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韓国の男性がピンチ!?

【独自解説】韓国に“おまかせ注文”ブーム到来で男性がピンチ!?止まらない金利の上昇と出生率の低下…尹政権が直面する「2大国難」を徹底解説

 韓国で今、若者を中心にブームになっているのが「おまかせ」注文。日本の料理店にもある、オーダーするメニューを料理人にお任せする注文方法ですが、これが韓国の男性を苦しめる事態になっているといいます。その先に見えてきた韓国の“2大国難”とは?広がる危機を、韓国在住の日本人ブロガーが書き下ろした漫画を交え、韓国の社会情勢に詳しい、ニッセイ基礎研究所の金明中(キム・ミョンジュン)主任研究員が解説します。

原因はコロナとSNS!?韓国に「おまかせ」ブーム到来

韓国の「おまかせ」ブーム

 韓国在住の日本人ブロガーでイラストレーターのいんちょーさんによると、韓国では今、日本の料理店ではお馴染みの注文スタイル「おまかせ」が大人気で、デートで「おまかせ」のある料理店に行くと、女性は大満足ですが、食事代を払う男性のサイフは大ピンチ、ということがよくある光景だということです。韓国では“デート代は男性が払うもの”という価値観が根強く、「おまかせ」は値段が急上昇するものもあることから、「おまかせブームに便乗した金儲けだ」という批判も出ています。

ニッセイ基礎研究所 金明中主任研究員

Q.なぜ「おまかせ」がブームなのですか?
(ニッセイ基礎研究所 金明中主任研究員)
「韓国の若者は日本食が大好きなのですが、コロナによって日本に来る機会が減ったため、韓国で代替として『おまかせ』を利用する人が増えたのだと思います。さらに、『おまかせ料理』をSNSで自慢するのが、韓国の若者の間で一種のステータスになっているのも、『おまかせ』が増えた大きな理由のひとつだと思います」

Q.韓国では、必ず男性がご馳走しなくてはならないのですか?
(金主任研究員)
「昔ほどではないですが、男性の方がより多く払っていると思います。しかし2020年のインターネット調査によると、1回あたりのデート費用は、男性が約9000円で、女性は7000円を上回っていますので、最近状況が大きく変わりつつあります」

結婚相手に求められる条件

 韓国で結婚したい女性に求められる条件は、「新居の家財道具をそろえる」などの一方、男性は「高学歴(高収入)・住宅・車」などといわれています。金主任研究員は「大学を出ても就職できない。家は高くて手が出ない。男性のハードルはどんどん高くなっている。若者の高い失業率・住宅事情を改善しなければ、結婚しない若者が増え続けることに…」と話します。

Q.女性が男性に高学歴や高収入を求めるというのは、今もあるのですか?
(金主任研究員)
「はい。高収入の人を好む女性の方が多いと思います」

Q.家も男性が用意しなくてはならないのですか?
(金主任研究員)
「昔から、家を買うか借りるかというのは男性の役割になっていたので、昔ほどではありませんが、今もまだその習慣が残っていると思います」

金利急上昇で価格下落 厳しい不動産事情

マンションの売買価格指数(漫画:いんちょー@Bacon_Danshaku)

 しかしその家を用意するにも、いんちょーさんによると、今韓国の不動産価格は下落していますが金利は急上昇中で、不動産を買った人達は苦しい状況に陥っているということです。韓国のマンションの売買価格指数は、文在寅政権下だった、2021年6月を100とすると、2022年1月には106.3と上昇を続けていましたが、尹錫悦政権になってからは下落し、2023年1月には96.1となっています。金主任研究員は「不動産価格低下の最大の要因は、金利の引き上げ」としています。

米韓の政策金利(漫画:いんちょー@Bacon_Danshaku)

 2022年12月27日付けの「朝鮮日報」は、金利上昇の影響で、住宅ローンの利用者は平均で年収の6割以上をローン返済に充てていると報道しています。さらに、韓国も日本と同じ物価高で、光熱費や水道代も値上がりしているということです。生活は火の車ですが、手持ちの不動産を売っても残るのは借金だけという、厳しい現実に直面しています。

Q.米韓の政策金利を比較すると共に上昇していますが、韓国はアメリカに追随しているのですか?
(金主任研究員)
「韓国経済は海外依存度が高く、特にアメリカへの依存度が高いので、アメリカとの金利の格差が広がってしまうと、韓国に投資されている外国資本が輸出されてしまう可能性が高いです。そうなると、韓国経済がマイナスの影響を受けやすいので、韓国政府は金利を引き上げる政策を実施したのだと思います」

実質家賃ゼロ!?韓国独自の賃貸システム「チョンセ」

韓国の賃貸制度「チョンセ」

 韓国特有の賃貸制度に「チョンセ」というシステムがあります。不動産価格の5割~7割ほどの保証金を一括で大家に預けることで、毎月の家賃が免除される賃貸システムです。賃貸期間が終わると、預けた保証金は全額、借主へ返金されます。一方の大家は、家賃収入の代わりに、預かった保証金を銀行に預けて金利を得たり、投資にあてるなどして、運用益を得る仕組みです。多くの借主は、高額な保証金を銀行などから借り入れして支払っているということです。

Q.韓国の方々は、「お金を借りることできる」ことが「社会的な信用になる」という側面もあるのでしょうか?
(金主任研究員)
「そうですね。一般的な家賃という制度はお金が戻ってきませんが、一方のチョンセはいつかはお金が全額戻ってくるので、ほぼタダで住めるということです。そして『戻ってきたお金と自分のお金を少しプラスして、将来的には家を買いたい』という意識がとても強くて、お金を捨てるのではなくちゃんと貯めておく、という感覚がとても強いと思います」

Q.大家が、不動産投資や株式や投信など、リスクのあるものを行った場合に、運用益が出なければ、保証金を返せないこともありますよね?
(金主任研究員)
「はい。そのため家を借りた人に、しばらくの間お金が戻ってこないというケースが頻繁に起きています」

「チョンセ」と「家賃」の利用率変移

 借主からすれば、実質“家賃ゼロ”で住まいを借りられる一見便利な制度ですが、金主任研究員によると、「チョンセを利用する人は減ってきている」ということです。韓国にはチョンセ制度と共に家賃制度もあり、2020年まではチョンセを利用する人が約6割、家賃を利用する人は約4割でしたが、景気が悪化し金利が高騰しているため、多額の保証金が用意できないケースが増え、2022年にはチョンセが約5割、家賃も約5割とほぼ同じになっています。

「チョンセ」で持ち逃げ詐欺も(漫画:いんちょー@Bacon_Danshaku)

 さらに、いんちょーさんによると、大家が大金を受け取った後にチョンセを返さず持ち逃げする「チョンセ詐欺」が急増しているということです。また、大家の投資失敗による返還不能も増加しています。

Q. 「チョンセ詐欺」に遭った場合は、お金を取り返すことはできるのですか?
(金主任研究員)
「かなり難しいです。もちろん訴訟をしますが、期間が長くかかります。そのため、民間の保険制度や国の保証金制度に加入する人が、最近は増えています」

国家消滅の危機!?出生率が過去最低に

韓国の女性の合計特殊出生率

 一方、韓国で大きな課題となっているもう一つの問題が“少子化”です。韓国国内の新聞には「韓国が消えていく」「国家消滅に危機」といった文言が大きく載りました。これらは過去最低となった出生率を危惧した記事の見出しです。2月22日に韓国統計庁が発表した、1人の女性が一生の間に産む子どもの数=合計特殊出生率は、2022年は、韓国全体で0.78となり、ソウルに限ると0.59でした。出生率0.59では、単純計算で将来の人口が4分の1になるとみられます。このような出生率低下の要因として、住宅価格の高騰、教育費の増加、個人の幸せを重視する“非婚主義”などが挙げられます。

韓国政府の対応

 「朝鮮日報」によると、韓国政府は2006年~2021年にかけて、少子化対策として16年間で約280ウォン(約28兆円)を投入しています。出産一時金を200万ウォン(約20万円)支給したり、低所得世帯の第3子以降の大学入学金を全額免除する、などの対策をしてきましたが、解決には至っていません。尹政権では、小学校入学を5歳からに引き下げることや、新婚夫婦の住宅ローンの緩和などの政策を掲げましたが、国民からの批判で計画は頓挫しています。

Q.小学校入学を5歳から引き上げるのは、早く社会に出るということで、労働人口を増やそうということですか?
(金主任研究員)
「そういう狙いもある程度は含まれているかと思います。尹政権に対しては、子育て世帯に対する国の負担を増やすことはいいのですが、それ以外の政策があんまり実施されていないので、それに対する批判もあったかと思います」

Q.教育費の増加とありますが、子どもに高等教育を受けさせるとなると、親はお金も時間も取られてしまうことになりますよね?
(金主任研究員)
「そうですね。かなりの時間を取られてしまうので、社会進出をしたり、社会で成功したいという女性もかなり多いですが、せっかくに就職したのに子どものために昇進・出世できないということが起こるのも、要因になっているのだと思います」

(「情報ライブ ミヤネ屋」 2023年3月29日放送)

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