2月25日(金)
“ジビエ“が年々美味しくなって“より身近に”!コロナ禍の中で需要も急拡大!
鹿やイノシシなど狩りで捕獲した野生の食用動物をさす“ジビエ”。2019年度の利用量は2000トンを超え、4年間でおよそ1.5倍と需要が急拡大しています!なぜ今“ジビエ”人気が加速しているのか…。調査すると、日本の“ジビエ”が年々美味しくなっていることが明らかに!今回は、『“ジビエ”が身近な存在になった』カラクリを、厚切りジェイソンが徹底取材します!
【特集】『ジビエ』が年々美味しくなって“より身近に”!コロナ禍の中で需要も急拡大!“WHY”おいしくなった理由は? 厚切りジェイソンさんが徹底取材!
鹿肉のロッシーニ 1800円(税込み)
おいしそうにフライパンで調理されているお肉、断面がなんとも美しい赤身肉ですが…
Q.この料理は何というものですか?
(スタンドクルキタ 坂本良太さん)
「鹿肉のロッシーニという料理になります」
ジビエ料理 スタンドクルキタ(大阪市中央区)
大阪市中央区に2021年オープンしたスタンドクルキタは“ジビエ料理を手軽に”をテーマにしたレストランです。兵庫県の丹波地域で取れた鹿はソテー以外にも燻製にしてお寿司にするなど様々な調理法で楽しめ、新型コロナ禍でも人気があります。
スタンドクルキタ 坂本良太さん
(坂本さん)
「(ジビエを)皆さんの知っている“なじみやすい調理法”でお出しすることを心掛けているので、オーダーの中の一つには鹿肉料理が入っているんじゃないかなと思います」
野生動物の資源利用量(農林水産庁)
鹿や猪など狩りで捕獲した野生の食用動物をさす“ジビエ”。2019年度の利用量は2000トンを超え、4年間でおよそ1.5倍と需要が急拡大しています!ロッテリアは先月から一部の店舗限定で、ジビエ鹿肉バーガーを発売しました。ファストフードとしては高めのお値段ですが好評だそうです。なぜ今“ジビエ”人気が加速しているのか…。調査すると、日本の“ジビエ”が年々美味しくなっていることが明らかに!その背景には大手企業も解決に乗り出した社会問題もありました。
野生動物の資源利用量(農林水産庁)
今回は、『“ジビエ”が身近に存在に、そしておいしくなったわけ』を、厚切りジェイソンさんが徹底取材します!
食わず嫌い? “ジビエ”がおいしくなったわけ
近年、広がりを見せているジビエ料理ですが街で聞いてみると…
街でジビエについて聞いてみると
(女性)
「食べたことない」
(連れの女性)
「ないと思います。クセとかありそうな感じ」
(男性)
「食べたことないかも…生臭そうな…固そう…」
やはり、普通のお肉に比べるとクセがあるというイメージを持っている人が多いようです。しかし!
(男性)
「全然うまいです」
(別の男性)
「新鮮なものであれば、全然臭くなかったりするんですけど」
(女性)
「鹿はまったく(臭みがない)美味しいです!鹿はもう、みんな食べればいいと思います」
よく食べているという人は、皆さん口を揃えてクセが気にならないと言います。これは単に好みによるものなんでしょうか?
地下鉄・天下茶屋駅前 「山女庵」(大阪市西成区)
そこで、大阪市内でジビエ料理を出すお店を取材しました。
狩猟免許も持つ山女庵 店主 三池康正さん
狩猟免許も持つご主人・三池さんが仕入れる新鮮なジビエが食べられます!今のおススメは 特製の味噌で味付けした猪肉の料理、ぼたん鍋です!
三重県産猪肉のぼたん鍋 9000円(税込み)のコースで提供
厚切りジェイソンさん ぼたん鍋を試食して…
「(味が)しゅんでる~!スープもコクが出ていて、お肉も肉肉しいというか、歯ごたえがしっかりあって、これは美味しいですね~」
そして、もう1つの人気メニューがシンプルに素材の味を楽しめる鹿のステーキです。一度食べるとヤミツキになる人が多いそうです。
鹿肉のステーキ 9000円(税込み)のコースで提供
厚切りジェイソンさん、鹿のステーキを一口食べて…
「…ハッピネス!鹿ですか!?後味に癖のあるイメージでしたが、そんなものはないですし、高級な牛肉のステーキみたいです。肉汁が飛び出て…ジューシー!」
とお気に入りの様子です。
まったくクセが無いと言う山女庵のジビエ料理。その秘密は、猟の方法にあるそうですが…
ワナでとった猪肉のロース
(山女庵 店主 三池康正さん)
「これが猪のロースですね。“ワナ”でとったお肉なんですけど…」
(厚切りジェイソンさん)
「ワナでとったものの方が美味しいのですか?Why!?」
少し前まで、猪や鹿の狩猟は銃で行うのが一般的でした。しかし、弾が当たった部分が損傷するほか、当たり所が悪いと血が肉にまわって臭みの原因にもなります。今は銃を使わずに ワナで生け捕りにする方法が主流になっています。こうすることで牛や豚などと同じように適切な処理を施して新鮮な状態で出荷できるのです。そこにはある背景も…
高齢化が進み ワナで“生け捕り”する猟が主流に
(三池さん)
「高齢化ですね。猟師の皆さんが80歳を超えてきているので、農家と兼業でオリ(ワナ)をかけて捕る人も増えてきています。」
近年は高齢化などが原因で猟師の数が減少していました。そのため、野生動物による農作物への被害が各地で増加したのです。2010年の被害額は、およそ240億円と深刻な問題になっています。そのため農家でも安全に野生動物を捕獲できるワナを使った猟が普及していったのです。狩りのスタイルが大きく変わったことで、結果的に美味しいジビエが出回りやすくなったわけです。
ジビエがおいしくなってさらに人気に
(厚切りジェイソンさん)
「味が美味しくなっているから、さらに人気が出たということですよね?」
(三池さん)
「脂もあっさりしていて食べやすく、高たんぱく低カロリーで、最近は若い人も女性だけやカップルでも来られるようになりましたね」
なぜ日本で“ジビエ”が普及しなかったのか…
美味しくなっている上に、畜産肉よりも余分な脂が少なく健康面でも注目度を増しているというジビエ!しかし、日本で、なかなか浸透しなかったのには、歴史が大きくかかわっているそうで…
食文化研究家 阿古真理さん
(食文化研究家 阿古真理さん)
「仏教が入ってきてから、肉食がよくないという戒律が伝えられ、江戸時代になると戒律が相当強くなって、肉食は禁止されていました」
長らく“肉食“を禁じられていた日本。“ジビエ”は山間部のごく一部で食べられていたマイナーな食べ物でした。一方でヨーロッパでは貴族の文化としてハンティング(狩猟)が浸透しジビエ料理も、憧れの高級料理として広く普及したのです。
(阿古さん)
「(日本では)細々とうけつがれてきたので、レシピが大っぴらに出ることもなかったし、流通ルートも大きくは発達しなかったのが、ジビエがヨーロッパのように盛んに食べられてこなかった要因だとおもいます」
欧米に比べ、ジビエの普及が大きく遅れていた日本ですが、近年、山からジビエが消費者に届く流通ルートが整ってきているそうです。
処分でなく食材に…ジビエ普及にかける思い
リストランテ・コンテ(大阪府島本町)
次に厚切りジェイソンさんが訪れたのは、大阪府島本町のレストランです。
リストランテ・コンテ オーナーシェフ 宮井一郎さん
(リストランテ・コンテ オーナーシェフ 宮井一郎さん)
「”島本ジビエ”を立ち上げて販売しています。こういうサイトで…」
スマホの画面を見せるとそこには新鮮なお肉が並んでいます。
「島本ジビエ販売所」 ウェブサイト
(厚切りジェイソンさん)
「なるほど。スーパーで肉を買うイメージでネット通販で買えるんですね!」
ジビエを手軽に買える通販サイト「島本ジビエ販売所」猪や鹿のスライス肉からソーセージまで良質なジビエが購入できます。
(厚切りジェイソンさん)
「この肉はどこからきているんですか?」
(宮井さん)
「それも僕がとって、(処理とか加工を)しているんです」
(厚切りジェイソンさん)
「いつしているんですか?」
(宮井さん)
「今日の朝とかですね。」
(厚切りジェイソンさん)
「今日の朝!?」
そして、毎朝行っている仕入れ作業。その様子をのぞき見させていただきました。島本町の住宅エリアから少し車を走らせると、木々に囲まれた山深い場所に。そして、さらに竹林の中へ…
宮井さんのジビエの仕入れ場所
(宮井さん)
「竹林のタケノコに被害があって、私達に有害駆除で、ワナかけてもらえないかなって依頼があるんです。1月2月が一番被害が多いんです。小さいタケノコが全部食べられてしまうので…今年のこの辺りのタケノコは全部だめですね。」
島本町では長年、野生動物によるタケノコ被害が問題になっていて、被害額は年間300万円にものぼっています。役場でも捕獲作業は行っていますが、とても追いつかないため宮井さん達ハンターの存在が頼りなんだそうです。
宮井さんが木に仕掛けたカメラをチェックしています。
「あかん・・・来てない・・・ずっと来てたんですけどね…こっちにワナをかけていて、この場所はケモノ道なんで12月1月とかは、とてもよく来ていて…」
宮井さんが仕掛けるワナ
この後もワナにかかっている動物はいないか、険しい山道を歩きながら2時間ほどかけてチェックして回ります。足跡などの痕跡はあちこちにあるのですが…
宮井さんは地面に仕掛けられたワナを見ながら…
「完全に踏んでる。踏んでいるのにかかっていない…悔しいなあ…」
残念ながらこの日はかかっておりませんでした。週に1頭は捕まるそうで捕獲した猪や鹿はその場で気絶させ、臭みの原因になる血と内臓を迅速に処理します。そのあと、鮮度が落ちないうちに店で解体して、出荷できる状態にしていきます。食肉処理と食肉販売の許可が必要となるため、大阪でここまでできる施設は少ないそうですが…
なぜわざわざ大阪の島本町で“ジビエ販売所”を?
(厚切りジェイソンさん)
「なぜ、あえてここ島本町で?Why?」
(宮井さん)
「島本町は、もともと鹿や猪による被害があり、有害動物として捕獲していたんですが、普通の猟師さんは駆除するのが目的なので全部、焼却処分されていたんです」
(厚切りジェイソンさん)
「もったいないですね…」
(宮井さん)
「殺して終わりではなくて、命をいただくところまでいきましょう。(ということで)食肉として流通させるためにしています」
猪の鉄板焼き 3500円(税込み)
捕獲した野生動物の処理に困っていた行政と、ジビエの食文化が広がってほしいと願っていた宮井さんの双方のメリットが合致したのです。今では島本町の“ふるさと納税“で人気商品になるなど、地域活性化にもつながっています。新鮮なジビエは、シンプルな味付けや調理法でも十分楽しめるそうです!
猪の鉄板焼きを試食する厚切りジェイソンさん
猪肉を鉄板焼きでいただきます!
(厚切りジェイソンさん)
「ファンタスティック!これ猪ですよね?すごく肉肉しい感じがあります。コショウも効いていて。クセが少しもない!嫌なにおいもないです!」
(宮井さん)
「家庭でも全然(問題なく)食べていただけます」
ジビエの加工・流通に参入する企業が増加(提供:京丹波自然工房)
本来廃棄されていたジビエを食材に転換するビジネスは、全国で増えています。京都の山間部では、駆除された野生動物の加工・流通に参入する企業が続々と立ち上がっています。また警備会社で知られるALSOK(アルソック)は2015年から野生動物の被害に悩む地域で駆除事業を開始。さらに、食材として活用しようと、おととし千葉でジビエ事業に進出しました。猟友会などが捕獲した猪や鹿を回収し、行政への手続や加工・販売も代行しています。ホームページでは、主力商品である「猪肉」の家庭料理レシピも発信しております。
農業を守るため、駆除せざるを得ない野生動物たち。その命を無駄にしないために、ジビエを取り扱う企業が増えたことで、良質なお肉が全国にいきわたるようになったんです。
ミートショックの中ジビエは第4の食肉へ
(厚切りジェイソンさん)
「ミートショックと言われる今、ジビエが第四の肉として新しい選択肢になると、すごくありがたいですね」
(宮井さん)
「僕たちがとっているから、価格は安定しますし。どんどん普及していけば嬉しいです。命を殺して狩るわけです、人間はこうしてしか生きていけない。そういうものを、僕たちも学ぶべきだし、若い世代に、そういうことを教えてあげられる環境ができたらなと思って活動しています」
持続可能な食文化としての注目のジビエ
新たな食の選択肢と注目されるジビエ、様々な問題を解決へと導く切り札になるかもしれません。自然の恵みをいただくという食の原点が、持続可能な新たな食文化として見直されていた! というのが、今回のカラクリでした。
※紹介した店舗は“まん延防止”を受けて時短営業・休業しています。
営業状況は各店舗に確認を
(読売テレビ 「かんさい情報ネットten.」 2022年2月25日放送)
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