【記者メモ】大阪市が2025年に路上喫煙全面禁止に…本当に実現できる?

3年後、大阪・関西万博の舞台となる大阪市。2025年1月、市内全域で路上喫煙を禁止する方針を打ち出しています。「国際都市」としての大阪のイメージアップを図りたいという松井市長。しかし、実際に街中で喫煙している人を注意し、罰金を払ってもらうのは、ひと苦労。もめるケースもあり、指導員には警察のOBがあたっていますが、人材不足が指摘されています。そのほかにも、喫煙所の設置や、清掃などにかかる費用の新たな負担も課題…本当に実現できるのかを、ニュースのウラ側を知る担当記者の「記者メモ」から紐解きます。

【記者解説】大阪市、2025年に路上喫煙全面禁止へ 万博開催に向け“大阪のイメージアップ”は実現できるのか? 突然の指導強化に課題も

大阪市、2025年に路上喫煙全面禁止へ

 大阪市では天王寺や梅田など6つの区域で路上喫煙の禁止区域を設置し、違反者には1000円の過料を科してきました。市はその取り組みを3年後に迫る万博をにらみ、2025年1月をめどに市内全域に広げることを発表しました。しかし、実際に街中で喫煙している人を注意し罰金を徴収する際にはもめるケースもあり、指導員の人材不足が指摘されています。また、喫煙所の設置や清掃などにかかる新たな費用の負担など課題もあります。本当に実現できるのか、ニュースのウラ側を知る担当記者の「記者メモ」から紐解きます。

大阪市“路上喫煙全面禁止”へ 市民の反応は?

大阪市 松井一郎市長

 突然の規制強化について愛煙家の大阪市、松井市長は3月14日、こう話しています。

(大阪市 松井一郎市長)
「万博に向けて健康先進都市として明確な位置づけをするために(全面路上喫煙禁止を)         やろうと」

この方針に町の声は…

「すごく賛成です。赤ちゃんがいたり、妊婦だったりすると気になりますので」
「賛成。喫煙エリアというか、決められたところで吸っていただきたいです」

 一方で喫煙者の受け止めは…

「喫煙所をもっと増やしてほしいというのはあります。タバコがこれだけ害だと言われれば仕方ないのですが」

 問題となる「吸う場所」について、大阪市は市内の路上喫煙を全面禁止する代わりに喫煙所を市全体で増やす方針ですが、喫煙所設置のためには多額の税金が必要になるといいます。一体どの程度かかるのでしょうか?

本当に実現できる? 取材で見えてきた課題

現在の路上喫煙禁止地区

Q.これから路上喫煙は大阪市内全域で禁止となるんですね?
(読売テレビ・大阪市政担当 神田貴央記者)
「はい。現在、路上喫煙禁止地区に指定されているのが地図の赤色に塗った地域で、例えば約4kmにわたる御堂筋や、JR大阪駅の周辺など人通りの多い地域が指定されています。ここで路上喫煙をすると1000円の過料が課されます。この路上喫煙禁止区域を2025年1月には公園や広場を含め、大阪市内全域に広げる方針になっています」

Q.なぜ2025年からなのでしょうか?
(神田記者)
「これに関して松井市長は『今日言って明日できるものではない。喫煙する人も、しない人も納得する形にするためには準備が必要』だと話しています。また、背景には2025年に予定されている大阪・関西万博に向けて、大阪の国際都市としてイメージアップを図りたいということがあるんです」

Q.賛否がありますが、取材した実感はどうですか?
(神田記者)
「取材して気になったのは“本当に実現できる?”のかというところです。色々と大きな課題が見えてきたのですが、そのうちの一つが、2007年から始まった路上喫煙者からの過料の徴収です。時には揉め事やトラブルにつながることもあるため、その指導員は警察のOBが担っています。そこでの課題が“人材の確保”です。」

指導員の人材確保が課題に

(神田記者)
「現在、指導員には13人の警察OBを採用していますが、実はこの警察OBは“引く手あまた”ということなんです。探偵や警備員など多くの就職先がある中で、この警察OBをどう確保するのか、というのが課題になっています。これに対し松井市長は『民間の人材を使えばいいのではないか』ということを言っているのですが、私が指導員の方に取材をしたところ、これまで民間委託されているものには駐車禁止の取り締まりなどがありますが、この駐車禁止には法的拘束力がある一方、路上喫煙の1000円の過料は任意の徴収なんです。この任意の徴収をスムーズに行うには、職務質問などの警察のノウハウが必要だということです。」

 今は限られたエリアでの取り締まりで13人、これが大阪市全域になるとそれだけ人手が必要になるということで“人材の確保”が課題になります。

喫煙所増設にも費用が課題に

(神田記者)
「また、もう一つの課題が喫煙所の設置です。マナーを守って喫煙所で喫煙している方のために、路上喫煙禁止区域を大阪市全域に広げるのであれば、喫煙所を増やすことも必要ではないかと思いますが、これには費用が非常にかかります。例えば、写真のJR京橋駅前にあるような喫煙所を設置する場合、約1000万円必要だとされています。そこに、毎年清掃の為の管理維持費がかかってきます。今後、新たに設置する場合には市が費用を負担することになっていますので、税金を使うということになり、市民の理解を得られるかどうかも課題になります」

読売テレビ・大阪市政担当 神田貴央記者

(神田記者)
「今後ポイントとなるのは“納得のいく効果”があるのかどうかだと思います。非常に良い政策だとは思います。しかし、これまで禁止されている区域での処分件数は減ってきてはいますが、街を見ているとたばこのポイ捨てが多く目立ちます。効果への疑問が残る中で大阪市全域に路上喫煙禁止を広げるというのは多額の税金もかかりますし、具体的な議論が必要になっていくと思います」

 大阪市をどのような街にしていきたいのか、ハード面の整備だけではなく“共有する意識”というものが大切になっていきそうです。

(「かんさい情報ネットten.」2022年3月16日放送)

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