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【独自解説】“統一教会”『異例ずくめ』の会見を有田芳生氏と紀藤正樹弁護士が徹底解説「都合が悪いことは説明しない」「国会できちんと議論を」
2022年10月25日 UP
10月20日、“統一教会”が行った6度目の会見は、現役信者による反論VTRが流れるなど『異例ずくめ』の内容でした。会見を見た元2世信者からは、「最低の会見だった」との声も上がっています。ジャーナリストの有田芳生氏と紀藤正樹弁護士の2人がこの会見について徹底解説します。
信者の元夫にアポなし訪問の理由は「とにかくお話を…」
会見の中で特に語られたのは、信者の元夫・橋田さんに関する話です。10月16日に“統一教会”の勅使河原協会改革推進本部長が橋田さんの自宅をアポ(事前約束)なしで訪れたことについて勅使河原本部長は、「10月15日に高知家庭教会から橋田さんに『明日1対1でお話をしたい』と連絡を入れたところ、橋田さんからは『1対1の必要があるのか?』『1週間後くらいだったら』と面会を断られた」と話しました。さらに、勅使河原本部長は「高知に行く機会はめったに作れないので、翌16日にアポなし訪問をした」としています。また、勅使河原本部長は「橋田さんが非常につらい思いをしておられるのにも関わらず、その声を家庭連合が聞いてくれないと、いうことで、私はどこかで話を聞きにいかなければいけないと思った。とにかくまずお話を聞くということにより誠意を示したつもりだ」と語りました。
一方、橋田さんは「勅使河原本部長に『メディアに出てほしくない』とはっきり言われた」と主張し、「言論封殺」行為として抗議書を提出していますが、勅使河原本部長は「言ってない」と否定しています。
Q.会見でこのような主張をするのは、橋田さんが証言されていることが“統一教会”側にとって非常に影響力があったということでしょうか?
(有田芳生氏)
「教団の2世3世がかなり動揺しているので、今回の会見には、それを抑えるという教団の内部向けのメッセージの側面が大きくあったと思います。勅使河原本部長が、『来るな』と言われてもアポなしで訪問したのも、彼の判断ではなくて教団の上司の指示でしょう。“統一教会”の教えでは上司の言うことには絶対服従なのです。そういう背景がありますので、勅使河原本部長の言葉や行動は上司たちの命令に従っているだけです。本人は逆らえず、こういう非常識なものになるのです。そういう組織構造であるという点を、これからのこの問題を見るのに押さえておいてほしいと思います」
また、会見の途中、橋田さんの元妻の動画が流されました。その中で、元妻は橋田さんとの関係について、「新婚当時からよく喧嘩していた。教会に入って関係が悪くなった訳じゃなく、入る前から悪かった」と話していました。
元妻の宗教活動について、橋田さんは「元妻は毎日朝から晩まで教会に行き、家庭のことは何もしていなかった。教団のために度々韓国にも行くようになった」と主張していますが、元妻は「教会には月に1~2回行けるか行けないか。毎日教会に行って家を空けることはあり得ない。子どもが保育園ぐらいのときに1週間アメリカにいったことはある。韓国に1週間行くことはない」と反論しています。
元妻の動画を公開した意図について勅使河原本部長は、「真実は当事者にしか分からない。当事者が二人いる場合は、もう片方の意見にも耳を傾けるべき。元奥様の話をお聞きすると、橋田さんのテレビ等で仰っている内容と、随分違うということを感じた」と話しました。
Q.橋田さんと教団の問題が、なぜか橋田さんと元妻の問題になってしまったように見えてしまいます。
(紀藤正樹弁護士)
「教団は話を矮小化したいのでしょう。勅使河原本部長は、橋田さんに悪いとは思ってないようです。悪いと思っていないので、端的な謝罪をしないで言い訳が続くのです。橋田さんと教団のどちらが悪いのか、という議論をする時に、“統一教会”がどの程度の金額を元妻から献金として受け取ったのか明らかにしないと、橋田家がどの程度被害を受けたかが分からないのですが、その点がすっぽり抜けています。そこが一番問題だと思います」
橋田さんの「長男が自殺したとき、部屋のなかにも“恨む”など色々な落書きがあったそうだ。長男が自殺した原因は、僕は“統一教会”だと思った」という主張に対して、元妻は「長男は、教会に対する恨みは一切ない。部屋の中に教会への恨みは書いてなかった」と、違う主張をしています。
また、田んぼの売却について、橋田さんは「教団は元妻に『“悪霊”がつくから長男が暴れ出す。田んぼの名義を変えたら良くなる』と説明して妻に田んぼを売らせた」と主張していますが、元妻は「長男が田んぼに行くのを嫌がって『お母さん売ったらええよ』と言ったので売った」と反論しています。
「田んぼの売買にも教団が関わっている」という橋田さんの主張について、“統一教会”として調べるつもりはあるか?という質問に勅使河原本部長は、「もし橋田さんから依頼があれば一緒に調べるが、これ以上私が入り込む必要がない。私が奥様から聞いたのは、『第三者が価格決定に関与する』ということ、私が言えるのはそのぐらい」と答えました。これに対して橋田さんは、「第三者が値段を決めてそれで契約するのか?土地については、調査を依頼するようにしたい」と話しています。
Q.どうしてこのように話が食い違うのでしょうか?
(紀藤氏)
「田んぼを売却したことに争いはないのですが、売る動機に争いがあります。元妻の長男が田んぼに行くのを嫌がるようになった経緯や『売ってもいい』と言い出した理由がすっぽり抜けていて、そこに教団が関わった可能性が大きいと思います。勅使河原本部長は聞き取りしていると思うのですが、隠しているようにしか見えません。また元妻は、『長男は“霊的”な子で、田んぼに行くのを嫌がった』と言っていて、橋田さんも“悪霊”という言葉を出していますが、“統一教会”では“霊能師”というのが出てきて『悪霊が憑く』としょっちゅう言います。『長男は霊的な子で、田んぼに行くのを嫌がった』のがどういう経過なのか、長男が“霊的”になった理由が大事だと思います。」
1億円といわれる元妻の献金額について、勅使河原本部長は、「家庭連合は献金台帳をつけているので調べればわかると思う」としながらも、具体的な金額については、「プライバシーにかかわるので、ここでは公開できない」としています。
Q.ここでプライバシーを理由にするのか?と思いますが…
(有田氏)
「1億円以上の献金が行われたのなら、改革本部長はそのお金の行方をはっきりと明らかにするべきです。“霊感商法”の事もそうですが、何のために教団を改革するのか一回も説明していません。出発点がおかしいと思います。今回の会見で出てきた橋田さんの元妻の動画について、元信者の人たちに聞くと、自分たちの経験を踏まえて『言わされている』という言い方をします。これは“統一教会”の歴史をみるとしばしばあることで、例えば教団に反対する人がいると信者であるその人の娘の話をビラに載せてばら撒くとか、1992年の勅使河原本部長も参加した“合同結婚式”ときも関係者の姉の信者を表に出して記者会見をしたりして、常に自分たちの都合の良い主張をします。それが“統一教会”のかつてからのやり方なので、そういう目でみないといけないと思います。そして、自分たちの都合が悪いことは説明しないのも教団の特徴です。勅使河原本部長は今回の会見で、献金の台帳があると言っていますが、山上徹也容疑者の母親が1億円以上の献金をして、その献金はどこに行ったかを聞いた時には、『台帳は残っていないので分かりません』と説明していました」
“2世信者”の新しい地区長が突然ずらり…「彼らが最もふさわしい」
2世信者への対応に関して勅使河原本部長は「全国68地区のうち20の地区長を2世信者にした。彼らが通過してきた同じような悩みを今抱えている2世信者に対応するには、彼らが最もふさわしい」と語り、実際に2世信者と思われる人たちが記者の前に並びました。
(有田氏)
「改革の象徴としてこの20人の2世信者を出したのなら、所属や氏名も出すべきです。また、記者も2世問題をどう考えているか質問したかったと思いますが、2世信者は一言も喋らないでさっと出てきて、さっと去っていくというのは、元信者も大きな違和感を持っていました」
今回の会見について先日会見した元2世信者の小川さゆり(仮名)さんは、「過去一番最低な会見だった。今回一番ひどいと思ったのが、信者を盾に使ったこと。信者は、いち被害者だがさらし上げ、自分たちの弁明に利用するのはすごく最低な行為だなと思った」とコメントしています。
勅使河原本部長は、小川さんの会見中止を求めるFAXについて、「私はすべきではなかった、と実際は思っている。私がやったわけではない。小川さん(仮名)を巡る問題は、事実と仰っている内容があまりにもかけ離れて、なおかつ影響が大きい」と語りました。
Q. 勅使河原本部長は「私がFAXを送ったわけではない」と言っていますが、これが事実なら彼が教団の改革推進本部のトップなのか疑わしいですね。
(紀藤弁護士)
「勅使河原本部長は、広報的なところを担当しているだけで、実権はないと思います。つまり、過去に遡って何かすることはできないと思います。しかし勅使河原本部長も長く教団にいるので、どういう経緯で通知を送ったかは知っているはずです。しかし『権限がない』ので話さないだけだと思います」
新事実発覚、教団関連団体が一部自民議員と“政策協定”か?
また、“統一教会”をめぐっては新たな事実も発覚しています。教団の関連団体(「世界平和連合」「平和大使協議会」)が、「憲法改正」や「日韓トンネル実現」「LGBT問題・同性婚合法化の慎重な扱い」など教団側が主張する政策に賛同する内容の「推薦確認書」への署名を一部の自民党議員に求めていたという事実が判明しました。
自民党の斎藤洋明議員は「政策の方向性としておおむね合致しているという判断のもとにサインをさせて頂いた。書面で確認したという意味でとれば、政策協定ということになると思う。大変不適切な行動であった」としています。一方教団の賛同会員であった井上義行議員は「推薦確認書」への署名は否定しました。
Q.自民党の点検後も色々と出てきていますね。
(紀藤弁護士)
「新聞報道によると『推薦確認書』だけではなく『基本理念セミナー』への参加要請もあったという話も出ています。『推薦確認書』を締結した議員だけでなく、“統一教会”の運動全体を説明すると思われる『基本理念セミナー』に出席した議員が何人いるのかというのも重要な問題だと思います。こういう問題は、自主点検では難しいと思います。私はこの問題は、国会の中に特別委員会を作って調査権限を与えて“統一教会”からも調査できるようにしないと“統一教会”と“政界”との関係は、分からないまま終わる印象を受けます」
Q.有田さんは『推薦確認書』についどう思われますか?
(有田氏)
「“統一教会”の関連団体である「国際勝共連合」が1980年代から行っていた『共産主義に勝利をする「勝共推進議員」の合意文章を納得して結んでもらったら選挙応援をします』というものが今回出てきたものです。岸田総理は『選挙における接点が政策に影響を及ぼすということはないと確信をしております』と言いますがそうではありません。富山市の自民党会派が市議会に「自分たちは教団関連の講師の話を聞いて、自分たちの政策に一定の影響を受けた」という報告書を出しています。こういうことが全国各地で起きています。安倍元首相銃撃というとんでもない事件が発端ですから、国会に第三者委員会を作るべきです。アメリカでは1970年代に『フレイザー委員会』という小委員会を作って“統一教会”について分析をして、報告書を出しています」
この件に対して勅使河原本部長は「聞いたことがあるが、誤解がないように、やっていたのはUPF(天宙平和連合)ないしは世界平和連合だと思う。国民が一般的に認められている選挙権や請願権を行使するということと、どこが違うのか?」とコメントしています。
(紀藤弁護士)
「『選挙権や請願権を行使するということと、どこが違うのか?』ということがそもそも間違っていて“統一教会”は韓国系です。韓国の中で極右思想を持つ“統一教会”が、関連団体や日本人を通じて政界工作をしていた疑いがあるということなのです。なので、日本の国民の選挙権や請願権ということと同じように語るのは間違っていると思います。ほかの国だとロビイストの規制法などがありますし、日本でも外国人の政治献金は犯罪化して禁止しています。それと同じような問題があるわけですから、国会の中できちんと議論してもらいたいと思います」
Q.“統一教会”の一番の問題は政治家がこの問題を直視しないことだと思います。
(有田氏)
「宮根さんもずっと言っていますし、私も同感なのですが、未だに岸田首相は『問題のある“統一教会”とは今後関係は断つ』と言うのですが、何が問題なのか具体的に一回も説明していません。そこが一番問題です。文鮮明教祖は80年代にアメリカで脱税によって1年6か月の実刑判決を受け刑務所に収監されました。そういう人物は、日本の入国管理法だと入国ができないのですが、彼は政治家を使って“超法規的”に日本に入国させた、こういう目的を持って政治家とつながるのが“統一教会”なんです。こういうことも多くの人に知っていただきたいと思います」
(情報ライブミヤネ屋2022年10月21日放送)