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“15項目の協議案”で協議に進展は…

【独自解説】ロシア態度軟化で“停戦”へ進展か ウクライナ“15項目の和平案”合意に「数日から1週間半ほどかかる」見通し その実現性は?

 ロシアがウクライナに侵攻開始してから3週間、“停戦協議”に進展がみられています。ウクライナの代表団は「合意に達するには数日から1週間半ほどかかる」との見方を示しました。明らかになってきた“15項目の協議案”について、国際安全保障に詳しい慶応義塾大学、鶴岡路人(つるおか・みちと)准教授が解説します。

停戦協議に進展? ポドリャク大統領顧問「合意には1週間半」

3回目の停戦協議 両国の要求

 3回目の停戦協議では両国の主張が折り合うまでには時間がかかるだろうと見込まれていましたが、3月16日、ウクライナのポドリャク大統領顧問は「ロシアが大きく態度を軟化させた数日後に停戦が実現すると確信している。両大統領が署名する文書を取りまとめている」と話しました。さらにロシアのラブロフ外相も同じ日に「実務的な様相を帯びてきた。いくつかの文言については合意に近いのではないかと見ている」と話しました。そうした中、3月17日、ポドリャク大統領顧問は「ウクライナとロシアの代表団はそれぞれの立場を守っている」として合意に達するまでには「数日から1週間半ほどかかる」との見方を示しました。

慶応義塾大 鶴岡路人准教授

Q.ウクライナ側もロシア側も、歩み寄っているようには見えますが…
(慶応義塾大 鶴岡路人准教授)
「それぞれ色々なことを言っていて、今は全体像が分からないというのが正直なところです。恐らく言えるのは実質的な議論が具体的に進んでいて、ロシア側がだいぶ要求をおろしてきた、ということだろうと思います。ただ、ラブロフ外相のいくつかの文言については、ということなので、これは包括的に何かをまとめて『停戦がしっかり成立しました』という形には、やはりなかなかならないだろうと思います。」

停戦協議進展か “15項目の停戦協議案”とは

“15項目の停戦協議案” 主な項目

Q.ロシア側から考えると自分たちの条件を100%飲ませようとは思っていないとは思うのですが、折れる・折れないのラインの見極めはどこになるのでしょうか?
(慶応義塾大 鶴岡路人准教授)
「そこが一番重要なのですが、分からないです。例えば中立化という話にしても、これはNATOに入らなければいいんですか?ということなんです。ロシアがずっと求めてきたのは、未来永劫、絶対にNATOに入らないように法的拘束力もって約束しろということだったんですけれども、これと『アメリカ、イギリス、トルコなどがウクライナの安全を保証する』というのが、安全の保証の仕方が非常に強いものになったら、ある意味アメリカとの2国間同盟のようなので、NATOに加盟しなくてもアメリカとそこまで近くなるんだとしたら、恐らくロシアは受け入れられないわけです。ただ、他方でアメリカからの安全保障というのが弱すぎるとウクライナからすると、たとえ今回の戦争が終わっても、また次の日に攻め込まれかねないわけですから、ウクライナとしては合意できないでしょうし、アメリカとどれぐらい議論できているのかも全く見えてきません。いろんな要素が出てきていますけれども、実は相互にもかなり矛盾しています。パッケージとして合意に近づいているという印象は、残念ながらないというのが正直なところです。」

Q.「ロシア語を公用語にする」というのは、ロシア側から見ると折れることができる気がしますが
(慶応義塾大 鶴岡路人准教授)
「言語のところは報道も不明確でして、恐らくロシア語の地位をしっかり確立してくれてということなんだと思います。そもそもウクライナ人の多くはロシア語も話します。例えばゼレンスキー大統領はロシア語の方が得意だともいわれているんです。ロシア語をしゃべる人が親ロシア派なわけではないですが、その中でロシア語が差別されないようにしっかりとその地位を固めてくれということです。これは文言次第ですが、恐らく折り合えるところだと思います。」

赤色の部分がロシア軍が支配する地域 (3月18日 午前4時現在)

Q.ロシアが一番譲れないであろう2つの要求「クリミア半島でのロシアの主権承認」、「東部、ドネツクとルガンスクを主権国家として認める」、この地域を緩衝地帯というふうにロシアが認めれば停戦ということにはなりませんか?
(慶応義塾大 鶴岡路人准教授)
「ええ。ただ、おそらくこれはウクライナ側にとって一番受け入れられない部分だと思うので、ここはどこまで文言の工夫で解決するのか。私はかなり懐疑的です。」

Q.ロシアによるクリミア侵攻で、実質ロシアの支配地になりそれがずっと放置されている状況が続いていました。そういう形に持っていきたかったのでしょうか?
「ロシアがクリミアを支配していること自体はすでに現実ですので、そこを取り返されるとは思っていないのだと思いますが、やはり法的にしっかり自分のものにしたいと。自分のものにしたら国際社会の風当たりもなくなるというわけです。クリミアに関するロシアに対する制裁というのは、実はまだ続いています。ただ、やはりゼレンスキー政権にとっては国の領土の一体性を正面から正式に否定する、譲歩をすることは非常に難しいところですから、ウクライナにとっては中立化などが折れやすいというのが現実だと思います。」

“ロシア側の思惑” 態度軟化の背景とは

鶴岡准教授が解説 ロシア“軟化”の背景

Q. なぜ、ここに来てロシア側が軟化したのでしょうか?
(慶応義塾大 鶴岡路人准教授)
「最大の理由は『戦況が思わしくない』ということ、ロシアからすると攻めあぐねているということです。キエフを陥落させようとしたが、なかなか地上軍が進まない、停戦が必要な度合いが高まったということだと思います。経済制裁の影響がロシア国内にも広がっていて、この状態を放置しておくことはプーチン政権にとっても難しくなってきた。この辺りが交渉においてロシアが立場をもし軟化させているとしたら、大きな原因になっていると思います。」

Q.我々からすると交渉がうまくいって停戦、ロシア軍が撤退することを希望するんですが、ではあれだけ破壊されたウクライナはどの国が復興させるんだという話になってきますよね?
(慶応義塾大 鶴岡路人准教授)
「本当にそうでして、本来ならこれは壊したロシアがという話なるわけですが、これは相当西側がコミットしなきゃいけないと思います。ただ、その前にこの停戦合意というものとロシア軍の撤退というものはどこまで一体のものなのかが問題です。今ウクライナ国内に10数万人のロシア軍がいますが、この人たちにロシアに大人しく帰ってもらわなきゃいけないっていうプロセスが非常に難しいのだと思います。停戦しても、恐らくまだ散発的な戦闘というのは起きます。そして、ロシア軍がいる以上はそれを政治的圧力に使えるわけです。この十数万人のロシア軍はどうロシアに戻すのか、それをどう監視するか、この辺の交渉というのは大変で複雑なものになると思います。」

トルコ、首脳会談を提案 交渉は前進するのか?

トルコ・エルドアン大統領 首脳会談を提案

Q.トルコのエルドアン大統領がプーチン大統領と電話会談をして、トルコでゼレンスキー大統領と首脳会談開くことを提案していますけれども、どこか第3国が入っていく段階にきているのでしょうか?
(慶応義塾大 鶴岡路人准教授)
「どちらかに、あるいは両方に停戦の意思が本当にあるんだとしたら、こういう仲介役というのは意味を持つと思います。実際にプーチン大統領の電話会談等は報道によると、条件に関して踏み込んで議論をしているということです。先日、トルコで行われた外相会合以降、継続的にトルコは大統領レベル含めて関与しているようです。それが交渉の前進につながっているのかもしれません。」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年3月18日放送)

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