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マンション建設計画のある「小山八幡神社」

【独自解説】1000年の歴史持つ神社の境内にマンション建設!?「お知らせ」掲示での説明に氏子や住民が猛反発!それでも建てざるを得ない切実な神社経営事情

 東京・品川区にある「小山八幡神社」は、約1000年続く歴史ある神社です。しかし、その境内にマンション建設計画が持ち上がり、氏子を始めとした地域住民らが猛反発しています。なぜ歴史ある神社の境内にマンションが?背景には、神社が抱える切実な事情がありました。これまで4000か所以上の神社を参拝してきた神社仏閣専門家・坂原弘康氏の解説です。

なぜ?神社境内にマンション建設計画

神社仏閣専門家 坂原弘康氏

 東京・品川駅から車で10分ほどの場所にある小山八幡神社は、「しながわ百景」にも選出された、鎌倉時代から続く歴史ある神社です。

Q.坂原氏は、この神社に行かれたことはありますか?
(神社仏閣専門家 坂原弘康氏)
「はい。ここは荏原七福神巡りの一か所で、その巡りのときに行きました。『小山』という語源になっている通り、小高い丘の上に建っています」

境内のマンション建設計画

 そんな歴史ある小山八幡神社で、3000平米ほどの土地に建っている神楽殿と社殿をずらして空間を作り、そこに地下1階・地上3階建てのマンションを建てる計画が浮上しました。土地の半分ほどがマンションになりますが、あくまで70年間の定期借地として提供し、不動産会社に土地を貸して賃料を得るということです。

マンション建設の理由

 境内にマンションを建てる理由は、「築85年になる老朽化した社殿の修繕」「2030年に行われる『千年祭』に向けた整備」「運営費困窮に伴う管理不全」により約2億3000万円が必要で、その費用捻出のためだということです。 宮司は、「氏子や崇敬者が負担できる金額ではなく、景観を残しながら再建するのは難しいため、仕方がなかった」と話しています。

Q.そんなに費用がかかるのですか?
(坂原氏)
「修繕は宮大工の専門的工事によって行いますので、それだけ費用がかかります。新築で建てたら、5億円ほどかかったという例もあります」

氏子や住民が猛反発 神社側の対応に問題は?

住民は猛反対

 一方、氏子や周辺住民らは、マンション建設に猛反対しています。「樹齢200年の木があり、動物や絶滅危惧種などもいる、環境的に大切な場所であること」「地域の重要な憩いの場であること」「何の相談もされていないこと」の3つが大きな理由です。

神社側が掲示した「お知らせ」

 氏子側の意見として「何の相談もされていない」とありましたが、宮司側は「対応していた」といいます。2019年にマンション建設を前向きに検討していた宮司は、2022年12月、境内に「お知らせ」を約1週間提示しました。そこには確かに「定期借地権付きマンションの分譲」という文字が載っていたのです。しかし、ほとんどの住民は気付かなかったといいます。

 そして2023年2月、周辺住民がインターネットでマンション建設の噂を目にしたものの、4月に宮司が「境内の整備」として告知した回覧板には、マンション建設の記載がありませんでした。さらに、5月9日に開かれた第1回住民説明会で配られた資料には、「境内整備に伴う主要建物および付属物の移設・改修・一部新築」と書かれていただけで、マンションの文字はありませんでした。そのときに出席者がマンション建設の噂を出したところ、神社側が認め、そこで初めて周辺住民が知ったといいます。

計画を知っていた人物

 住民への報告が遅れたことについて宮司は、「神社本庁からの承認に1年ほどかかる。そういったことも含め微妙な話もあり、外部に漏らすことは難しい」としています。とはいえ、「責任役員・総代が全員一致で建設を決定した」とも話しており、宮司一人が決めたわけではないということです。

 宮司によると、神社の組織には宮司を支える氏子がいて、その氏子の代表である「責任役員」や「総代」が約10人いるといいます。今回のマンション建設の件は、宮司・責任役員・総代までは知っていましたが、その他に1000人以上いる氏子は知らなかったということです。

 氏子らは、「住民とのコミュニケーションを取り、困ったことがあれば開示していただきたい」「樹齢200年の大木を切るのは待っていただきたい。きちんと経営できる策を、近隣住民と一体となって考えたい」と神社側に求めています。

法的に問題なしの可能性も

 今回の神社側の対応に、法的な問題はあるのでしょうか?弁護士の亀井正貴氏によると、「宗教法人法では、境内の建物の改築などは1か月前に広告が必要で、しなければ無効になる」といいます。しかし今回の場合は、多くの住民が気付かなかったとはいえ、境内に約1週間掲示されていたため、「一般的には、事務所の掲示板に一定期間提示することで足りる場合が多い」ということです。

Q.難しいかもしれませんが、神社側が氏子全員と神社を守るために話し合って、お互いに歩み寄って対案を出さないと、日本中でこういう問題が起こりますよね?
(坂原氏)
「宮司と氏子の代表らで決めたということですが、普通の神社の運営はその人たちの会議によって行われ、『このような内容で決まりました』などと伝えることが慣習ですので、今回の件も内緒で進めてしまったわけではないです。しかし、例えば『次の祭りの予算はこうなりました』程度の話なら良いですが、今回のような境内を大きく変えるという内容なら、もっと事前に説明するなどのケアがあったほうが良かったとは思います」

全国各地で消滅の危機…悪化する神社の経営

全国の神社・宮司事情

 実は近年、多くの神社で経営が悪化しています。2021年のデータによると、日本全国に8万847か所もの神社がありますが、宮司などの神職に就く人は2万4426人しかおらず、100か所以上の神社を掛け持ちしている宮司もいるということです。2016年の調査では、年間収入300万円未満の宮司が約6割もいて、神社だけの収入では厳しく、心理カウンセラーなどを兼業する人もいるといいます。寺院コンサルタントの薄井秀夫氏は、「4分の1が兼業というデータもある。ただ、時間の融通が利かない職業との兼業は難しいことも」といいます。國學院大學の石井研士教授の試算よると、2040年には寺や神社など宗教法人の約35%が消滅するということです(福島県を除く)。

「下鴨神社」でも起きたマンション騒動

 資金難は世界文化遺産も例外ではなく、京都・下鴨神社も2015年に3階建てマンション建設を発表し、周辺住民が反対して裁判になりました。神社側も“苦肉の策”でしたが、2017年に住民側が敗訴し、マンションが建設されました。

マンションが建設された神社

 他にも東京・成子天神社、東京・赤城神社、東京・東郷神社、兵庫・小野八幡神社など、多くの神社がマンションを建設しています。

Q.寺に比べて、神社は経営が難しいのですか?
(坂原氏)
「寺には墓があるので、檀家と密接な関係を築けますが、氏子の場合、引っ越してきた先で新しい神社の氏子になることは少ないです。それでどんどん氏子が減っていき、経営難に陥ってしまうということです」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年6月7日放送)

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