!

生き残りをかけるバス会社の一手とは

 新型コロナウイルスの感染拡大で鉄道やバス会社は大きな打撃を受けています。そんな中、兵庫県のバス会社が様々な新規事業に乗り出し注目を集めています。その生き残りをかけた戦略を追いました。

移動式バス“サウナ”で業績アップ?

 今回あるものがお披露目されました…
なにやら熱く焼けた石積みに水をかけて蒸気を出しているようです。その近くに、読売テレビの中野颯大記者が、上半身裸で座っています。

読売テレビ 中野颯大記者

(読売テレビ 中野颯大記者)
「汗が止まらなくなるほどの本格的な“サウナ”に、窓の外に広がるきれいな景色。実は私がいるこのスペースは、“バス”の中にあるんです」

このバスの中にサウナが

 サウナがあるのはなんとバスの“車内”です。つり革や停止ボタンもそのままです。こちらバスの強みを生かした“移動式”の出張サウナなんです。案内してくれるのはこのサウナバスを提案した、兵庫県のバス会社「神姫バス」の松原安理佐さんです。

神姫バス 事業戦略部 松原安理佐さん

(神姫バス 松原安理佐さん)
「こちらがサウナ室になっておりまして、座席が8~12人座れるような仕様になっています。フィンランドで“サウナバス”というのが走っているのを知って、これを日本の“路線バス”でやったら面白いんじゃないかなと思って考えたのがきっかけになります。これを考え始めてから、サウナに入るようになりました」

車体は引退した路線バスを再利用しました。松原さんの突飛なアイデアに、社内では反対の声も多かったといいます。

(神姫バス 松原安理佐さん)
「やっぱり周りからは、『それで本当に事業になるのか?』とか『うまくいくのか?』と言われていたので、最初は私もわからない中で、手探り状態で始めました」

サウナストーブなどは本場フィンランドから輸入

 サウナバス作りに取り掛かったのは、2021年の10月です。サウナのストーブなどは本場フィンランドから仕入れ、内装は専門業者に依頼しサウナに改造しました。

(神姫バス 松原安理佐さん)
「元々サウナカーは日本の規定にないので、どうやって車検を通そうかとか、バスの中にサウナ室を作るのでどうやったらバスの揺れなどに耐えられるつくりになるのかなど、一つずつが初めてで、ハードルがいろいろありました」

半年間の試行錯誤を経たサウナバスには様々な工夫があります。

バスの降車ボタンを押すと…

(中野颯大)
「サウナの中にあるこのボタン、普段はバスを降りるときに押すものですが、このバスではサウナの温度を上げたいときに押すんです」

バスの降車ボタンを押すと、サウナストーンに水をかけて室内の温度を上げる「ロウリュ」ができるんです。

(神姫バス 松原安理佐さん)
「全国のいろんな県から問い合わせだがあります。想定していた温浴施設や宿泊施設以外の商業施設のイベントで使いたいだとか、こんなところからも興味をもっていただけるんだという引き合いが多くて、すごくうれしく思っています」

神姫バスがこうした社員のアイデアを取り上げ、新たなビジネスに乗り出したのには、ある理由がありました。

神姫バス 秘書広報課 課長 小森 亮介さん

(神姫バス 秘書広報課 課長 小森 亮介さん)
「路線バスだと、コロナ前と比べると6割減です。通勤・通学のお乗様が路線バスの大きなウェートを占めていますので、テレワークや学校の休校などで、みるみるお客様が減っていって、この会社本当にどうなるのかな、というところまでなりました」

国土交通省によると、2021年の全国の路線バスの乗客は、コロナ前と比べ24%減少、高速バスでは59%も減っています。

貨客混載で三方よし

カートの中身は農作物

 出口が見えない中、神姫バスの生き残りをかけた一手はほかにもあります。ここは兵庫県三田市、街を歩くお年寄りにカートの中を見せてもらうとサトイモなどの農作物が入っています。どうやら農家の方のようです。向かった先は、地元の農協です。持ってきた野菜をかごの中に移します。近くの農家の人も次々に野菜を持ってきました。

(男性)
「今までは高齢の人や免許を返納した人は、リュックに野菜を入れて売りに行っていました。自分もいずれそう言う時が来ると思うと、ありがたいです」

いったい何がありがたいのでしょうか…

人と荷物を一緒に運ぶ「貨客混載」

 そこにやってきたのは路線バスです。野菜はコンテナに積み替えられバスに積み込まれます。車内は一部の客席が取り外されていて、スペースが設けられています。これは乗客と荷物をいっしょに運ぶ「貨客混載」という取り組みです。運賃はコンテナ一個あたり200円~250円で10km離れた直売所まで運んでくれます。途中乗り込んできた乗客はほとんどが高齢者の方です。その乗客を下した後バスは直売所へ向かいます。取れたての新鮮な野菜が、店頭に並べられます。とても新鮮だと客さんの評判も上々、ここの野菜しか買わないという人もいました。

パスカルさんだ一番館 中鶴和寿店長

(パスカルさんだ一番館 中鶴和寿店長)
「三田地区は高齢化が進んでいて、車などで来られない方や免許を返納した方もいます。そういうところで、新たにバス便を作っていただくことによって、より野菜が集まってきていますので、そういうところは良かったと思います」

 乗客の減少に悩むバス会社と、高齢化で農作物が運べない生産者と、買いに来られないお客さんのそれぞれの課題を一挙に解決する三方よしですが、影を落としているのは運航エリアの住民の高齢化です。そこに目を付けた一手もあります。

“フレイル”予防ツアー 高齢者対策に観光バス?

次々と観光バスに乗り込む高齢者

ここは神戸三宮のバスターミナルです。この日高齢の乗客が次々と観光バスに乗り込んでいきます。

(乗客の女性)
「ちょっと外の空気吸いに行こうかなという軽い気持ち…」
(別の女性)
「健康面に不安があるので、いろんな勉強や運動もできるので…」
(乗客の男性)
「ボケ防止が最大の理由なんです。どこも(体に)悪いところがないので、それをできる限り持続するためにこのツアーに参加しています」

車内で“寝たきり予防”の体操

 出発してしばらく経つと車内ではじまったのは“体操”です。このバスツアーは高齢者向けの“フレイル”予防ツアーなんです。指導するのは「フレイル予防サポーター」の資格を持つバスガイドさんです。フレイルとは寝たきりの“前の段階”で体の機能が低下した状態のことです。座ったままの体操でもフレイルの予防には効果があるのだそうです。

保養施設「チョロギ村」(京都府亀岡市)

 バスは1時間半かけて京都府亀岡市の保養施設に到着しました。そこで、長寿の秘訣について漢方の専門家から話をきき、そのあとは薬膳料理の昼食です。

チョロギ村 森隆治村長

(チョロギ村 森隆治村長)
「高麗人参・トウキ・桂皮、血の巡りをよくするようなものから出汁をとってあります。そして、ここにあるのが”チョロギ“で、シソの仲間の根の先にできるイモなんです。認知症予防を考えています」

参加者から好評「薬膳料理」

ツアー参加者から「おいしいし、体がポカポカする」と好評です。「5歳ほど長生きできそう」という意見もあり、皆さん、また来たいとおっしゃっていました。食や運動を楽しみ、健康の知識も学べるこのバスツアー、高齢者に人気があるそうです。

(参加者の男性)
「勉強になりました。できることから一つでも実生活に取り入れてみたいと思います!」
(参加者の女性)
「名前は知っていても、使い方や効能が分からなかったので、すごく今日はうれしです!」

(神姫バス 秘書広報課 課長 小森 亮介さん)
「(フレイル予防ツアーは)すごく反響をいただきまして、おかげさまで満席の日も多く、増便増便で追加というを対応させていただいています。この先どうなるかわからない中で、少しでもいろんな種をまいて、芽が開くころにコロナが治まって、(業績の)V字回復を目指したいと思っています」

出口が見えないコロナ禍と浮き彫りになる地域の課題、バス会社の挑戦は続きます。

(「かんさい情報ネットten.」 2022年3月4日放送)

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