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西側企業の「脱ロシア」鮮明に

【独自解説】ロシアが撤退する西側企業を国有化? ロシア産レアメタルの供給不足で日本に影響も 専門家が解説します

 ロシアのウクライナ侵攻に非難の声が高まるなか、営業停止に踏み切る外国企業が相次いでいます。ロシアは撤退する外資系企業を接収(国家権力などが所有物を強制的に取り上げること)あるいは国有化する案を策定しました。また、ロシアによるウクライナへの軍事行動が警戒され始めたころから自動車・銀歯・ジュエリーなどに使用される希少金属“パラジウム”が徐々に高騰しています。ロシア経済とパラジウムなど希少金属の高騰による日本経済・家庭への影響について、経済評論家の加谷珪一さんに詳しく解説して頂きます。

西側企業の営業停止が相次ぐロシア

経済評論家の加谷珪一さん

 今ロシアでは、マクドナルドやスターバックス、ユニクロなど海外企業300社以上が撤退あるいは一時事業停止となっています。企業イメージを守るためや、そもそも物資が入手できず事業継続ができないことなどが理由です。

Q.西側企業はロシアから撤退してもさほど影響がないんでしょうか?
(経済学者 加谷珪一さん)
「ロシアを重視している場合は厳しいかもしれませんが、国際的に展開しているブランド企業からすると、ロシアの比率は非常に低いですから、あまり影響はないというのが現実だと思います。GDP(国内総生産)も韓国ぐらいしかなく、豊かさの指標である1人当たりGDPは中国と同じくらいしかないんです。あまり大きな購買力はないですね」

Q.一度欧米の自由な空気を吸ったあと、今回マクドナルドやユニクロが撤退ということになっていますが、ロシアの人々は以前の“ソ連時代”に戻れますか?
(加谷珪一さん)
「人間は、一度豊かな生活を経験すると元には戻れないというのは基本原則です。あとはプーチン政権がどれほど民意を弾圧してくるのか、この辺りにかかってくると思います」

ロシアでマクドナルドの高額転売?

 これらの影響からか、ロシアのフリーマーケットのサイトでは「営業最終日の午後10時に買いました」というコメントの付いたマクドナルドの「ビッグマック」が日本円に換算して6万9000円で売られています。そしてマクドナルドの「チーズソース」が4900円、さらに「ドリンクのカップ」が366万円で売られていて、出品者は「販売するか“ランボルギーニ”と交換します」とコメントしています。

プーチン大統領「国際的企業を手中に収めることは法的にも実現可能」

国際企業もロシア撤退なら接収?

 ブルームバーグによりますと、ロシア政府は撤退する外資系企業を接収、国有化するという案を策定したということです。プーチン大統領は国際的企業を手中に収めることは法的に可能だと話しているということです。

Q.国際企業を接収すると言っていますが、国有化できるのでしょうか?
(加谷珪一さん)
「普通に考えると、そのまま事業を継続するのは難しいと思います。ただ、ロシアは旧ソ連時代にドイツの自動車企業を接収して無理やり“国民車”を作って国民に強制的に買わせたという歴史もあって、“貧しい国”になることが良いというならば可能でしょう。ただ自由主義経済の世界では継続不可能なのが常識です」

計数千億円規模の航空機を返さない

 ロシアは、運航している航空機980機のうち515機を外国企業からリースしていますが、EU(欧州言連合)は制裁として航空機のリース会社にロシアでの航空機のリース契約の終了を求めました。これに対抗する形でロシアの航空当局は「ロシアの航空会社の機体が国外で押収されるリスクが高い」として一部の国際線の運航を禁止する措置を取りました。これは合計数千億円規模の航空機を返さないということになります。

Q.数千億円規模の航空機を返さないというのは、意外と大きな事と思うのですが…
(加谷珪一さん)
「航空機のリースは、金融事業では一大ビジネスになっていますので、もしかしたらロシア国債のデフォルトより影響が大きいかもしないくらいです。リースに絡んでいる会社は、リース料の支払いがないということで損失を出さないといけないので、国際経済に影響を与える可能性はあると思います」

日本の私たちの生活にも影響するレアメタル不足

 自動車の排ガスの浄化装置やジュエリー、銀歯などに使用されているレアメタルの一つ「パラジウム」の価格が2022年に入って80%も増加しています。このパラジウムは生産の4割がロシアだということです。また半導体製造に必要な「ネオンガス」も7割がロシアで製造されているということで今後、日本への影響が懸念されています。

パラジウムやネオンガスの供給が半導体に影響?

Q.パラジウムやネオンの供給がなくなると日本が大変なことになるのでは?
(加谷珪一さん)
「供給が途絶えると大変なことになります。ただ、パラジウムは中古の半導体からリサイクルできますし、ネオンガスも生産自体はどこの地域でもできます。しかし、そのためには時間とコストがかかりますので、相当な物価上昇の要因になるのは間違いないでしょう」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年3月15放送)

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