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元・厚労省医系技官 木村もりよ医師

【独自解説】新年早々、全国の“新型コロナ”感染者は1000人以上に! 来る“第6波”について感染対策のスペシャリストが徹底解説

なぜ? “感染者数急増”のワケ

 多くの人が仕事始めとなった2022年1月4日。全国の“新型コロナ”感染者は1268人となり、約3か月ぶりに1日の感染者数が1000人を超え“コロナ”を取り巻く状況に緊張が走りました。また、感染が再拡大する沖縄県の玉城デニー知事は1月5日、「まん延防止等重点措置」の適用を政府に要請することを明らかにしました。

このまま感染拡大は続くのでしょうか?厚生労働省の医系技官も務めた、感染対策のスペシャリスト、木村もりよ医師が徹底解説します。

“第6波”は来たのか? 感染拡大の理由とは…

「オミクロン株」について分かっていること

 Q.沖縄や大阪の感染者の増え方を見ても「オミクロン株」の感染力が強いということが分かるのですが、改めて“感染力”が強いというのはどのように捉えたらいいのでしょうか?
(元・厚労省医系技官 木村もりよ医師)
「今までの“第何波”というのは、変異株によって引き起こされたものだったということは分かっているので、感染力が強くなるというのは、今回の新たな変異株が私たちと共存していく絶好の条件を得られたということになります。一般的に言って感染力が強いウイルスは“致死性”が低くなります。今回のコロナウイルスも、変異を繰り返して感染力は強くなってきていますが、致死性は低くなってきていて、通常の風邪コロナウイルスに近づいていくということが言えるんじゃないかと思います。」

“ワクチン”や日本の公衆衛生は有効だったのか

日本でのコロナワクチン“3回目接種”スケジュール

 Q.コロナワクチンは2回では足りないのですか?
(木村もりよ医師)
「ワクチンは当初思ったよりは“感染を抑える”という能力が低かったようです。“重症化”においてはある程度の効果が得られたんですけれども、その持続期間が短かった、ということは分かります。ウイルスは私たちと共存していくために変異を繰り返すわけですが、これからSARSやMERSのような致死性の高いウイルスになっていくことは、まず考えられません。まずは高齢者であるとか医療従事者、基礎疾患を持った人は定期的にワクチンを打ちながら、何よりも重要なのは、かかった時に重症者が医療機関を速やかに受けられる体制を整えることです。日本は今、数が増えてもみんなが非常に心配はしていますけれども、欧米と比べたら10分の1のオーダーですから、この中で『医療ひっ迫をまた起こすんじゃないか』といって、“自粛”や“まん延防止”みたいなことを繰り返すのは、私個人としましてはやめた方がいいと思います。」

Q.欧米に比べて、日本ではほとんどの人がマスクをしたりなど、いわゆる公衆衛生に気をつけていましたが、それでも「オミクロン株』は広がってきました。感染対策は意味がなかったのでしょうか?
「なぜ東アジアでこれほど、感染者数も死亡者数も少ないのかというと、ある仮説では、私たちにはすでに集団免疫がついているということで、もしそれが本当だったら、私たちは何もしなくてもいいはずです。少なくとも言えることは、この感染症は私たちの中からある日突然消えてなくなるものではありません。そして、これは変異する前からほとんどの人にとっては無症状、軽症で済む感染症です。また、世界各国は医療ひっ迫を起こしていないのに、日本のこんなに少ない感染者の中で、医療ひっ迫を起こすこと自体がおかしいと思います。感染者が増えたら経済を止めるというようなことを日本でやることは今後、社会経済の悪化によってほかの健康状態の被害を引き起こす可能性があります。自殺も増えてくるでしょう。こうしたことを度外視して『増えたから感染を抑える』ということは絶対に私はやってはいけないと思います。」

「オミクロン株」の感染拡大で起こり得る“医療ひっ迫”

「オミクロン株」について WHOの見解

WHO(世界保健機関)は1月4日、これまでの変異株と比べ「オミクロン株」は、重症化リスクは低いという見解を出しました。特徴としては、感染の影響が鼻や喉に留まるという研究結果が多く、肺炎を引き起こすこれまでの変異株に比べて症状が軽いということですが、更なる研究が必要とされています。

感染者急増による医療現場の懸念

 これについて、インターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁医師は、「感染者が増えるだけでも保健所の業務がひっ迫する。入院患者も増えるので医療現場が混乱し、一般診療に影響が出る恐れもある」と警鐘を鳴らしています。

Q.感染力が高い「オミクロン株」で感染爆発が起きた場合に、医療従事者の方が感染して軽症でも隔離しないといけなくなる、病院で働く人が足りなくなるなど、機能不全を起こす可能性はありませんか?
(木村もりよ医師)
「あると思います。これは“人為的な医療崩壊”であって、インフルエンザと同等に扱えば、保健所の業務を圧迫することもないし、そして必要な医療を受けることが誰でもできるようになるわけです。少なくともワクチンと治療薬ができた感染症で、多くの人が無症状、軽症で済む感染症に対して、このように2類相当のレベルに置いたのでは、どこの国のどんな地域であろうが医療はひっ迫してしまいます。実際、日本は160万床という病床数がありながら、4%程度しか使われていない。これで医療ひっ迫というのは、重症者が助かる命も助からなくなるということですから、この感染症の格下げというのを議論しなければいけないと思っています。」

感染症法に基づく主な対応

 Q. 感染症法の1類~5類というのは、どういう分け方をしているのですか?
(木村もりよ医師)
「基本的に、致死性の高いものが1類になって、致死性の低いものが5類になっています。ただレベルとしては明らかに5類相当ですし、何よりも一番問題なのは、軽症でも無症状でも感染が見つかったら隔離しなければならなくて、場合よっては入院も余儀なくされるっていうことです。そうなってくると、今度は重症化した人が、その軽症者でいっぱいになったベッドのために、入れないっていうことになってくるんですね。1類、2類相当になるとベッドの規制もかかりますから。人も取られることになって、いわゆる自分で自分の首を絞めている状況になっているわけです。」

「オミクロン株」について政府の対応は?

経口薬の確保について岸田首相は…

 2022年1月4日に初めての記者会見に臨んだ岸田首相は、「オミクロン株」への対応について「感染の急拡大が確認された地域においては、宿泊、自宅療養も活用して、万一の感染急拡大期にも、医療のひっ迫を招くことなく、万全の体制ができるようにしてまいります」と述べ、今後は国内対策に重点を移し、オミクロン株陽性者全員を入院としている措置を見直す考えを示しました。

また、経口薬の確保について、メルク社製の経口薬は全国約5000の医療機関・薬局にすでに届けていて、ファイザー社製の物については1月中に「購入に関する最終合意」をし、2月中可能な限り早期実用化を目指すとしています。

Q.「オミクロン株」はどれだけ毒性を持っているかはわかりませんが、どの病院へ行っても経口薬がもらえるようになれば、例えば5類のインフルエンザと同じように考えてもいいのですか?
(木村もりよ医師)
 「はい。インフルエンザと今回のオミクロン株の致死性がもし全く変わらないとしたら、別にオミクロン株と診断されたところで、ほかのインフルエンザと同様の治療を受けられ、そして生活できるということになります。」

「オミクロン株」水際対策と市中感染について

「オミクロン株」水際対策と市中感染について

 Q. 日本の“水際対策”は成功しましたよね?少なくとも時間稼ぎは。
(木村もりよ医師)
 「成功したんだか、何のために時間を稼いだのか…2年間、時間稼いで何をやってきたのかと。結局、医療体制を整える、国内体制を整えるための時間稼ぎであったにもかかわらず、国内の医療体制がどれほど整っているのかっていうのは、私たちには伝わってきません。感染者が増えると『気の緩みだ』とか『人流抑制だ』とか、それしか言わない。もう一つ私は強調したいのですけれども、今、この2類相当のレベルに置いておくことによって、亡くなった方がお骨も拾えないとか、高齢の方が多く亡くなりますから、そのときに面会もできないとか…医療というのは、新型コロナウイルスだけのためにあるものではなくて、人の幸せっていうのを突き詰めていくのが私は医療だと思っているんです。本当に今の対策が国民を幸せにしているかどうかっていうことを、政府それから政治家も、きちんと原点に戻って考えていただきたいと思います。」

 Q.今、検査体制は整っていて無料で受けられますがPCR検査を今の段階で多くやるのは賛成ですか?反対ですか?
 「私はPCR検査というのは、感染の広がりを見る疫学調査としては非常に有用だと思っています。ただ、市中感染が広がっている今現在において、PCR検査を片っ端からやって、そして隔離するということはナンセンス極まりないので、なんのためにやるかという検査であるかというのを、基本に立ち戻って考えるべきだと思います。」

 Q.我々、一般国民もやはり、データが欲しいですよね?
 「そうです。我々は日本の中でどれぐらいの人が感染しているのか知りません、そしてなぜ日本がこれだけ、重症者もいわゆる感染者数も抑えられているのか、私たちはリアルデータがないから分からないんです。そのデータがなければ、政策が立てられないということですから。これを私たちに明らかにしてほしいものです。」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年1月5日放送)

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