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『別府ひき逃げ事件』八田與一容疑者(27)

【いまだ逃走中】「これは殺人であって、ただの“ひき逃げ”ではない」重要指名手配犯・八田與一容疑者、事件から2年経過も手がかり掴めず、遺族が悲痛な胸の内を…元警部が捜査の行方を独自解説「大都市圏に潜伏している可能性が高い」

 2022年6月、大分・別府市で起きた『別府ひき逃げ事件』。赤信号で止まっていた2台のバイクに軽自動車が追突し、バイクに乗っていた男子大学生1人が死亡・1人がケガをした事件です。軽自動車に乗っていた大分・日出町の会社員・八田與一(はったよいち)容疑者(27)は、その場に車を乗り捨て、裸足で逃走。2023年9月には、ひき逃げ事件としては初めて『重要指名手配』に指定されましたが、事件から2年経った今も捕まっていません。一方、関東を中心に5000件超の目撃情報が寄せられていることが判明。現在の状況は?潜伏先は?元徳島県警捜査1課警部・秋山博康氏の解説です。

大分・別府市で起きた“ひき逃げ事件”の経緯

 事件が起きたのは、2022年6月29日。赤信号で止まっていた大学生が乗るバイク2台に、後ろから軽乗用車が衝突し、1人が死亡・1人がケガをしました。

 車を運転していたとみられる八田與一容疑者(27)は事件直後、車を乗り捨て、その場から逃走。警察は『救護義務違反(ひき逃げ)』の疑いで逮捕状を取って、行方を追っています。

 捜査関係者によると、八田容疑者は速度制限40km/hの道路を100km/h近くで走行した上にブレーキ痕がないことから、意図的に追突した可能性があるといいますが、2024年6月5日時点では『過失運転致死傷罪』は適用されていません。

元徳島県警捜査1課 警部・秋山博康氏

Q.これは、あえて『過失運転致死傷罪』を入れていないのですか?
(元徳島県警捜査1課 警部・秋山博康氏)
「『救護義務違反』というのは、“事故を起こした者が救護していない”という、事故後の話です。ですから、本来なら『危険運転』や『過失運転』という事件と、『救護義務違反』という事件の“二つの事件”で逮捕状を請求するのが、通常です」

Q.では、ひょっとしたら『殺人罪』が入ってくるかもしれないということですか?
(秋山氏)
「その通りです。逮捕状を請求するときに、前の段階の一つの事実が過失なのか、それとも故意犯なのか―。故意犯であれば、“車を凶器とした殺人”も念頭に請求したと思われます。だから、過失か故意犯かはまだ特定せずに、『救護義務違反』だけを令状請求したと。私からすると、中途半端な令状請求に感じます」

事件直後の逃走経路を複数の防犯カメラが捉えていた

 事件直後、八田容疑者が現場から裸足で逃走し、ヨットハーバーのほうへ向かう姿が防犯カメラに映っていました。事件の2日後には八田容疑者が事件当日に着ていたTシャツが見つかり、警察が付近を捜索しましたが、手掛かりはありませんでした。

Q.「財布や携帯電話などが車の中に残されていた」という情報もありますよね?
(秋山氏)
「本来の“ひき逃げ”は、車はすでに逃走していて現場にはいませんので、塗料の一部を発見して、車を特定して、一台一台の所有者を当たっていくという地道な捜査をするわけです。ところが、この事件は現場に八田容疑者の車、さらにその車の中に八田容疑者名義の携帯電話などを残して、逃げています」

Q.財布や携帯電話がないとしたら、逃走するためには自宅に帰って衣類や現金を取って…というのが一番手っ取り早いと思いますが、どう考えますか?
(秋山氏)
「自宅も遠くではありませんので、走ってでもとにかく自宅へ逃げて、逃走資金を準備して着替えて、県外に逃走した可能性は非常に高いと思います」

道交法違反では初となる『重要指名手配犯』に

 2023年9月には、警察庁が「全国の警察を挙げて捜査すべき凶悪事件」として、道路交通法違反では初となる『重要指名手配』に指定。懸賞金は、最大で800万円となっています。情報提供は、指定後1か月で1360件あったといいます。

関東を中心に5000件超の目撃情報が

 さらに、2024年5月末までに、関東を中心に5000件を超える目撃情報が寄せられています。

Q.逃走犯は、人に紛れられる大都会にいるケースが多いですよね?
(秋山氏)
「確かに多いです。人相を変えたり変装したりするので、大勢の中では見つかりにくいというのもあります。私が追い続けた指名手配の被疑者には、60kg台だったのが100kg台ぐらいに太って人相を変えていた者もいました」

遺族が殺人・殺人未遂容疑で刑事告訴

 亡くなった大学生の父親は、「これは殺人であって、ただの“ひき逃げ”ではない。凶器を車に変えただけで、完全な殺人だ」と話しています。

 遺族の悲痛な訴え―その背景には、事件があったあの日、もう片方のバイクに乗っていてケガをした大学生の重要な証言がありました。

(被害に遭った大学生)
「八田容疑者がスピーカーですごく大きな音を流していて、それをちょっと不審に思った(亡くなった)彼が、少し見た。それにカッとなったのかわからないが、八田容疑者が言いがかりをつけてきて…本当にそれだけのことで、15~30秒ぐらいの、すごく短いやり取りだったと思います」

 八田容疑者と亡くなった大学生との間に起きていたという、“トラブル”。事件が起きたのは、その数分後でした。

(被害に遭った大学生)
「僕が覚えているのは、アクセルをすごく踏む音がして、『これ、何かおかしいな』と思ってバイクのミラーでパッと見たら、もうヘッドライトが近くまで来ていて、ヤバいと思って、一緒にいた彼に伝えなければと思って彼のほうを向いたら、もうその瞬間に突っ込まれて…。最後に目が合って、それが最期でした」

 2023年9月、遺族などは「八田容疑者が故意にはねて殺害した可能性が高い」として殺人・殺人未遂容疑で刑事告訴を行いました。また、「『ひき逃げ』ではなく、『殺人罪・殺人未遂罪』に切り替えて捜査してほしい」という5万人以上の署名を、大分県警に提出。『救護義務違反(ひき逃げ)』容疑の時効は7年で、既に2年が経っているため成立まで約5年ですが、『殺人』容疑には時効がありません。

亀井弁護士の見解は…

 ただ、『救護義務違反』容疑から『殺人』容疑に切り替わる可能性について、弁護士・亀井正貴氏は「八田容疑者の証言もなく、防犯カメラやドライブレコーダーなど客観的に殺意を示す証拠がなければ、現実的には難しい」との見解を示しています。

Q.もしも八田容疑者の車にドライブレコーダーがついていて、意図的に車をぶつけるようなことを話していたとしたら、大きな証拠になりますよね?
(秋山氏)
「確かに、ドライブレコーダーは動かぬ証拠です。ただ、本件については、もう一人の大学生の目撃情報がありますので、それが非常に重要な証言だと思います」

犯人発見のためには、『声』を聞き逃さないこと

 秋山氏は、現在の状況については「変装して偽名を使い、身分証明書を必要としないところで住み込みで生活しているのでは。犯人隠避罪に当たるため、友人など協力者がいることは考えにくい」、潜伏場所については「事件現場である九州から離れ、人が多い大都市圏にいる可能性が高い」と推測しています。また、犯人発見のために重要なのは『声』だということです。

Q.どんなに姿かたちを変えても、声や話し方は変えられないですか?
(秋山氏)
「声は絶対に変わりません。有名な福田和子受刑者も、声が逮捕のきっかけになりました」

「あなたも誰かに愛されていたはず」被害者の母がコメント

 事件発生から、まもなく2年―。被害者の母親が、悲痛な胸の内を明かしました。

(被害者の母親のコメント/一部抜粋)
「八田與一は、今どこで何を思って、逃げ回っているのでしょうか。私たちが息子を愛したように、『よいち、よいちくん、よーちん』そう呼ばれていたあなたも、誰かに愛されていたはずです。誰かが、あなたのことを心配しているはずです。家族や親戚、友人の皆さん、どんな方法でも構いません。どうか出頭するように呼び掛けてください。よろしくお願いします」

 どんなに些細なことでも、0977-21-2131(大分・別府警察署)まで情報提供をお願いします。

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年6月5日放送)

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