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会見を行った東山紀之社長

【独自解説】“ジャニーズ帝国”消滅へ…ジュリー氏の相続税は?タレントたちの活動への影響は?「実力ある人は他所と契約してもいい」経営コンサルタントが解説

 10月2日に行われたジャニーズ事務所の会見。社名変更、新会社としてのエージェント会社設立、被害者への救済方法などが、約2時間にわたって発表されました。ジャニーズ事務所は今後、どうなってしまうのか?企業の危機管理に詳しい経営コンサルタント・小宮一慶氏の解説です。

東山氏は2つの会社で社長に…ジュリー氏は“860億円”相続税を支払えるのか

東山氏は旧・新会社の社長に

 10月17日付で、現ジャニーズ事務所は「SMILE-UP.」(スマイルアップ)に社名を変更。1か月以内に新たな「エージェント会社」を設立し、この2つの会社で、東山紀之氏は社長という立場になることが発表されました。

 「SMILE-UP.」は、藤島ジュリー景子氏が取締役に就任し、株を100%所有し続けます。現在は相続税を猶予してもらえる「特例措置」を受けていますが、代表権を返上し、相続税を支払うという形になり、被害者の補償のみ行い、いずれは廃業させるということです。

 一方、新たなエージェント会社は、井ノ原快彦氏が副社長に就任し、ジュリー氏は出資しないということです。そして、これまでジャニーズ事務所に所属してきたグループやタレント個人はそれぞれ会社を作り、業務契約を結ぶ形となります。若手タレントは、新会社に所属することも可能だということです。

ジュリー氏、相続税を納付へ

 ジュリー氏は2020年5月、保有する株式の相続税の納付が猶予される「事業承継税制」を適用しました。適用条件の1つには「2025年の5月までジュリー氏が代表者でいること」が含まれていますが、2日会見時に発表された手紙では、「全ての関連会社の代表取締役を退く」とありました。これによって猶予されていた相続税の支払い義務が発生することになり、ジュリー氏は「速やかに納めるべき税金全てをお支払いし、会社を終わらせます」としています。

経営コンサルタント・小宮一慶氏

Q.ジュリー氏が相続税を支払い、残ったお金で被害者の方々に補償するということでしょうか?
(経営コンサルタント・小宮一慶氏)
「私も十分理解できていません。というのは、被害者の方々に補償するのは『SMILE-UP.』という会社で、相続税を払うのはジュリー氏本人です。860億円ともいわれている相続税を、ジュリー氏が支払えるのかが疑問です。会社を解散すれば、株主には会社の財産が入ってくるので、そこから相続税を支払うのならわかりますが、個人で860億円なんて、株でも売却しない限り、持っていないのではないかと思います。『SMILE-UP.』の株式だけで1000億円以上の資産を持っているという話ですので、補償が終わってから解散するというのが、リーズナブルだと思うのですが」

被害者への補償どうなる?「当事者の会」副会長は「被害の対象者を変えて」

被害者補償、どう進める?

 被害者への補償は、どうなっていくのでしょうか。補償は11月からスタートし、2日会見時点で補償を求めているのが325人、その中で在籍を確認できているのが約150人だということです。

 9月に設置された「被害者救済委員会」は、ジャニーズ事務所とは関係性のない元裁判官の弁護士3人からなり、補償金額を判断していくといいます。受付方法はウェブで、所属していたことが分かる資料や、性加害の影響に関する診断書などがあれば提出を促していますが、資料がなくても審査・査定の対象になります。

 補償のプロセスは、被害者救済委員会が聞き取りを行い、補償金額を「SMILE-UP.」に提案、その提案を受けて和解案を提示し、被害者と話し合い補償を行っていきます。補償金額の総額や人数は、適切な時期に適切な方法で公開していくとしています。

Q.補償金額の提案ですが、もし会見で東山社長が言っていたように「法を超えて」とするならば、どう決めていくと思いますか?
(小宮氏)
「難しいところです。でも、1000億円以上の資産があるといわれているので、325人から数が増えるとしても、常識を超える額は支払えるのではないかと思います」

「当事者の会」の意見は

 2日の会見を受け「当事者の会」平本淳也代表は、「被害救済への思いは、被害者によっても異なると思うので、この後に各々直接説明を受けられたらと思う」とし、石丸志門副代表は、「11月に補償を開始するということ以外、具体性に乏しかった。何を原資に被害者救済に充てるのか、という疑問も残る」としています。

ジャニー氏からの性加害を告白した元ジャニーズJr.橋田康氏

Q.橋田さんは以前「ミヤネ屋」にご出演いただいた際、「二度とこういうことが起きないこと」が橋田さんにとっては救済・補償になるとおっしゃっていましたが、被害を受けた方々は、それぞれ考え方が違いますよね。ここを、どのようにしていけばいいと思いますか?
(元ジャニーズJr. 橋田康氏)
「『一人の漏れもないように救っていきたい』というお話だったので、実現するには、毎日対話していく勢いでないと、叶わないのかなと思います。記者会見では『これから動いていきます』という状態だったので、まだ試行錯誤中だと思いますが、ルーティーン化するという意味ではなく、被害者一人ひとりに会うのが当たり前の日常になっていくのが、一番の近道なのではないかと思います」

被害者の認定は?

 そして、被害者の認定については会見で、過去の資料・申告者が提出した資料や、昔雑誌に載っていた・バックで踊っていた事実などに基づき、過去にジャニーズ事務所に所属していたかなどを確認したうえで、聞き取り調査などを実施するということでした。

 「当事者の会」石丸副代表は、「オーディションで被害に遭い、ジャニーズJr.にすらなれなかった被害者も、たくさんいる。今のフォーマットだと、在籍日などを書かなければ被害を申告できない仕組みになっているので、ぜひ『SMILE-UP.』には変えていただきたい」と話しています。

Q.井ノ原さんも会見で、「ジャニーズ事務所に合格したのかどうか、わからない」とおっしゃっていました。そのあたりの契約・雇用関係は、アバウトだったのですか?
(橋田氏)
「僕もジャニーズ事務所に7~8年いましたが、一度も合格だと言われないまま、ずっと出演していました。僕の場合は当時未成年で、ギャラは親に振り込まれていたので、何日にいくら入ってという認識はしていませんでした」

エージェント契約とは?ファンクラブ・楽曲・肖像権など、どうなる?

契約・体制の違い

 従来の「マネジメント契約」は、芸能事務所が企業に対して営業・ギャラ交渉を行い、企業から事務所に報酬が入り、そこからタレントにギャラという形で支払います。一方でエージェント契約は、タレントが芸能事務所に手数料を払って、営業・ギャラ交渉をしてもらい、企業から直接タレント側に報酬が入っていくので、報酬の全体像が分かる形になるということです。

Q.エージェント契約をするメリット・デメリットを教えてください。
(小宮氏)
「タレントさんから見ると、自由度が上がります。実力のある人なら、他所と契約してもいいわけです。それは逆に、新しいエージェント会社から見ると、収益が下がるということになりかねません。企業側もしばらくは今の状態を続けようというスタンスがありますから、新しいエージェント会社は収益が厳しくなる可能性があります」

Q.また、ファンクラブは「ジャニーズファミリークラブ」という組織が管理していますが、エージェント契約で個人・グループがそれぞれ別れていった場合、どうなると思いますか?
(小宮氏)
「元々はジャニーズ事務所が持っていたわけですから、一義的には新エージェント会社に行くと思います。ただ、契約の交渉をする際に、どのぐらいの比率で会社につけるのか、それとも個人・グループにつけるのかと、かなり揉めると思います。交渉次第だと私は思います」

楽曲や肖像権などの管理について

 そして、楽曲・肖像権などコンテンツ周りの管理について、会見に同席していた木目田弁護士は、「コンテンツ・知的財産権など含め、全て新会社が保有できるようにスキーム(枠組み)を作ってまいりたい。新会社が収益を吸い上げるようなことはしない」としています。

Q.「全て新会社が保有できるようにスキームを作ってまいりたい」と「新会社が収益を吸い上げるようなことはしない」というのは矛盾しているようにもみえるのですが、どう捉えれば良いですか?
(小宮氏)
「新会社が今までのように“ぼらない”ということだと、私は思います。以前、この1年間はエージェントとしてお金を取りませんというようなことを言っていましたので、その延長で『タレントのことを大事にします』という意味ではないかと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年10月3日放送)

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