アイデア一つで地域活性も!使う場所限定「オリジナル通貨」がユーザーの心をつかむワケ

 今、現金ではなく、お店や会社や地域の中だけで使える「オリジナル通貨」が注目を集めています。使える場所が限られるから現金より不便なのでは?と思いきや、単なる“現金の代わり”ではない、様々なアイデアで利用者の心をつかむ活用法が続々登場しているんです!人と人との絆や地域活性にも繋がる「オリジナル通貨」の魅力を、厚切りジェイソンが大調査します!

【特集】“現金の代わり”だけじゃない!使う場所限定でも、お金で買えない“繋がり”を生む「オリジナル通貨」の新たな可能性

現金とは違うアイデアが満載!「オリジナル通貨」

 2021年末から始まった10万円相当の給付で、揉めに揉めたのが「現金か、クーポンか」という給付方法。「現金の方が使い勝手がいい」という意見が多く聞かれましたが、実はいま、現金ではなく、お店や会社・地域の中だけで使える「オリジナル通貨」が注目されているんです。
 
 使える場所が限られると現金より不便では?と思いますが、使うときに5倍の価値になる超おトクなものや、お金で買えない“あるもの”と交換できるサービスもあったりと、様々な“アイデア”で利用者の心をつかんでいるのです。様々な場所で広がりを見せる「オリジナル通貨」の魅力に厚切りジェイソンさんが迫ります。

子どもの成長を地域で支える「オリジナル通貨」

店員に札のようなものを…?

 まず訪れたのは、奈良県生駒市にある「まほうのだがしやチロル堂」。お菓子を買いに来た子どもたちが、なにやら札のようなものを店員に渡しています。これは、店内通貨の「チロル」。1枚、“1チロル”という、子ども限定のオリジナル通貨だといいます。カプセルが入った自動販売機に100円を入れてレバーを回すと、チロルが出てくる仕組みです。

「チロル」の自動販売機

 1チロルで買えるお菓子は100円分。自動販売機に入れた金額と同じですが、実はチロルにはそれ以上の価値があるんです。例えば、店内の飲食スペースで食べられるカレーなら、大人は500円ですが、子どもはチロル1枚、つまり100円で注文することができるのです。さらにこの自動販売機は、一度に2枚や3枚のチロルが出てくることもあり、100円を入れると最大で300円分のチロルがゲットできる可能性があるということです。このような“お得”を生み出せるのは、ある“仕掛け”があるからなんです。

100円で最大300円分の通貨が当たることも!

(共同運営者 吉田田タカシさん)
「大人がこの店で弁当を買うなど購買をしたときに、その一部が店の寄付に回って、それが子どもたちのガチャガチャに入っていく仕組みです。」

 店で販売されている料理などを大人が食べると、売り上げの一部が「チロル」に変わるということです。例えば、500円のカレーを食べると1チロル、300円のジュースを飲んでも1チロルが寄付されます。子どもたちがおいしいものを安く食べられる仕組みを、「オリジナル通貨」で実現しているんです。お店を利用した人に話を聞くと…

(母親)「面白いなと思う。現金で寄付するより気軽に寄付できる気がする。」
(男の子)「100円で2倍の分出てきてうれしい!」
(男の子)「現金よりチロルの方がわくわく感やドキドキ感がある。」

「まほうのだがしやチロル堂」 吉田田タカシさん

(共同経営者 吉田田タカシさん)
「地域の子どもたちを、地域の大人みんなで見守ったり育てたりしていることを、見える化した場所にしたいなと思っています。」

社内のコミュニケーションを活発化する「オリジナル通貨」

社内通貨「ウズポ!」の仕組み

 オリジナル通貨の活用は、企業でも行われています。東京都新宿区で人材紹介などを行う会社「ウズウズ」で使われているのが、コミュニケーションを活発化するための社内通貨「ウズポ!」です。

 約40人の従業員が活用しているこの「ウズポ!」は、誕生月や業績に貢献した際に、会社から与えられます。そして、同僚との飲み会やサークル活動の費用として申請し認められると、1ウズポあたり1000円の費用を会社が負担してくれるのです。使えるのは社内コミュニケーションを図るときのみなのですが、平均すると月に34万円が従業員に支払われているそうです。2021年12月には、従業員が「ウズポ!」を出し合い、約6万円のダーツマシンを購入。飲み会を開きづらいコロナ禍でのコミュニケーションに、一役買っています。

感謝を表す「サンクスウズポ」

 さらに、従業員が感謝しあうときに生まれるのが「サンクスウズポ」。ちょっとした作業や仕事へのフォローに対する感謝の気持ちをメッセージで送ると、感謝した人にも感謝された人にも、会社から500円分の「ウズポ!」が与えられます。ひと月の上限は、社内全体で4万5000円、上限までは1人何度でももらえます。

「ウズウズ」専務取締役 川畑翔太郎さん

(「ウズウズ」専務取締役 川畑翔太郎さん)
「褒め合う文化みたいなのができました。平均年齢20代の会社なので、社員同士が仲がいいとか、活気があるとか、それがそのまま業績に跳ね返りますので。」

(入社6年目 菅田沙紀さん)
「社内で誰がどんなことをして感謝されているとかが分かるので、あれを見ることによって会社の雰囲気が良くなったり、お礼を言いやすかったり、交流の機会になっていると思います。」

 「オリジナル通貨」は“もらうとき”も“使うとき”にも、コミュニケーションの活性化につながっているのです。

“体験”との交換で地域活性化に繋げる「オリジナル通貨」

神奈川県鎌倉市で使われている「まちのコイン」

 観光地として人気の古都・神奈川県鎌倉市では、地元のゲーム制作会社「カヤック」が開発したオリジナル通貨、「まちのコイン」が使われています。これは“人と人、人とお店を繋いで仲良くなる通貨”なのだといいますが…

(厚切りジェイソンさん)
「例えば、500円玉とは何が違うんですか?それも、人と店が繋がるじゃないですか?」
(「カヤック」梶陽子さん)
「お金では買えない“体験”と交換できるんです。」

 「まちのコイン」は「カヤック」がアプリで運営していて、単位は「クルッポ」。鎌倉のシンボルとなっている鳩の鳴き声に、ちなんでいるそうです。

「クルッポ」がもらえるお店の「お困りごと」

 まずは登録されている店などの依頼を引き受け、コインをもらいます。鎌倉市民でなくても利用できるということで、ジェイソンさんも「お店の困りごとを解決してくれたら200クルッポ」という活動に挑戦してみました。コインをゲットすべく、向かったのは、スペインバル「鎌倉美学」。

(ジェイソンさん)「何に困っているんですか?」
(「鎌倉美学」オーナ 湊万智子さん)
「背が低いので、高いところに手が届かないんです。ジェイソンさんは背が高いので、うちの店の象徴的な蓮の絵の壁を掃除してもらいたいです。」
(ジェイソンさん)「できそうやな!やりましょう!」


壁の掃除で「200クルッポ」をゲット!

 186cmの身長を生かし、掃除を手伝うジェイソンさん。終えると、お店から「200クルッポ」のコインが送られます。このオリジナル通貨には、鎌倉市では約190のスポットが参加していて、コインをもらえるのは「ごみ拾い」、「エコバッグの持参」、「パンの感想を伝える」など、お店の役に立つ活動が中心です。

コインで交換できる“体験”

 コインの使い道は、「余った野菜をもらえる」、「コーヒーの淹れ方を教えてもらえる」、「料理のレシピをもらえる」など、ちょっと嬉しい体験ばかり。例えば、鎌倉市大町の安国論寺では、300コインで、住職に愚痴を聞いてもらえるのです。

「住職に愚痴を聞いてもらえる」=300コイン

(ジェイソンさん)
「私事ではありますけど、11月に「ジェイソン流 お金の増やし方」という本を出したんですよ。愚痴というか、せっかく読んで内容を理解しているのに、行動にまで移さない人をよく見かけるんですよ。WHY!JAPANESE PEOPLE!?なんでわかっているのに、やらないんですか!?」
(「安国論寺」平井智親 住職)
「日本は自然災害の多いところなので、日常生活が非常に不安定なんですよね。新しいことに冒険するよりは、いろんな災害の被害を防ぐこと、それがまず第一に頭の中にあるのではないかと思います。何度も何度も言ってもらうしかないのかな、我々の布教も同じですよね。」
(ジェイソンさん)
「言ってやらなかったから諦める、ではなく、何回も何回も長い目で話しかけたら、いつかはやるかもしれない、という考えかたですね…」

 ジェイソンさんも愚痴を吐き出し、スッキリしたようです。これまで、寺に馴染みのなかった人も、この「オリジナル通貨」をきっかけに訪れるようになったそうです。

「安国論寺」住職 平井智親さん

(平井住職)
「こういう企画は、私にとってはとてもありがたかったと思っています。今後もいろんなことを企画して、いろんな方にお寺のことを知ってもらえればと思います。」

 地域の人々が繋がる「まちのコイン」、実は、鎌倉市が運営会社に委託しているんです。

(鎌倉市 共生共創部次長 内田彰三さん)
「市が一方的にお金を出して一過性のイベントをするのも手だとは思いますが、地域通貨を使って、使い方を自分たちで考えて、繋がりを作るきっかけにした方が、より持続可能で後々にもつながっていくと思います。」

「CHABAKKA TEA PARKS」(鎌倉市御成町)

 続いて、ジェイソンさんがお邪魔したのは鎌倉市御成町にある、日本茶専門のカフェ「CHABAKKA TEA PARKS」。こちらの一番人気は「ドラフトティー」という、窒素を含ませて注ぎ入れていく水出しのお茶。ビールサーバーから窒素をたっぷり含ませながら注ぐことで、まるでビールのようなクリーミーな泡が乗ったお茶になるんです。このドラフトティーも、コインを使った楽しみ方があります。

人気メニューの「ドラフトティー」770円(税込み)

(代表 三浦健さん)
「日替わりで用意しているドラフトティーのメニューを当てていただく、“利きドラフトティー”というのがあるんですけど。」
(ジェイソンさん)「当たったらどうなるんですか?」
(三浦さん)「当たったら、まちのコイン『500クルッポ』を差し上げています。逆に外れたら、いただきます。」
(ジェイソンさん)「え!あげないといけないんですか!?」

“利きドラフトティー”に挑戦!

 ドラフトティーは、40種類の中から日替わりで選ぶそう。チャレンジすることにしたジェイソンさんですが、今回は初めての来店ということで、特別に味がわかりやすいものにしてもらいました。

(ジェイソンさん)
「REFRESHING!お茶のコクがしっかり残っていて、泡立っている部分は楽しめる雰囲気が口の中に来ていますね…明らかに、ほうじ茶やな!」
(三浦さん)「…正解です!」
(ジェイソンさん)「っしゃあ!!」

 ジェイソンさん、見事『500クルッポ』をゲットです!

(ジェイソンさん)「これは、何回も来るリピーターも増えそうですね?」
(三浦さん)「そうですね、外したら次当てたいと思うので、悔しくてまた来る人もいます。」

 このように、店ごとに趣向を凝らして活用している「まちのコイン」。2020年の運用開始以降、神奈川県の別の地域や、岡山県、福岡県などでも導入が進んでいて、登録者は2万人を超えました。専門家によると、成功する地域通貨は一握りなんだそうです。

神戸大学大学院 経営学研究科 保田隆明教授

(神戸大学大学院 経営学研究科 保田隆明教授)
「これまでの地域通貨は、我々の日々の円の支払いを地域通貨に置き換えるものでした。ただ、円はめちゃくちゃ便利なんです。円の代わりを取りに行こうとすると負けちゃうんです。」

 これまでの地域通貨は、受け取った店が採算をとれないことがほとんどだったそうです。一方、「まちのコイン」は、商品の料金は現金で受け取り、“体験”でコインを活用するなど店が損をしないような仕組みを実現しているのです。

(神戸大学大学院 経営学研究科 保田隆明教授)
「普段、我々が日本円で消費しているものは、そのままやりましょうと。『まちのコイン』は決済が目的ではなく、コミュニケーションを取るのが目的であって、“これはゲームです”という位置づけにしているので、そこが非常におもしろいところだと思います。」

 負担をなくして人の繋がりを生み出すという、新たな価値を見出した「オリジナル通貨」。現金とは違う様々なアイデアを込めることで、コミュニティの絆を強めているのです。

(読売テレビ 「かんさい情報ネットten.」 2022年1月28日放送)

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