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【独自解説】都内一等地で9万円!?“破格の安さ”の「議員宿舎」さらに値下げ!一方で“バブル超え”の首都圏の不動産価格…今後の見通しは?
2023年3月9日 UP
首都圏のマンション価格が過去最高値を更新する中、東京都心の一等地に建つ議員宿舎の家賃が値下げされることが決定しました。物価高に国民が苦しむ中、決定された“安すぎる家賃”のさらなる値下げ。一体なぜ、このタイミングなのでしょうか?一方で高騰し続ける首都圏の不動産価格。今後、どうなるのでしょうか?住宅ジャーナリストの榊淳司氏と政治ジャーナリストの田﨑史郎氏が解説します。
東京の一等地の「議員宿舎」がさらに値下げ…なぜ?
東京の一等地、麹町に建つ「麴町議員宿舎」は、参議院の議員宿舎で、1997年完成の2LDK(75㎡)、駐車場代は無料。家賃は現在9万2210円のところ、4月から2568円減額され8万9642円になるということです。また、衆議院の「赤坂議員宿舎」は、2007年完成の3LDK (82㎡)、駐車場代は約3万円、家賃は13万8066円だったところ、2022年4月から1万3414円減額され、12万4652円になっているということです。
議員宿舎は、地方選出の国会議員が東京都心での国会活動を円滑に行うための拠点です。政治ジャーナリストの田﨑史郎氏は「議員宿舎は有事が起こっても、すぐに国会に行ける場所に建設している。議員宿舎は国会議員にとって必要不可欠なもの」だとしています。
そんな中、麹町議員宿舎南棟は、建設から5年ごとに使用料を見直すという規定に基づき、経年劣化のため4月から減額するということが、2月27日の参院運営委員会・庶務関係小委員会で決定したということです。
住宅ジャーナリストの榊淳司氏によると、家賃相場は麹町で37.5万円以上、赤坂では41万円以上で、駐車場代の相場は4~5万円だということです。また、築15年で“老朽化した”という評価で2022年に値下げされた「赤坂議員宿舎」ついても、「今のマンションは物凄くよくできているので、ほぼ老朽化と言えるほど劣化はしていないと思います」と話しています。
また、議員には年間で、基本給(歳費)約1550万円(月額129万4000円)、ボーナス(期末手当)約600万円、調査研究広報滞在費(旧文書通信費)約1200万円などが支給されています。
その中の「旧文書通信費」は、もともと1946年に議員宿舎を整備するまでの特別手当として「滞在費」の名目で支給が開始され日額40円でしたが、現在も「調査研究広報滞在費」として、月額100万円が支給されています。使用用途はハガキ・封筒・コピー代、郵送代・電話代、タクシー代、宿泊代・食費などということです。
Q.「調査研究広報滞在費」が月100万円も出ているのに、麹町の議員宿舎を値下げするというのは、国民はなかなか納得できないと思いますが?
(政治ジャーナリスト 田﨑史郎氏)
「議員宿舎の家賃だからと言って、議員が勝手に決めているものではなく、国家公務員宿舎法の施行規則に基づいて家賃が決められています。5年ごとの価格改定があって麴町の議員宿舎は築25年になるので値下げされるという仕組みになっているのです。国会議員と聞くと非常に豊かな生活を送っているように見えるかもしれませんが、実際にはかなりキツイ生活を送っていらっしゃいます。地元での活動を支えなくてはならない、秘書を7・8人は雇わないとやっていけないなど、政治活動には色々なお金がかかっています。これで議員宿舎代を市場価格に合わせるとなると、国会議員のなり手が少なくなるのではないかと思い、心配になります」
首都圏マンション価格は“バブル超え” 気になる今後は?
東京都の2022年の人口移動は、転入が43万9787人、転出が40万1764人と、3年ぶりに転入超過となりました。そんな首都圏の不動産価格は、かつてのバブル期をも上回り過去最高値となりました。「不動産経済研究所」によると、首都圏新築マンションの平均価格は、2022年に6288万円(1㎡当たり95.1万円)となっています。
首都圏では新築だけではなく、中古マンションも価格が高騰しています。東京都新宿区に建つ、築16年の中古マンション「THE CENTER TOKYO」の32階、2LDK(108.92㎡)の価格は、2007年11月の新築時で1億1860万円でしたが、2022年にリノベーションし、現在は2億2980万円まで値上がりしているということです。麻布レジデンスサロン・工藤純店長は「会社経営者や投資目的のお客様が購入される」と話しています。
Q.投資目的というのは、家賃収入を得るということですか?
(榊氏)
「家賃収入を得るという人は少なく、大体その手のマンションは“値上がり益”が目的です。そのため、無人の所が結構あります」
しかし、世界各都市のマンションの価格を、2022年10月時点の東京を100として比較すると、北京は127.9、上海は157.5、香港では2.5倍の248.9となっています。
Q.海外の富裕層から見ると、2億円の東京のマンションは安いということでしょうか?
(榊氏)
「そうなります。『東京えらい安いやん、こんなんで上海では買えへんで』みたいな感じです。向こうのビル1室の値段で、日本ではビル1棟買えるという感覚で、中国の方が買いに来ています」
Q.こういったマンションは外国の方が買っているのでしょうか?
(榊氏)
「いえ、外国の方も買っていますが、タワーマンションは相続税対策になるんです。だから地方の富裕層などが相続税対策で価格の高い上層階を買うんです。相続税は1億を現金で持っていたら1億円にかかりますが、1億のタワーマンション買うと相続税評価は大体3000万以下になります」
首都圏マンションの値上げについて、経済評論家の加谷珪一氏は「値上げの原因は、資材価格や土地価格の上昇で、すぐ収まる要因ではないので当面は続くだろう」としています。しかし、「日銀の総裁が代わり、金利が上がる可能性がある。そうなるとマンションの購入を躊躇する人が増え、値下がりの可能性もある」としています。
Q.少子高齢化も止まりませんし、金利も上がってくると、マンション需要というのは逆に少なくなってきて、マンションを建築しても人が入らないということが中長期的には考えられますか?
(榊氏)
「長期的には考えられますが、目先の問題は金利です。住宅ローンの金利が上がると、非常に買いにくくなります。日銀総裁が代わりますので、業界では金利が上がるのではないかと恐れている状態です」
Q.少子高齢化が進んだり、金利が上がると、頑張って働いている若いご夫婦たちなどが、首都圏ではマンションを買えなくなるということになりませんか?
(田﨑氏)
「そこが金融緩和政策を維持せざるをえない理由の一つになっているんです。円安を避けるためには、金利は上げたほうがいいのですが、上げると結局、住宅ローン金利にはね返ってきます。そうするといくら賃上げしても効果が減殺されていくので、植田日銀総裁になっても当面、金融緩和政策は維持されるだろうというのが政府の考え方です。4月9日に植田総裁を中心とする新しい体制ができますが、非常に金融政策の取り方というのは難しいと思います」
(「情報ライブ ミヤネ屋」 2023年3月7日放送)