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【独自解説】新型コロナ第8波到来、必要なのは「早期診断、早期治療」 ワクチンの効果や行動制限の必要性を最前線で治療にあたる医師が解説
2022年11月24日 UP
新型コロナの感染者数が増えてきています。さらに今シーズンは新型コロナだけでなく、インフルエンザとの同時流行の懸念もあります。この第8波に我々はどう備えるべきなのか?最前線でコロナ治療にあたっている、インターパーク倉持呼吸器内科の倉持仁院長が解説します。
Q.新型コロナの流行の第8波が到来していると言われていますが、実際に来院される新型コロナの感染者は増えているのでしょうか?その中で重症者はどれぐらいいるのでしょうか。現場の実感を教えてください。
(倉持院長)
「実感として、外来受診は毎日200人300人と増えています。保育園・幼稚園での感染が少し減っていて、職場での感染が広がっています。入院患者は少ないのですが、高齢者が入院してきている印象があります。ただ、重症者が次々と運び込まれるということはなく、『自分はコロナなのか?治療の必要があるのかないのか?』の確認のために受診する人が多いです。また、北海道の数字などを見ますと、まだ流行が始まったばかりなのに死者が多いので危惧しています」
Q.発熱や悪寒があった場合、インフルエンザの可能性もあるのでしょうか?
(倉持院長)
「インフルエンザもちらほら出ていますが、まだ流行期には入っていません。出ても何日かに一人くらいです。新型コロナの感染者の方が圧倒的に急速に増えている印象があります」
Q.今回もワクチン接種をした方が重症化しにくいのでしょうか?
(倉持院長)
「ワクチン接種をしても効果がずっと持続するわけではないのと、新型コロナの株によって効果が減弱してしまうことが分かってきています。今のように流行期に入るタイミングで、接種した方がリスクを下げられる可能性は高いと思います。一方、今増えている株はBA5ですが、今後ウイルスが変異して別の株に置き替わってしまうと、すぐ次の波につながる恐れもあります」
Q.以前は医療のひっ迫がよく言われていましたが、第8波ではどうでしょうか?
(倉持院長)
「第5波のデルタ株の時は重症の肺炎の若い方が次々と入院してきて、人工呼吸器や酸素などの医療資源が足りなくなるかもという状況だったのが、その後のオミクロン株からは、衰弱した高齢者の入院患者が増えて、今度は医療現場の人手が圧倒的に足りなくなりました。時期によって問題の場面は変わっています。今回の第8波は、職場での感染が増えていて、同じBA5が流行した夏とは違った増え方をしています。国は若い方には、自宅でセルフチェックして、解熱剤を飲んで様子を見ましょうというアナウンスをしていますが、早く検査して、早く投薬できる環境が何より必要と感じています」
Q.行動制限はその副作用も大きいですが、今後も必要なのでしょうか?
(倉持院長)
「検査機器や治療薬が出てきていますが、残念ながら医療現場では有効活用できていません。また、解熱剤や咳止めなどの流通も滞っている状態が続いています。新型コロナ治療の前の段階で物資が足りないような状況なので、このままいけば医療ひっ迫は避けられないと思います。ただ、だからといって行動制限すればいいかというと、それでは何も解決しません。やはり、早く検査して早く治療が受けられる体制づくりが何より大事だと思います」
Q.いまは、モルヌピラビルなどの新型コロナの飲み薬は病院の処方箋があれば薬局で受け取れる体制になりましたよね。
(倉持院長)
「その通りなのですが、モルヌピラビルでの治療は、対象を重症化リスクのある方に限定しているので、医療機関で対象者であるかどうかの検査をしないといけません。モルヌピラビルを使った治療に届く人も少ない状態で、悪くなってから救急車で運ばれるような方が今増えてきていますし、今後も増えると思います」
Q.ワールドカップなどを見ていると、観客がマスクなしで大歓声を上げていますが、大丈夫なのでしょうか?
(倉持院長)
「今、感染者が増えているのは中国や日本です。日本と単純に比較できませんが、イギリスなどでは死者数が第1波、第2波の時の10分の1くらいに落ち着いているので、検査もマスクもしていません」
Q.イギリスでは死者数が少なくて、日本や中国では多いのはなぜですか?
(倉持院長)
「よくは分かっていないのですが、新型コロナの流行初期に、イギリスなどの欧米ではたくさんの人が感染した上でワクチンを接種しています。新型コロナの場合、感染しただけではワクチンを接種しないと免疫がほぼ成立しないようなのです。そこがほかの疾患と大きく違うところです。おそらく、ワクチンを接種したタイミングで感染すると一番免疫が付いて、その後しばらく新型コロナにかからないと思います。日本や中国の場合、ずっと感染者が少ない状態が続いていたので、今、感染者が特に増えているのではないかと思います」
Q.新型コロナが流行してから3年が経ちますが、改めて今必要なのは何でしょうか?
(倉持院長)
「今一番必要なのは、発熱外来です。重症化する例は確かに減ったのですが、治療開始が遅れたことによる高齢者の重症化が増えています。病院もまわらなくなっていますので、早期に診断して適切な医療を受けられる体制を、国には早く作ってほしいのです」
(情報ライブミヤネ屋2022年11月22日放送)