記事
【独自解説】金総書記“リバウンド”で話題の北朝鮮、外相に「ナゾの女性通訳」就任!過去にトランプ大統領を激怒させた…いったい何者?専門家解説
2022年6月16日 UP
北朝鮮で、女性初となる外相に崔善姫(チェ・ソニ)氏が任命されました。彼女は一体、どんな人物なのでしょうか?そして、起用の狙いとは?一方、注目されている金正恩総書記の健康問題と7度目の核実験の行方は?コリア・レポート 辺真一(ピョン・ジンイル)編集長が解説します。
北朝鮮の新外相はアメリカの“ウラ”も“オモテ”も知る「ナゾの通訳」
北朝鮮の崔善姫(チェ・ソニ)新・外相(57)は、今までアメリカとの交渉を担ってきた人物で、6月8日~10日に開催された党中央委員会総会の拡大会議で、新たに“外相”そして、党の“政治局員候補”に任命されました。
崔氏は、1964年平壌で生まれ、金日成国家主席の秘書室長も務めた崔永林(チェ・ヨンリム)元首相の養女になりました。北京、マルタ共和国、オーストリアに留学経験があり、英語が堪能で、2003年の核開発問題を話し合う「6か国協議(日・米・韓・北・中・露)」に通訳として参加しました。そのため、崔氏には、「ナゾの通訳」・「上司より偉い通訳」といった異名があります。その後、2010年に北朝鮮外務省米州局副局長に就任し、2016年には北米局長に昇格、2018年には「米朝首脳会談」で実務者協議を任されています。2019年に第1外務次官に昇格し、今回新たな外相に選ばれました。
Q.崔善姫 新外相はどういった立ち位置の人物ですか?
(コリア・レポート 辺真一編集長)
「崔氏の養父の崔永林元首相は当時の党のナンバー3です。そういう意味で後ろ盾が強いと思います。また、この崔元首相の養女になった経緯ですが、朝鮮戦争やその戦後復興の中で命を落とした“愛国者の遺児”を党の幹部が育てるという制度で養女になっています。この“愛国者の遺児”という点でも将来の出世が約束された“周りからも一目置かれた存在”ということになります」
Q.崔氏が外相に就任したのは、2018年の「米朝首脳会談」を任されていることもポイントですか?
(コリア・レポート 辺真一編集長)
「英語が非常に堪能なのも理由の一つでしょう。1990年代から通訳として外交渉を行っていて、クリントン政権からブッシュ政権、オバマ政権、トランプ政権、そして今のバイデン政権まで、アメリカの歴代政権を相手に交渉しています。アメリカの“ウラ”も“オモテ”も全てを知り尽くしているということで、アメリカにとって“手強い人物”であるということも理由の一つだと思います」
崔氏は強気の発言でも知られていて、2018年の米朝首脳会談の交渉時に、当時のアメリカの副大統領のペンス氏が「北朝鮮が非核化に応じない場合リビアのように終わるかもしれない」と発言したところ、崔氏は「許容できない厚かましい発言」「無知で愚かな発言が、アメリカ副大統領の口から噴出したことに驚きを抑えきれない」「我々と会議室で会うか、核対核の最終決戦で対決するのかは完全にアメリカの決断と振る舞いにかかっている」と発言し、トランプ大統領(当時)が激怒し会談の中止を発表しました。
また、2019年の米朝首脳会談の開催当時、ボルトン大統領補佐官の「北朝鮮が核を放棄すると戦略的に決定したことを示す真の兆候が必要だ」との発言に「横柄な発言だ」「分別のない発言を続けるなら良いことはない」「朝米首脳の意思に対する無理解からか、あるいは自分の考えをユーモア交じりに話してハズしたのか、とにかく私には何の魅力もなく聞こえマヌケに見える」と返しました。
Q.崔氏の就任は「北朝鮮の外交の相手は、韓国ではなくアメリカだ」という意志表示でもあるのでしょうか?
(コリア・レポート 辺真一編集長)
「アメリカが譲歩しないと北朝鮮は対話しないというはっきりしたメッセージです。崔氏のこれまでの発言だけでなく、顔や表情を見ると、非常に意志の強さが見てとれます。2021年の3月17日には『アメリカは2月の中旬から様々なルートを通じて、我々と接触を試みているようだが、アメリカが、敵視政策を撤回しなければ、いかなる米朝接触も対話も行わない立場を明らかにする。したがって今後もアメリカの接触を試みる動きは無視する』と言っています。実際にその後、1年3か月一切呼びかけに応じていません。このことも彼女の意思の強さの表れだと思います。その人物が外相になったわけですから、ここを突破するのは容易ではないでしょう。『今後の外交面でアメリカに対する対決姿勢をさらに鮮明にしていく』という北朝鮮の意思表示だと思います」
金正恩総書記リバウンドはその性格が原因?
「金正恩(キム・ジョンウン)総書記重病説」などもありましたが、金総書記は減量に失敗してリバウンドしたのではないかとの情報が入っています。2021年の1月と同年12月の写真を比べると、かなりやせた印象で、韓国の国家情報院も「10kg~20kgは減量したと思われる」と分析していました。しかし、2022年の6月8日の写真では、またふっくらとしていて「減量は失敗したのでは?」と言われています。
Q. 金正日総書記や金日成国家主席の生誕記念など大規模イベントが続いたことや、4月末から“新型コロナ”感染確認などで統治ストレスがピークになっているのも太ってしまった原因ではないかと言われていますが、ほかに考えられる原因はありますか?
(コリア・レポート 辺真一編集長)
「私も1月頃から、また太り始めたなと感じていました。アメリカに亡命している“金総書記の叔母”の証言では『金正恩総書記は感情の起伏が激しく、非常に短気で忍耐強くない』ということです。金総書記の夫人が禁煙をすすめても2か月ともたなかったといいます。減量も同じでその性格上、長続きしなかったのが原因の一つだと思います」
“7度目”の核実験の前には“偵察衛星”の発射か
Q.金総書記の健康問題や減量失敗以上に気になるのは、7度目の核実験がいつか?ということです。6月7日アメリカの国務省のソン・キム北朝鮮担当特別代表が「北朝鮮は核実験の準備を終えた。いつでも実験ができる」と核実験に踏み切る見方を示していますが…
(コリア・レポート 辺真一編集長)
「核実験という“とっておきのカード”をそう簡単に切る事はないと思います。もう少し米韓を揺さぶるはずですので、6月はまずなくて、核実験をする前に、もう1~2回ICBMの発射を行うと思います。そして、偵察衛星の発射もあるでしょう。実際2022年に入ってから行ったICBM発射実験のうち2回は偵察衛星発射の実験を行ったと言っていますので、次は本番の偵察衛星を発射して、その後に核実験があると考えています。その核実験は早ければ7月4日の『アメリカ独立記念日』が候補の一つです。独立記念というアメリカにとってめでたい日に核実験をされるのはアメリカとしては悪夢でしょうから、北朝鮮があえてぶつけてくる可能性は考えられます。次は7月27日の『朝鮮戦争休戦協定日』です。『米朝首脳会議で北朝鮮が求めた終戦宣言に応じていれば、この核実験はなかった』というメッセージを込めて核実験のボタンを押す可能性は十分あると見ています」
(情報ライブミヤネ屋 2022年6月14日放送)