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【独自解説】“受け子”役は「15歳の女子中学生」 50人に1人が“闇バイト”の勧誘経験…「特殊詐欺」“低年齢化”の背景にある、「情弱・情強」と「借金」とは
2023年7月20日 UP
社会問題となっている「特殊詐欺」に関わる“闇バイト”ですが、今新たな問題となっているのが「低年齢化」。17歳の女子高校生や15歳の女子中学生が相次いで逮捕されるなど、中高生までが簡単に犯罪者になってしまう背景には、若者特有のある価値観が後押ししているといいます。犯罪ジャーナリストの石原行雄氏と元埼玉県警・捜査1課警部補の佐々木成三氏の2人が解説します。
6月、新潟県上越市の80代の女性を訪ねて現金700万円をだまし取った疑いで、住所不定の15歳の女子中学生が逮捕されました。この女子中学生は、被害女性の息子の上司の娘になりすまし、“受け子”として現金を受け取ったとみられています。
Q.中学生が詐欺に加担するということが起きているのですか?
(犯罪ジャーナリスト 石原行雄氏)
「“闇バイト”はSNS上で募集をかけていますので、未成年者が引っかかりやすいのです。
2017年に特殊詐欺の認知件数と被害額がピークになったのですが、その前後には『平日の昼間なのに若い子がうろついていて怪しい』という通報で警察官が駆け付けて職務質問をすると“受け子”役の女子高校生だったとか、『銀行の方から来ました』と言って来た人物が、明らかに若く着慣れないダボダボのスーツ姿で、蓋を開けたら中学生の“受け子”だった、というケースもありました」
また、2月に札幌市の貴金属買取販売店で高級腕時計・計41点、時価総額約1700万円相当が盗まれる事件があり、6人が検挙されましたが、指示役の28歳の男の共犯者として17歳の女子高校生も逮捕されています。指示役は秘匿性の高いアプリで実行役に指示をしていました。そして女子高校生は、SNS上で高額報酬をうたい、“闇バイト”で実行役を募集していたとされています。
Q.この17歳の女子高校生は、グループにとってどういう存在なのでしょうか?
(石原氏)
「“闇バイト”で人員を募集するときに、いろいろな使い道があるため、女性もキープしておきたいということがあります。募集の際リクルーターが女性の方が、女性を取り込みやすいということがあり、例えば“ルフィー事件”と呼ばれる事件でも、容疑者の一人として女性がフィリピンから強制送還されています。その女性は『女性だけを狙ってSNSで取り込め』という命令があったという供述をしています。被害に遭う側も、男性より女性の方が気を許すということもあるようです」
(元埼玉県警 警部補 佐々木成三氏)
「この17歳の女子高校生は、一連の事件において大きな役割を担っていたと思います。“闇バイト”にはかなり危険性があると、メディアで大きく報道されています。“闇バイト”は危険だと認識している未成年者が多い中でも、リクルーターが女子高校生となると、男子高校生を取り込みやすくなります。罪の希薄さがより増してしまい、“闇バイト”に引きずり込まれてしまいます。また、この女子高校生も指示役の男にうまく使われていたと感じます」
“闇バイト”勧誘の実態です。アンケートで「“闇バイト”に誘われたとことがある」と答えた高校生は、男子で2%に上ります。石原氏によると“闇バイト”に引きずり込まれる背景には「情弱・情強」と「借金」があるといいます。
Q.「情弱・情強」とはどういうことでしょうか?
(石原氏)
「ネット上で若者によく使われている言葉で、『情報弱者・情報強者』を短くしたものです。SNSには、迷惑動画が投稿されて人気になって『いいね!』がたくさん付くと、“やったもの勝ち”になってしまうような悪質な土壌があります。“闇バイト”でも『多少犯罪に絡むかもしれないけれど、こんなに“おいしいバイト”しないとバカ(情弱)でしょ』といった価値観が一定の若者の中にあります。その「情弱・情強」といった価値観が悪い意味で後押ししていると思います」
Q.もう一つの「借金」はどういった背景なのですか?
(石原氏)
「“闇バイト”に加担したり、加担しそうになった若者を取材していると、若いのに借金を抱えている人がとても多いのです。“ルフィー事件”でも岡山の不審物を置いた事件でも、実行役は借金返済に困っています。そういうところを突かれてSNSで簡単に目に入ってくる情報で“闇バイト”に登録してしまうというのがあります」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年7月18日放送)