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今年23回目の弾道ミサイル発射

【独自解説】北朝鮮に高まる7度目核実験の可能性、 “核”の法令化で米に警告発する金総書記に李相哲教授「『力』の行使も辞さない決意が必要」

 10月4日、北朝鮮は今年23回目となる弾道ミサイルの発射を行いました。最高高度は1000kmで飛翔距離は約4600km、日本列島の上空を飛び越して約3600km離れた太平洋上に落下しました。この発射の背景に何があるのか?核実験の可能性は?李相哲教授が徹底解説します。

北朝鮮が「ミサイル発射」を報じないワケ

北朝鮮メディアは「ミサイル発射」を報じず

 今回のミサイル発射について、北朝鮮のメディア「労働新聞」には、記事の掲載がありませんでした。韓国の「聯合ニュース」によると、尹大統領が就任した5月以降は、発射の成否にかかわらず一切報じなくなっているとのことです。

龍谷大学 李相哲教授

Q.グアムまで届くようなミサイル発射について、北朝鮮メディアはなぜ報道しないのですか?
(李相哲教授)
「これは、“通常の訓練”という位置付けだと考えられます。つまり、『実験に成功した』と祝うものでもなく、アメリカと同じように北朝鮮も『訓練をしているだけ』と言いたいのでしょう。一段レベルが上がっています」

「核武力政策」を法令化した金総書記の狙い

北朝鮮が核・ミサイル開発を法令化

 北朝鮮は最高人民会義を開いて、改めて核武力政策について法令を採択しました。「核武力は、金正恩総書記の唯一の指揮に服従し、金総書記が全ての決定権を持つ」とし、「外部の侵略と攻撃に対処し、最後の手段として使用する」というものです。また、核兵器の使用条件として「国家指導部と核武力開発施設へ、攻撃が差し迫った場合」「戦争の拡大を防ぎ、主導権を握る必要がある場合」「国家の存続・国民の安全に、破滅的危機が生じた場合」などを上げています。さらに金正恩総書記は「我々は絶対に核を放棄できない。今回の法令採択により、核保有国としての地位は不可逆的なものになった」と宣言しています。

金総書記が恐れていることは?

Q.金総書記は、何かを恐れているのですか?
(李教授)
「2021年の年末から米軍は、“斬首作戦”の訓練のような、少し太った東洋系の男性を連行する映像を流しています。今のバイデン政権では、金正恩総書記は何をしても言うことを聞かないので、『斬首作戦しか手段がない』という考えが言われているのですが、北朝鮮の核使用条件に『国家指導部へ攻撃が差し迫った場合、核を使用する』というのがあるので、『通常兵器であっても、金正恩総書記に危害を加えるようなことがあれば我々は、核を使用する』とアメリカに警告しているのだと思います」

「北朝鮮の労働者がロシアに加勢」は実現可能?

北朝鮮がロシアへ労働者を派遣支援か?

 ロシアの駐北朝鮮大使が「北朝鮮と広い範囲で協力する可能性がある。勤勉な北朝鮮の建設労働者は、困難な状況でも働くことができ、破壊されたインフラの復旧に貢献できる」と、一方的に併合されたドネツクやルハンシクに、北朝鮮の労働者が派遣される可能性に言及しました。また、別のロシアの国防の専門家は「ロシアに加勢すべく、10万人の北朝鮮義勇兵が準備を整えているとの報告がある。ロシアは、金正恩総書記のこうした申し出を受け入れるべきだ」と言っています。その労働者は、10万人ではなく100万人だという報道もあります。

労働者派遣は“制裁違反”、北朝鮮は反論

 しかし、2017年12月に北朝鮮が大陸間弾道ミサイル「火星15」の発射を行ったため、国連安全保障理事会による制裁で、海外で働く北朝鮮の労働者は全員強制送還となり、今も大部分の労働者は規制されています。そして、資材や装備も含め労働者を提供する行為は“制裁違反”だという批判もあります。これに対して北朝鮮は、「我々は他人の目を気にしない」と反論しています。

Q.建設労働者と言っていたり、義勇兵と言っていたり、実際はどっちなのでしょう?
(李教授)
「戦争が終われば、建設労働者は役に立つと思います。しかし、今の状況で北朝鮮から義勇兵などを送るのは、国際社会から強い非難と制裁を受けるので、現実味はありません。ただ、今ロシアに行って森林伐採に従事している北朝鮮の労働者の多くは軍人ですので、その人たちを戦場に連れていくという案もあります。しかも北朝鮮の兵士は、建設労働者と同じような仕事もしているので、戦後復興には役立つと思いますが、これも国連の制裁に違反するので難しいでしょう」

高まる7度目核実験の可能性

高まる核実験の可能性

 韓国国家情報院は、「北朝鮮の豊渓里にある核実験場の坑道が完成し、核実験を行う可能性が高まっている」と分析しています。時期としては、中国共産党の党大会と、アメリカの中間選挙の間で強行される恐れがあるといいます。李教授は、「北朝鮮の『非核化』を望むなら、対話ではなく『力』の行使も辞さない決意で臨む必要がある」としています。

Q.北朝鮮の核実験の目的はなんですか?
(李教授)
「北朝鮮は、小型化した核を実戦配備しようとしています。次の7度目の実験はそのためのものではないかと、米韓当局は考えています」

Q.中国は北朝鮮の核実験に不快感を表明していますが、北朝鮮としてはどう考えているのでしょうか?
(李教授)
「10月16日の中国共産党の党大会が始まる前には、核実験はしないと思われます。金正恩総書記は、10月1日に習近平主席に祝電を打ったりしていますので、中国には気を使っていると思います。しかし、北朝鮮には核しか頼れるものがないのも事実です」

(情報ライブミヤネ屋2022年10月5日放送)

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