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【独自解説】「子どもと関わる人間として失格」3歳児バス置き去り死に保育士てぃ先生が怒り、今後の対策は「テクノロジーに頼るのも必要」
2022年9月9日 UP
9月5日、静岡県牧之原市の認定こども園「川崎幼稚園」に通う3歳の女の子、河本千奈ちゃんが通園バスに置き去りにされ、熱中症で亡くなった事件で、7日、園の増田立義理事長が会見を開きました。その会見で見えてきたのは、あまりにも“ずさんな安全管理”の実態でした。悲惨な事件はなぜ防ぐことができなかったのか?今後、同じ過ちを防ぐにはどうしたら良いのか?関東の保育園に勤務する現役の保育士で、育児アドバイザーとして他の園にも指導を行っている、てぃ先生に保育現場の実情を聞きました。
人手不足問題は存在、しかし「理由にならない」
Q.日本の保育園や幼稚園などの現状では、やはり人手が足りないという事実はあるのですか?
(保育士・育児アドバイザー てぃ先生)
「はい、それは事実としてあります。今回、ドライバーが休みで理事長が代わりに運転したということですが、僕がアドバイザーで入っている保育園の中でも同じように園バスがある所があるのですが、ドライバーが欠席した際には、園長などがあらかじめ免許を取っておいて、代わりに運転するということも対応としてはあります。ただ、今回の人手不足とか先生たちへの負担が多いというのは、あくまで園側・業界側の勝手な都合や原因であって、それを理由にお子さんの命がなくなるということは、断じて許してはならないことですし、言い訳がましいという一言に尽きると思います」
Q.バスに同乗していた職員は、シルバー人材センターからの派遣で来ていたということですが、お子さんの命を預かるということは、年齢関係なく「プロフェッショナル」がたくさんいなくてはならないということであり、ただ人がいれば良いというものではないのではないでしょうか?
(てぃ先生)
「そうですね。特に保育園や幼稚園は、ただお子さんを預かるという場所ではなくて、お子さん達の健やかなる成長をサポートするという面も、当然ながら含まれているわけですから、そういった意味で、そこにいる人間たちはプロでないといけないですし、プロであるというのは資格の部分だけではなくて、意識の部分においても重要なことだと思います。この園は、過去にもヒヤリハットがあったということなので、そういう部分の欠如があったのではないかと思ってしまいます」
重なったミス、「子どもと関わる仕事をする人間として失格」
Q.この園には、事件が起こってしまった原因が複合的にあったということですよね?
(てぃ先生)
「ちょっと厳しい言葉かもしれませんが、はっきり言ってありえないです。去年福岡でも同様の事件があったことを受けて、全国どこの保育園・幼稚園・子ども園でも気を付けていたことなんです。そもそも、対策をやっている園と言うのは、事件・事故がある前からずっと気を付けているのが当たり前なんです。改めて、『気を付けましょうね』という通達があること自体が、業界としてはめちゃくちゃ恥ずかしいことなんです。やって当たり前のことなので。それは先生だという前に、人間として、子どもを預かる身として、安全を怠らないという部分は当たり前のことなわけですから、『4つもチェックしていませんでした』なんていうのは、ありえないです」
Q.登園していないお子さんについて、なぜ登園していないのかを保護者に確認をしないのもありえないですよね?
(てぃ先生)
「そもそも大事なお子さんを預かっているわけで、その大事なお子さんが来ない時点で、風邪ひいたのかな?ご家族の誰かがコロナを患ってしまったのかな?などと心配するのが当たり前じゃないですか。連絡する・しないの前に、『心配をする』という心が生まれていないことが、不思議でならないです」
Q.過去にも“送迎トラブル”があった際に、その情報共有をしていないというのは、ちょっと信じられないですよね?
(てぃ先生)
「ありえない対応だと思いますし、すごく疑問に思っているのが、普段とは違う対応が行われていたわけで、普通なら余計にチェックをするはずなんです。いつもと違うなら、より確認を行わなければならないのに、『いつもと違うから確認できませんでした』というのは、お子さんと関わる仕事をしている人間としては、失格としか言いようがないと思います」
今後の安全管理、「テクノロジーに頼ることも必要」
2022年5月に行われた調査では、保育園・幼稚園の送迎担当者の267人中、「送迎バスに園児を残したまま車を離れたことがある人」は21人(7.9%)いて、直近1年間では、15人が経験していました。なぜ“車内置き去り”が起こると思うか?という質問に対しては、(1)送迎者や職員の意識が低い、(2)人手不足、(3)防止するための規制やシステム不足、が原因としてあげられました。
Q.送迎者や職員の意識が低いと言われると、これから保育園などに子どもを預ける親御さんは、いったい何を基準に選んでいいのかすごく悩むと思いますが?
(てぃ先生)
「去年福岡の事件が起こった後、園には自治体から対策の通達がたくさん入っていますし、監査もたくさんあったわけです。それでもこういった事件が起こっているということは、もはや対策云々の前に、園自体に余裕があるかや、職員達の意識の部分などがそもそもの問題だと考えると、今後対策が練られて園でも実施となっていくのでしょうけども、果たして本当にそれで解決するのかという所は、疑問ではあります」
Q.例えば、お散歩に出かけるときなんかでも、人数の確認はもちろん、安全管理にものすごく気を付けていらっしゃるのですよね?
(てぃ先生)
「はい、子どもの命や安全を守ること以上に大切な業務は、僕達にはないので」
Q.監査というのは書類がそろっていればいいのですか?
(てぃ先生)
「実情としては、そうですね。何日間もかけて自治体の人が来てチェックするというよりは、書類だけを見て先生達と話をして、『問題ないですね』とするのが監査の実情ですね」
Q.これから、ますます高齢の方が働く社会になったときに、ヒューマンエラーを防ぐためにもシステムを義務化していくべきですね?
(てぃ先生)
「おっしゃるとおりで、人間の意識や気持ちの部分だけでカバーできない部分は出てくるわけで、そうするとこういう重大な事故につながるケースもあるわけですから、やはりAIとかテクノロジーの部分に補ってもらう考え方は、これから先もっともっと必要になってくると思います」
Q.アメリカやヨーロッパで使用されている、車内の“置き去り”を検知するセンサーを日本でも義務化しないといけませんね?
(てぃ先生)
「そうですね。特に慢性的に人手不足になっている業界で、かつ忙しいと意識が下がっていく環境下であれば、こういった『物に頼る』ということも、考えていく必要があると思います」
Q.一方で、一生懸命子どもさんのために頑張っている園もあるわけで、そういう人達がまた信用をなくすようなことはあってはならないですね?
(てぃ先生)
「これはあくまでも一部で、ほとんどの園はちゃんとやっているんです。こういう一部の園がやらないことによって、重大事故につながったわけですから、そこは世間の皆さんにご理解いただきたい部分ではあります」
(情報ライブ ミヤネ屋 2022年9月8日放送)


