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【独自解説】宗教2世登場、橋田氏元妻の映像放映…“統一教会”6度目会見に紀藤弁護士と鈴木エイト氏が『異議あり!』連発「宗教者としての素養に問題ある」
2022年10月21日 UP
10月20日、“統一教会”の教会改革推進本部・勅使河原秀行本部長が会見を開き、10月17日に岸田首相が“統一教会”に対し、「質問権」を行使して調査を行うよう指示したことに対する教団の受け止めや、現在進行中の“教会改革”の中間報告などを行いました。消費者被害や宗教・カルトの法律問題に詳しい紀藤正樹弁護士と、“統一教会”を20年にわたり取材しているジャーナリストの鈴木エイト氏が徹底追及します。
謝罪と“改革”の説明から始まった会見
勅使河原氏は会見の冒頭、「家庭連合に対する被害を訴えられる方が依然いらっしゃるという事実と、政府がその対応に当たらざるを得ない事態に至っている事実を、私どもは大変申し訳なく思っています。仮に文化庁から質問が来た場合には、誠実に対応させて頂きます。また、立法がなされたときには、法令順守の姿勢を徹底して、法例違反が行われないよう指導を徹底していく所存です。このような事態になりましたこと、被害を訴えられる皆様と政府関係者の皆様に対して、心からお詫びしたいと思います」と謝罪しました。
そして、「質問権」の行使や新しい「救済法」の立法処置に関わらず、“教会改革”を進めていくとし、その推進状況の説明を行いました。主な内容として、①10月7日に全国責任者会議を開催し、会長から直接、改革の方針を説明。10月から、教会ごとに自主予算を決める体制に移行。②月収の10分の3を超える献金を受け取る際の確認証の作成、及び集計システムの開発を開始した、ということです。
会場が騒然となった“宗教2世”の登場
また、前回の“教団改革案”に追加する項目として、「宗教2世」に寄り添い改革を推進するため、教区長の約3分の1を二世牧会者に切り替える方針を決定した、ということです。この狙いについては、「宗教2世が通過してきた、同じ悩みに対応するのにふさわしい存在で、彼らの意見を吸収・理解しやすいからです。彼らが、今後の教会改革を主導していくメンバーです」と、宗教的指導者の立場である「教区長」の内、宗教2世から任命された20人を会見の場に呼び、紹介しました。
(鈴木エイト氏)
「いわゆる“宗教2世”として声を上げている人は、カルト宗教被害にあった“カルト2世”のことなんですが、当事者への配慮から『宗教2世』という呼び方を通常していて、何らかの悩みなどを持つ人を指す言葉として流布しているのです。それを教団側が利用して、『自分たちも普通の宗教で、2世信者を抱えているんだ』みたいな形で、従順な2世信者を牧会者として持ってきたという所が、すり替えというか…。いわゆる『宗教2世』として声を上げている、カルト宗教団体の2世信者たちの思いとは全く違うというところを、まず分かって欲しいです」
(紀藤正樹弁護士)
「『宗教2世』についてもいくつか分類があるんですが、大きく分けると、お父さんお母さんが現世で結婚していて“統一教会”に入って、子どもである自分も入った人。もう一つは、産まれたときから2世信者である『祝福2世』。これは厳然と分けないといけない。その次に、親が1世で入って“祝福”を受けていない2世信者で、幼い頃に入って苦しんだ信者もいますが、成人してから入るような、自分の選択のレベルがかなり高い信者もいるんです。会見で紹介された方々は、かなり年齢にばらつきがありました。『宗教2世』と言っていますが、あのばらつきを見ると、自分の意思で入った2世信者の方もいらっしゃるのではないかと思います。服装で判断すると、ほとんどが男性で、“統一教会”の『男尊女卑』という教義を象徴しているような2世信者の集まりで、それを見せられても“統一教会”の都合に見えるので、もう少し事実関係を明らかにして欲しいと思います」
さらに、第三者的な立場と視点でアドバイスをもらうため、「国際的な、新たなリーガルチームを編成した」という発表もありました。これについて紀藤弁護士は、
(紀藤弁護士)
「第三者委員会は、その会社からお金はもらいますが、完全に独立しなくてはなりません。場合によっては、守秘義務を解除するような契約を結ぶのですが、『第三者的』という言葉にあるように、自分たちがお金を払って雇った弁護士が内部で検証しても、それは内部委員会であって、外部ではないので『第三者』という言い方はしないです」
橋田氏訪問についての説明から元妻の映像放映へ
そして、“統一教会”信者の元夫である橋田達夫氏の自宅に訪問したことについて、勅使河原本部長は、「私は、どこかでお話を聞きに行かなければいけないと思っていました。すぐには時間がとれなかったが、10月16日には時間があるということで、15日に高知教会から一本連絡を入れて頂いて、『明日お話をしたい。1対1でお会いしたい』というお話をさせて頂きました。高知教会からお話が返ってきて、橋田さんは『なぜ1対1である必要があるのか、できれば会うとしても1週間後ぐらいにして欲しい』とお断りがあったんです。私としては、滅多に高知に行く機会を作れないことと、どうせ行くのだったら奥様の意見も聞いてみたいという思いもありましたので、予定通り16日に行ったんです。私の思いは、とにかく会って事情やお話を伺わないといけないという動機でありました。もし訪ねて行って、ご在宅でなければ帰ればいい、ということで伺いました。行くと、倉庫のようなところにお住まいになっているんだと思うんですけど、1mぐらい扉が開いていましたので、覗いたら居たので自己紹介して、『お話を伺いに来ました』と言いました」と話し、マスクなしでの訪問や言論を封殺するような圧力をかけたことはなく、「私は彼がテレビに出ることは、何ら問題だと思っておりません」と、これまでの報道については一部を否定しました。
そして、橋田氏が呼んだ警察が来た後はその場を離れ、高知教会で橋田氏の元妻と会ったということです。勅使河原氏は、「奥様のお話をお聞きする中で、どうもご主人のテレビ等でおっしゃっている内容と、ずいぶん違うと感じました。そこで私は奥様に、『その内容をTVで語って頂くことは可能ですか?』と聞いたところ、『こういうところに来て、質問を受けるのはもう自分はもう年もそうだし、そういう立場ではないが、録画撮りであれば話しても構わない』ということで、翌々日に東京に来ていて頂いて、本部の地下で撮影したものがございます。これをまず、皆様に見て頂きたい」と述べ、会見では元妻とみられる女性の映像が流されました。
Q.勅使河原氏の会見での言い分と、橋田氏の言い分の相違点はありますか?
(鈴木氏)
「かなり齟齬があります。橋田さんは、勅使河原氏は『メディアに出ないでくれ』という発言をして、もっと高圧的な感じである印象を受けていました。受け取り方の違い以上に、勅使河原氏の発言は信用できないです」
Q.この会見を見て、どう感じましたか?
(紀藤弁護士)
「『ごめんなさい』と言うのが、本来先にあるべきなのですが、“統一教会”の会見は、自分たちにはこういう正当性がある、相手にはこういう問題があると言い続けて、素直な謝罪にならないんです。今日、未来の改革を述べたんですけど、現在、借金献金がどのくらいあるかということは一切話さない。なんら事実の継承がなくて、前半はまだ聞けたのですが、後半は自分の言ったことの正当性や、橋田さんの所に行った正当性を述べて、最終的には奥さんの証言をビデオで撮影して『それを流します』というのは、あまりにも誠実な謝罪、あるいは“教団改革”とは到底思えません。一般の方である橋田さんと違い、勅使河原氏は上下関係で言うと上の立場である教会の牧会者が、本人から聞いたり、その場であったことを、公の席でつまびらかにすることは、プライバシーの侵害、場合によっては損害賠償請求という内容に入っていくと思います。私は正直言ってこの会見は驚きました」
Q.橋田氏の元妻の声を撮ったVTRを流すというのはどういうことなのでしょうか?
(紀藤弁護士)
「宗教者としての素養に欠くと言うことが、第一前提としてあると思います。この問題を扱うため、多くの宗教者とお付き合いをする中で分かりましたが、宗教者の一番重要なものというのは、『牧会』なんです。信施さんをどうやってケアし、宗教者として高みに立ててあげられるかという、その『教え』なのです。その柱となるのは、心情を聞くときの守秘義務です。そして、過度な精神的圧力をかけないことは、あまりにも常識的な素養なのですが、勅使河原氏は”統一教会”の中でも責任ある立場として、橋田さんに対する対応も“自分の都合”ですよね。全く謝る姿勢が見られない。相手に精神的な配慮が全くないです。他方の、橋田さんの元奥さん、つまり信者さんが、仮に『話してもいい』と言ったとしても、『ご主人との関係もあるから仲介しましょう』と言うならまだ分かるのですが、会見でいきなり流すというのも、橋田さんに対する配慮だけじゃなくて、信者の奥さんに対する配慮もない。素養にかなり問題があるなという印象を持ちました」
Q.橋田氏への対応も含めて、教団の対応についてどう思われますか?
(紀藤弁護士)
「本当の意味で悪いと思っていないんです。『個人の自己責任だ』というところから、絶対に抜けられないんです。今回の会見で、橋田さんの元奥さんの映像を流すことは、本来であれば上の立場の人が止めるべきところを、むしろアドバイスをしていると思われます。結局、判断が逆なんです。心底本当に悪いと思っていたら、今日の会見のようなものはできないと思います」
(情報ライブ ミヤネ屋 2022年10月20日放送)