ytvSDGs×滋賀県立琵琶湖博物館
「琵琶湖の環境問題のいま、みんなでできることは?」vol.2

マザーレイク・琵琶湖の謎を探究する(後編)
みなさんは琵琶湖に「かばた」と呼ばれる、地域の人たちが大切にしてきた水の文化をご存じでしょうか?集落の中を巡る水路を流れる水を、生活用水に利用したシステムを"かばた"(川端)と呼ぶのですが、地域の人たちは綺麗な湧き水を生水(しょうず)と呼び、昔から大切に利用してきました。そんな地域が今も残る一方で、琵琶湖には、様々な外来生物との共存を余儀なくされる最前線の自然環境があります。その生物たちは一体、どこからやって来たのでしょうか。中井克樹・特別研究員が、琵琶湖の現実からサステナブル(持続可能)な社会とは何かを問いかけるスペシャルコンテンツの後編をお楽しみください。
(サステナビリティグループ 山川友基)       

この外来種についてですが、外国から来たものだけではない、もともと琵琶湖にいなかった生物が琵琶湖に来て外来種になったということです。

しかし外来種は実はいろいろあり、様々な生き物が外来種です。イネとかアライグマ、ニワトリも外来種です。確かにイネは野生には生えてません。イネがあるのは食べ物だからで、野生化しません。人間が丁寧に管理し続けた環境にしないとイネは育てられないということです。そして農耕地の中だけでしか育たないイネはあまり問題を起こしません。

これらも、もともとは野生に住んでいた生き物ですが、日本にもともといたものではありません。何が大事かと言いますと、真ん中の写真のセイヨウミツバチとレンゲは、美味しいレンゲの蜂蜜が摂れる組み合わせです。

「日本人は米を食え」とよく言われるぐらいにイネは大切です。このように、私たちの生活を支える日本にいなかった生き物たちもたくさんいます。特に家畜や作物、野菜、果物のほとんどは外来起源です。私たちの生活は、もともと日本にいなかった生き物たちがいないと支えることはできません。直接輸入して持ち込むケースもありますが、日本で栽培、飼育されているものが私たちの生活を支える上で非常に重要です。もともと日本にいなかった、あるいはその地域にいなかった、外来のものだからという形で一括りにしないことが大事です。外来種の中にも問題となるものもいれば、役に立っているものもいるということです。外来種でもいろいろある、と考えてください。ただ残念なことに仲良くできない、問題を起こすものいます。実際、アカミミガメ、ウシガエル、アメリカザリガニ、アライグマ、オオクチバス、ブルーギルなど、もともと日本にいなかった特定の外来種の影響を放っておけなくなってきています。

どのような影響があるのか、その程度はどれくらいか、ということを考えてみると、環境や人の生活に対して放っておけない深刻な影響を与えるような性質、これを侵略性と言いますが、この侵略性の強さには違いがあり、侵略性の高いものについては対応を取らないといけませんので、これらを「侵略的外来種」と呼んでいます。

放置できない問題という意味では、鹿のように在来の生き物も増えすぎると問題です。バランスを崩して増えすぎた生き物がいろいろといるわけです。このバランスの崩れの原因は人間の側にあるわけですから、そのような生き物たちに対して、将来に禍根を残さないためになんとか対応を取らなければなりません。

これは外来種の話をするときに必ず説明していることですが、外来種の対策を取るのは「単なるよそ者排除じゃないか」と言われることがありますが、「そうじゃありません」ということです。特定の外来種が問題になるのは、それがよそ者だから、外来起源だから、ではなく、あくまでも放っておけない影響があるから対応しているということです。特にマスコミの方々には外来種だからと一括りにするのは、やめてくださいと言っています。

外来種の何々が見つかった途端、それはやばい生物ではないのかと言われますが、これを人に例えればすぐにおかしな話であることが分かります。外国人というだけで問題視するとそれは差別問題です。つまり外来種問題は差別の問題とは全く違うということです。例えばコンビニに入って、うっかりポケットに商品を入れて出ていこうとしたら、「ちょっと君、待ちなさい」と止められますよね。これが外国の人だったとしても、同じ対応が取られます。これは万引きを放っておけないという状況で、国籍は関係ありません。この考え方は、環境問題も同じです。

琵琶湖では水草が増え始めたのは1960年代からでした。その時増えたのはコカナダモやオオカナダモという外来種でした。その後1994年に大渇水が起こり、水位がマイナス123センチまで下がりました。それ以降、増えている水草は在来の種類が多いと言われています。つまり水草が増えすぎて問題を起こしているわけで、外来か在来かは関係なく、流れ藻になって岸に流れ着いて腐って臭いとか、船が通れなくなるとか、漁ができなくなるからということで、水草を適正な量に抑え込もうという対策がとられています。外来魚については、在来魚がどんどん減少する場合は、外来種のほうを減らさざるを得ないという取り組みが行われていています。オオバナミズキンバイなども、いろいろと問題を起こすので対策がとられています。

今からおよそ50年前、オオクチバスがやってきました。そして今から40年ほど前から南湖で急に増え始めました。

その後、雨が降るとオオクチバスしか取れなくなる状態が突然発生したため、対策を取り始めました。 1998年の時点でオオクチバスがおよそ500トン、ブルーギルがおよそ2500トン、生息していると推定されました。そして1999年、今から25年前から対策が強化されました。外来魚への対策はどのようなことをやっていたかと言うと、まずは漁師さんたちに頑張って捕獲してもらうことです。回収するバケツ1つあたり50㎏入ります。40個くらいこのバケツが並び、その上に小さな黒板が置いてあり、この日取れた量が約2トンと書いています。かつては1日でそれぐらい取れることもありました。

次に、釣り人からの回収です。これは湖岸の緑地公園などに、「ゴミを捨てないでね」と書いてある木の箱があります。これが外来魚の回収ボックスで、目印となる旗も立っていました。

つまり、キャッチアンドリリースではなく、キャッチアンドキープしてください、そして回収ボックスに入れてくださいという協力を求めていました。頑張って釣ってくれたらその分だけ琵琶湖の外来魚が減るということです。こうした形で一人一人ができることが外来魚対策になりました。このほかにも、電気ショッカーボートで水中に電気を流して魚をしびれさせて、気絶してるうちにオオクチバスとブルーギルだけをすくいあげる。気絶からさめた在来魚は逃げていく、そのような取り組みも進みました。その結果、琵琶湖の外来魚の回収量は、2006年あたりをピークに減り続けています。

駆除事業が強化されたのは1999年、釣り人に協力を求めたのが2003年、今から21年前です。そして電気ショッカーボートを2012年に導入しました。これらの効果で水底の生息量がどんどん減ってきました。オオクチバスが減少したので、今まで琵琶湖博物館のレストランで出していた「バスバーガー」が、大きな切り身が取れなくなったため今、メニューとして出せなくなってしまいました。そしてブルーギルも最近減ってきて、釣り大会をやっても全然釣れなくて、楽しくないというくらいです。今、実はオオクチバスもブルーギルもなかなか釣れなくなっています。だからこそ1匹でも釣ることが大切になっています。

次がオオバナミズキンバイです。

きれいな花です。今の時期(3月)はまだ花は咲いていません。この花が2009年に見つかり増え始めました。先住のナガエツルノゲイトウを押しのけるような形でどんどん出てきて、これは大変だということになりました。オオバナミズキンバイが成長し、ものすごい勢いで水面を覆ってしまうと、水中に光が差し込まなくなり酸素欠乏に陥ってしまうことで、魚や貝が住めなくなってしまいます。さらに、他の植物を押しのけて、この茎1本から根が出て再生して増えていくので、分身の術のようにどんどん広がってしまいます。茎は水の流れに乗ってどこへでも行ってしまうので、水の流れに乗ってどんどん広がっていくという問題が起こり、陸上にも生えるなど、いろいろな影響が懸念されるようになりました。動植物への影響、漁業への影響、船が通れない影響、さらには水・陸両性のため、農地にも入り生え続けていくと、稲の収穫ができなくなってしまうということも起こります。残念ながらこれらの問題が次第に現実化してきているということです。オオバナミズキンバイは特定外来生物に指定されています。外来生物法の規制対象になっています。

これは大変だということで私たちも放っておけないので、このように建設機械を使って、陸側から除去したり、湖側から取ることもやっています。これは水草刈取船「ハーベスター」というタイプの専用の船で、ガンガン取っていきます。このように岸側からも湖側からも機械でどんどん取っていっています。

しかし大事なことは、機械に任せておくだけではだめだということです。機械でやるときも必ず人の手を使って丁寧に取り残しのないように取らないと、すぐに再生してしまうことが分かりました。

人の力と機械の力を併用して、できるだけ取り残しのないように減らしていくことが大切ですが、石の裏に根っこが入ったりすると、なかなか取れないので、また生えてきます。

大事なことはアフターケアです。

 

   1.できるだけ減らす

 

   2.駆除した後で必ずアフターケアをして「再び増やさない」

 

という2つの原則を守ることで管理ができる状態、低密度の状態を維持しています。2020年をピークに3年連続で減少させ、低密度の状態を維持しているというのが今の琵琶湖の状況ですが、最近少し増えています。

なんとか頑張って格闘して抑え込みます。こうした活動をIVUSA(国際ボランティア学生協会)の皆さんと連携してやっています。IVUSAさんは2013年から活動を始め、2014年には初めて「琵琶湖オオバナミズキンバイ除去大作戦」に、3日間で延べ1500人以上の学生たちが参加し駆除してくれました。そして2015年9月の除去大作戦にも参加してくれました。毎年やってもらえることを大変嬉しく思っていました。

そして2016年は、烏丸半島・琵琶湖博物館の前。2017年は、瀬田川。

2018年は、大津市の渚公園の石組湖岸。2019年は、北湖に来て高島市のヨシ植栽地で活動しました。2020年はコロナ禍で休止。2021年は近江八幡市、2022年は草津市のヨシ植栽地で、駆除活動を行いました。そして2023年は高島市のヨシ植栽地で活動しましたが、この場所は機械を入れられず、グルグルグルグルと人の手で巻いて抑え込み水中に埋めていく淀川方式でやりましたが、これは多くの人の手がないとできないやり方です。

滋賀県の琵琶湖外来水生植物対策協議会に、IVUSAさんもメンバーに入ってくれています。その活動の一環をポスターで紹介しています。私たち滋賀県や協議会では、機械を使い大規模な駆除活動を行っています。しかし、それだけだと対応できない場所があります。石組湖岸やヨシの植栽地は、人の力でないと取れないような場所です。湖岸のゴミ拾いも同じです。今の技術では湖岸に掃除機を走らせて取るようなことはできませんから、人の手で回収しています。そういう状況はまだしばらく続きます。つまり、こうした人の力でないとできない作業で環境問題に貢献することができるわけです。

これからもサステナブルな琵琶湖の未来のため、清掃活動と外来水生植物等の駆除にご協力をよろしくお願いいたします。