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【独自解説】「主食をそうめんに…」深刻な米不足がもたらした“令和の米騒動” 米は高級品の時代へ?元経産官僚が指摘する『農水省の政策ミス』とは―
2024年8月16日 UP
日本の主食といえば『米』ですが、一部のスーパーマーケットなどでは購入制限がかけられたりアメリカ産米を置いて対応したりするなど、“令和の米騒動”ともいえる深刻な米不足となっています。元経産官僚・岸博幸氏の解説です。
■深刻な米不足、原因の一つに「農水省の政策ミス」元経産官僚が指摘
米の供給不足により、東京都内のスーパーでは購入制限をかけ、1家族1点までに。また、埼玉県の『スーパーマルサン』越谷花田店では、一時1000円値上げしたり、2kgの米やアメリカ産の米で対応したりしていました。
この状況に、『スーパーマルサン』越谷花田店の米担当者は、「“米騒動”という言葉が正しいのではないか」と話しています。
2人の息子を持つ母親からは「息子たちが夏休みで毎日5合のお米を食べるので、スーパーでお買い得な物を探している」、70代女性からは「主食をそうめんなどに切り替えた」といった声が聞かれました。
米不足の理由は大きく2つあります。1つ目は、2023年の猛暑による不作の影響です。米農家の原田さんによると、「この暑さで米が焼けて、茶色い米がいっぱいできて売れない」ということです。2つ目は、訪日外国人の増加によって、米の外食需要が拡大していることにあります。
全銘柄を平均した玄米60kgの価格を2022年産・2023年産で比べてみると、2022年6月は1万3865円・2023年6月は1万5865円と前年同月比が約14%増え、約11年ぶりの高値水準となりました。また、在庫量も2024年6月末で156万トンと、過去最低となっています。
Q.いろんな要因があると思いますが、ここまで米が減るんですね?
(元経産官僚・岸博幸氏)
「猛暑の影響が大きいのは当然なのですが、実は『農林水産省の政策間違い』の影響も必ずあります。過去には、“米の需要が減るから田んぼを減らそう”という『減反政策(げんたんせいさく)』をずっとやっていました。最近は何をやっているかというと、農水省は農家に対し『米の需要が減っているから、食用米ではなく家畜の飼料用に転換しましょう。転換したら補助金を出します』という政策をやって、米の供給を減らしているんです」
Q.米は作っているけど、人間が食べる分ではないということですか?
(岸氏)
「はい。そういう中で、結果的に猛暑の影響などで供給が減って値段が上がっていますから、政策ミスの影響があります。今、政府は電気代・ガス代・ガソリン代などを補助しているわけなので、米の値段も補助してほしいなと思います」
■「焦って余分に買うことはお勧めしません」スーパー社長が提言するワケ
米不足の現状を実際に見ている『スーパーアキダイ』秋葉弘道社長にも、お話しを伺います。
Q.米は、かなり不足しているのでしょうか?
(『スーパーアキダイ』秋葉弘道社長)
「2024年6月ぐらいから足りないなと思っていて、購入制限もかけていましたが、実は2024年8月9日に解除しました」
Q.解除したというのは、何かあったんですか?
(秋葉社長)
「新米が出回り始めたからです。九州のほうではだいぶ出ていて、徐々に落ち着いてきました。だから、焦って余分に買うことはお勧めしません。せっかく新米が出てきたのに、家に古い米があるから新米を買えない・食べられないという状況になるので、本当に焦らなくていいと私は思っています」
Q.「主食をそうめんに切り替えた」という人もいますが、そうめんの売れ行きなどは、どうですか?
(秋葉社長)
「売れ行きは良いです。米の高値もありますが、気温が非常に高いこともあると思います。ただ、みょうが・大葉・小葱といった薬味の需要も増えたのですが、異常気象や暑さの影響で、残念ながら値段が2~3割上がっています。 物価高の中で、今まで米の値段が上がらなかったのが奇跡のようなものです。今回、米が値上がりした影響で主食をそうめんにしている人もいると思いますが、今後は米の値上げもある程度考えていかなければならない問題だと思います」
Q .『米農家の平均年齢は70歳前後』といわれていますが、後継者不足もあるのでしょうか?
(秋葉社長)
「先日、生産者の方とお話ししたのですが、どんどん生産意欲がなくなってしまうそうです。生産コストは上がっているのに、今まで米の価格は上がっていなくて、生産者の取り分が減っているからです。生産者が生産しやすい環境を整えるのが、非常に重要なことだと思います」
Q .若い人が農業で稼げる環境を作っていかなければいけないですよね?
(岸氏)
「残念ながら、今までは米の価格が低迷して、農業は儲かりませんでした。当然、高齢の方もどんどん減って、耕作放棄地が増えて、若い人も入らない。その中で結局、猛暑でこれだけ価格が上がってしまうわけですから、そこをうまくコントロールしないとダメですね」
■米は高級品の時代へ?新米流通も「高値が続いていく」
価格高騰の解消について、『中嶋米穀』石河社長は「恐らく9月上旬になると新米のコシヒカリなどが出荷されるので、そうなれば米不足も一旦落ち着くのでは」としています。また、農林水産省も、「2024年の新米がこれから流通するため、価格は徐々に落ち着くとみている」ということです。
Q.秋葉社長も、9月上旬ぐらいに落ち着くだろうとみていますか?
(秋葉社長)
「新米が出てくるので、ある程度、米不足は解消すると思います。ただ、根本的な値下がりはないと思います。というのも、今まで古米と新米が両方流通することで成り立っていたものが、古米がないわけです。また、新米でさえ猛暑の影響を受ける可能性もありますので、値段が確実に落ち着くことはなく、高値が続いていくと思います」
Q.毎日食べていたお米が高級品になる可能性もありますよね?
(岸氏)
「恐らく、そうなると思います」
(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年8月9日放送)