文明開化の時代を迎え、先行する欧米列強に負けない国造りを模索した明治。初めて世界大戦があった大正。世界の列強と肩を並べ始めた昭和。
そんな時代に、国民の暮らしのために『商売』を大きくし、一軒の砂糖問屋から、世界を股にかけた総合商社へと奇跡のような発展を遂げた商店が神戸にあった。「鈴木商店」―――。
砂糖や樟脳等の生活必需品から、鉄鋼から船舶まで幅広い商品を扱い、取引相手は日本のみならず世界中。日本一の年商を誇り、世界にその名を轟かせた巨大商社である。
そして、この巨大な商社を作り上げたのは、一人の女主人と番頭だった。鈴木よね―――。そして、金子直吉―――。
世界を見渡しても未だ女性の社会進出がなされていない時代にあって、鈴木よねは世界各国にいる2万5千人もの社員のトップに立った。強い絆と信頼で結ばれた番頭・金子直吉と共に「鈴木商店」を日本経済史上、稀に見るスピードで日本一の企業に成長を遂げさせたのである。
そして金子直吉は、一生を彼女に捧げ、次々と新しい会社を立ち上げ、後に日本経済の怪物と呼ばれる事になる。
この物語は、鈴木よねと金子直吉が成し遂げた『奇跡の航海』を描いたヒューマンドラマである。