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斎藤知事が持つ“4つ”の選択肢

【独自解説】不信任案可決へ― 辞職か、議会解散か…斎藤知事に残された『4つの選択肢』 ここに至る全ての原因は初動?専門家指摘「当時の知事は“戦闘状態”みたいな感覚」「常識から外れてしまうぐらい発想が歪んでしまった」

 2024年9月19日(木)、不信任案が可決する見込みの兵庫県・斎藤元彦知事。辞職・議会の解散・失職…不信任案可決後、斎藤知事の選択は?政治分析の専門家である法政大学大学院・白鳥浩教授、弁護士・野村修也氏のダブル解説です。

■異例尽くし…不信任案提出前に補正予算案議決へ「県民に影響がないよう、議会側も折れている」

全議員が「辞職」求める異例の事態

 2024年9月9日(月)、斎藤知事に維新が「辞職」「出直し選挙」を申し入れ、同月12日(木)には、自民・公明・ひょうご県民連合・共産・無所属4人を含む兵庫県議会86人全ての議員が「辞職」を求める異例の事態に。

 そんな中、同月13日(金)に斎藤知事は、「県民の皆様から負託された立場として、改革を止めるわけにはいかない。9月議会、補正・来年度の予算への対応をしていきたい」と、将来に向けた“意気込み”を語っていました。

 県議会開会の同月19日(木)までに斎藤知事が辞職しない場合、自民などは「この日に不信任案を提出する方針」、維新は「自民に同調する意向」だということです。

補正予算案議決後に不信任案提出へ

 ただ、補正予算案については、不信任案提出前に議決されます。自民・兵庫県議団の北野実幹事長によると、「県民生活への影響が大きく、補正予算案を先に議決する」ということです。

法政大学大学院・白鳥浩教授

(法政大学大学院・白鳥浩教授)
「物価高など目先の危機への対策ですから、まずはそれを通して、『県民にあまり影響がないように』と議会側も折れています。ただ、それ以降の来年の本予算については、今の知事では信頼関係がないからダメだ、ということです」

■「逆風と戦わなければいけない」「権力に溺れてしまった」斎藤知事の初動巡る様々な観点

弁護士・野村修也氏

Q.不信任案提出を前に、斎藤知事が何か反証を出してくると思いますか?
(野村修也弁護士)
「反証はないと思います。百条委員会で明らかになっている部分もあって、質疑の中で、アンケートで出てきたことが実は違ったというのが、かなり出てきています。

今、争点になっているのは、『元幹部職員から告発があったときの対応の仕方が問題だったのではないか』という一点に集中してきていると、私は思います。

なぜそうなったかというと、斎藤知事が改革に前のめりになっていて、“戦闘状態”みたいな感覚を持ってしまっていたことが、かけ違いの原因ではないかと思います。今更“おねだり疑惑”などを説明しても、間違ってしまった部分が残っている以上は、挽回しにくいところがあると思います」

初動は反論できないほどの失策だったか…

Q.斎藤知事は、なぜ初動で失敗したと思いますか?
(白鳥教授)
「一つは恐らく、公益通報者保護制度に対する理解が非常に少なかった。もう一つは、権力を持っている知事ですので、『自分が圧力をかければ有耶無耶にできるだろう』あるいは『告発自体を潰していこう』という意図もあったのではないでしょうか。そこが『嘘八百』『公務員失格』などと断じているところにあるように思います」

(野村弁護士)
「私は、この初動に関しては、全く反論できないほどの失策だと思います。ただ、やり方がまずかったですが、あえてそのときの斎藤知事の気持ちになって考えるとしたら、『自分は物凄く厳しい改革をしようとしている』という発想があったのではないかと思います。

日々、『突き進めば突き進むほど必ず逆風が吹いてくる、反論が出てくる、だから自分は戦わなければいけない』という思いの中で改革に取り組んでいたので、告発が出てきたときに『嘘八百並べて自分を落とそうとしている』と思い込み、常識から外れてしまうぐらい発想が歪んでしまったことが原因ではないかと思います。

また、公益通報者保護法の話で、『探索をしてはいけない』ことについて議論されていますが、あれは最近の法改正があったときに、探索を防止するための体制を整えるという体制整備義務が設置されたんです。

でも、これに兵庫県が追いついておらず、体制が整っていなかった。だから、“やるべきことをやらなかった”というよりは、“まだできていないけど、法改正があった以上は、その趣旨に則って、もっと慎重にすべきだった”という議論になっているんだと思います」

Q.それにしても、斎藤知事のやり方はあまりにも強引だなと思ってしまいますが…。
(白鳥教授)
「知事は一人が選ばれてしまうので、そこで自分の権力を見失ってしまったのではないでしょうか。自分が権力者だということに溺れてしまったところがある。斎藤知事が常に言っているのは、『県民の負託を受けた』『85万票がある』と。でも、それは3年前で、この話が出る遥か前の話です。この話が出てからは、負託があるかどうかも怪しいと思います」

■辞職か、議会の解散か、それとも…“知事を辞めたくない”斎藤知事、「4つの選択肢」から選ぶのは?

選択①『辞職』は、知事選に約18億円

 白鳥教授は、『不信任案可決後の斎藤知事の選択肢』を4つ挙げています。

 選択①は、『辞職』です。兵庫県・選挙管理委員会によると、斎藤知事が辞職して知事選が行われる場合、前回選挙を参考にすると約18億円がかかるということです。

 白鳥教授は、「斎藤知事が責任を認め、知事の職を諦めている状況。この場合は、出直し選挙の可能性は低いと思われる」としています。

Q.斎藤知事もいろいろ考えて、県議会開会までに何か発表する可能性はありますか?
(白鳥教授)
「これまでの流れからいくと、斎藤知事は自分の職に非常にこだわっているので、考えが変わることはないと思います」

選択②『議会の解散』は、一番お金がかかる

 選択②は、『議会の解散』です。辞職を選ばなければ、10日以内に議会の解散を選ぶ可能性があります。ただ、こちらも前回選挙を参考にすると、県議会議員選挙には約16億円がかかるということです。

 白鳥教授は、「知事と議会は県の両輪。斎藤知事が『自分は正しい』とし、知事を辞めないのであれば、議会を解散させないと県の正常運転はできない」と話しています。

 また、審議会で不信任案が“再可決”された場合は知事失職となり、知事選挙に約18億円が別途かかります。単純計算で約34億円となるため、白鳥教授は「これが一番お金のかかる選択肢」だとしています。

選択③『失職』は、出直し選挙の可能性も

 選択③は、『失職』です。10日以内に辞職も解散もしない場合は失職となりますが、この場合でも知事選挙に約18億円がかかります。

 ただ、白鳥教授によると、「斎藤知事は『県民からの負託』を重要視している。知事も議員も選挙で選ばれているため、辞職も解散もしない選択肢もある。この場合、出直し選挙があり得る」ということです。

失職後、出直し選挙で当選の例も

 総務省によると、不信任案“可決”は過去に4例あり、そのうち『失職』は2例ありました。

 2002年、長野県・田中康夫知事は失職後、出直し選挙で当選。一方で2003年、徳島県・大田正知事は失職後、出直し選挙で落選しました。

Q.知事としては、議会の解散も考えていると思いますか?
(白鳥教授)
「普通なら不信任案が通った段階で辞めるはずですが、斎藤知事は辞める意向を全く示されていません。また、失職を選ぶ場合は、通したい政策があるなど何か裏があるときです。例えば、長野県・田中康夫さんの場合は『脱ダム』を通したいなどがありました。しかし今回は、知事の人間性みたいなものが問われているので、難しいと思います」

選択④『W選挙』で再度民意を問う

 選択④は、『W選挙の可能性』です。10日以内に議会を解散、かつ辞職するという選択です。この場合でも県議会議員選挙・知事選挙が必要ですが、恐らく同日選挙となり、選択②の約34億円よりはやや減額になる見込みです。

 白鳥教授によると、「斎藤知事が『県民からの負託』を重要視し、知事も議員も両方、もう一度民意を問うケース。この場合、出直し選挙の可能性が高い」ということです。

Q.選択①『辞職』・選択②『議会の解散』・選択③『失職』・選択④『議会の解散+辞職』、この中で一番可能性が高いのは?
(白鳥教授)
「選択②『議会の解散』だと思います。その間は知事を辞めなくていいので、まずは議会を解散する。議会の構成はあまり変わらないと思いますが、場合によっては、ひょっとしたら新しい議会で知事を支持する人が多くなる可能性もあります。ただ、この選択肢が一番お金もかかります。“知事を辞めたくない”というところが先に出ているので、まずは『議会が間違っている』ということを出してくると思います」

■「人の命の重さを感じての涙であってほしかった」前回選挙で斎藤知事を支援した兵庫県議団幹事長を独自直撃

会見で涙を見せた斎藤知事だが…

 斎藤知事は2024年9月11日(水)の会見で、涙を浮かべながら「自分自身に対して悔しい」と述べました。涙の理由について、「元幹部職員が亡くなった後悔などは含まれていないのか?」と記者から質問が飛びましたが、斎藤知事は「自民党や維新の会との、これまでの経緯に対して」と説明しました。

候補者巡り自民会派が分裂した前回の知事選

 そんな斎藤知事が選ばれた2021年の兵庫県知事選では、候補者を巡り44人の自民会派が分裂。県議33人が当時の金澤前副知事を支援したのに対し、県議11人が支援した斎藤知事を自民党本部が推薦するという“捻じれ”も起きました。

自民・県議団 北野実幹事長

 前回の知事選で斎藤知事を支援した自民・県議団の北野実幹事長は、「支援したときは若い世代が県政を引っ張る良さを感じ、期待した。なぜ、こんなことになったのか。涙を流していただくならば、県民に対して、また人の命の重さを感じての涙であってほしかった」と話しています。

■数々の実績・行財政改革によるコストカットも、知事選・県議選が行われればそれ以上の支出に…

様々な実績は残したものの…

 ただ、斎藤知事は「県立大学の授業料無償化」「公用車『センチュリー』を廃止」「知事の報酬カット(給与30%減・退職金50%減)」など、実績も残しています。

 北野氏は「『若い世代に主権者意識を持たせる政策』という観点が、すごく良い感性だなと思っていた」ということですが、「仕事ができる人だから、周りがついて来られないときの苛立ちで、職員との距離ができていったのではないか」と分析しています。

Q.キャリア官僚を経て兵庫県知事となった斎藤知事には『自分はバリバリ仕事していたんだ』という自負があって、それを兵庫県庁に持ち込んでしまったところもあると思いますか?
(白鳥教授)
「ずっと行財政改革をやりたいということで、これだけコストカットしてきたのかもしれません。ただ、県議会を解散したら県議選に約16億円もかかり、無駄な支出になるので、何のためのコストカットだったのかと思います。公用車のセンチュリーを廃止にしたぐらいでは全然足りません」

Q.斎藤知事の高い公約達成率は大変優秀だという声も聞かれますが、「道義・人の道がわからないのは、どうなんだ?」という声が多くあります。この両立について、どう考えますか?
(白鳥教授)
「政治には義理と人情が重要ですので、他人の痛みがわからない人がトップになったら、非常に問題があると思います。特に今回は、人権に関わる問題が疎かにされています。もう味方がいないことへの涙なのかもしれませんが、むしろ泣くべきは、お亡くなりになられた命に対して、そういう人権感覚というものに対して、見せてもらいたかった。それが、政治家だったのではないかと。政治家としての在り方を、はき違えているのではないかと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2024年9月16日放送)

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