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自民党は“統一教会”との関係を断つことはできるのか?

【独自解説】自民党の調査結果は「全く検証ができない」内容 次々と発覚する“矛盾”を鈴木エイト氏が解説

 9月8日に公表された、自民党と“統一教会”との関係についてのアンケートで、所属議員379人中、教団側と何らかの「接点があった」と回答したのは179人に上りました。そのうち“関係が深い”とされた121人の議員の氏名が公表されましたが、その後、アンケート結果とは異なる実態が次々と発覚し、波紋が広がっています。これで本当に教団と関係を断つことは可能なのでしょうか?“統一教会”を20年以上取材する、ジャーナリストの鈴木エイト氏が解説します。

「“統一教会”と関係があった」121人の氏名公表も関係の濃淡は不明

自民党のアンケート結果 121人の氏名を公表

 自民党のアンケート結果に関して、茂木敏充幹事長は、「(“統一教会”の)関連団体の会合に出席した時点において、関連団体であるという認識がなかったという人が、大体9割近くであった」 などと説明しています。

Q.9割の議員が教団との関係を認識していなかった、というのは信じがたいですよね?
(鈴木エイト氏)
「はい、これは逆だと思います。9割の方が知っていて、残りの1割、生稲晃子議員のような新人の方は知らなかった可能性はあるかなというぐらいです」

アンケートの結果に党内では“悲観的な見方”も

 ある党幹部からは、「121人も名前を出したので、関係の濃い議員に注目が集まらずよかった」という意見もあります。岸田文雄首相は周辺に対して「調査漏れを指摘されて、それが事実なら認めて説明するしかない。党の調査は今回で終わりだ」と漏らしていて、党内では相次いで新たな事実が発覚すれば、「調査の信ぴょう性は吹き飛んで、自民党の責任が問われる」、「さらに傷口を広げることになるのでは」との悲観的な見方もあるということです。

ジャーナリスト 鈴木エイト氏「検証が全くできない」

Q.このアンケートを見ると、例えば「関連団体への会合の出席」でも、いつ・どこで・どういう形で出席をし、講演をしたのか・しなかったのか、挨拶をしたのか・しなかったのか、どういう内容だったのか、という詳細はないんですよね?
(鈴木エイト氏)
「アンケートには書いてあるはずなんですけど、それが全く公表されておらず、関係の濃い方が薄い方に混じってしまっていて、検証が全くできないです」

「調査結果」公表後に明らかになる“矛盾”が続々と…

今村議員 「アンケート後に会合への出席が判明」

 調査結果公表後、矛盾点が次々と発覚しています。今村雅弘衆院議員は、2022年8月まで“統一教会”と関連する「日韓トンネル研究会」で顧問を務め、2回、会合に出席して挨拶をしたということですが、党のアンケートでは申告しなかったため、氏名公表の対象外でした。その後、事務所で精査したところ、会合への出席が判明し、党本部に改めて報告をしたということです。

Q.「日韓トンネル」は、日本と韓国の大事業で、それをどこが主催しているか、日本の国交省や外務省はどうしているのか、普通は考えませんか?
(鈴木エイト氏)
「そうですね。今村議員の場合は地元のメディアがかなり前から取材をかけているのですが、事務所は常にノーコメントで、一切返事をしていなかったんです。それが急に、この段階になって出してきたというのは少し不自然です」

山際経済再生担当相 「選挙支援」の真相は?

 山際大志郎経済再生担当相は今回、「関連団体の会合で挨拶」「関連団体の会合で講演」の2つで氏名が公表されています。しかし、「選挙支援」については、「関わる方全員に対して、何か特定のことを聞いて回るということは、常識的に考えてもやらない。“内心の自由”に抵触するようなことは確認しないと答えるのが普通だと思う」とし、「選挙支援の依頼」「組織的支援」「選挙ボランティア」についての真相は分かっていません。

Q.岸田首相も「社会的問題がある団体とは、一切関係を断ちます」と仰っていますが、では「社会的問題がある団体」というのは“統一教会”だけなのか、「社会的問題」とは具体的に何か、まずそこをおさえないといけないと思いますが?
(鈴木エイト氏)
「確かに、そこを示すべきです。山際経済再生担当相の場合、おかしいのは論点のすり替えがあることです。『内心の自由に触れている』とかそういう問題ではなくて、例えば社会的に問題のある団体だとしても、そこのメンバーが個人的に選挙運動なり支援するのは、究極的に言うと問題はないんです。教団が組織的に送り込んでいたり、政治家側がそういう人達と分かった上で組織的に受け入れているかどうか、そこを聞いているわけなんです」

上田議員 “接点”認めるも、氏名公表の対象外

 「教団との接点があることは認める」としながら、アンケートの8項目は「全てなし」と回答していた上田英俊衆議院議員は、アンケート後に2021年の衆院選で「2~3か所で話をした」と明かし、その場が、「“統一教会”の関連団体の方々が集まる場だったか?」という質問に対して、「今となったら、たぶんそうだったんだろうと思います」という発言をしています。

(鈴木エイト氏)
「この辺りの細かい言い訳は、斟酌する必要はないと思います。こういう個人の判断に委ねられているアンケート調査だったことが問題だと思います」

土井議員、教団主催行事で挨拶の記憶なし?

 土井亨衆院議員は「関連団体の会合で挨拶あり」として氏名が公表されましたが、「教団主催会合への出席」には名前がありませんでした。しかし鈴木氏によると、2021年4月の教団主催行事で、「私は国会議員の土井亨と申します。『真のお母さま』に、オンラインではありますが、直接ご挨拶の機会を与えてくださったことに、心より感謝申し上げます」と挨拶する様子が、教団の動画サイトに掲載されていたということです。土井議員は「全く記憶になくてわからない」としています。

(鈴木エイト氏)
「しかも、この土井議員は、『真のお父さま』とも言っています。文鮮明氏のお葬式と去年の式典にも行っているんです。去年の時点で8年前、9年前のことをしっかり覚えているのですが、今の時点で去年のことを覚えていないというのは明らかにおかしいです」

「“統一教会”主催イベントに出席」にもかかわらず、なぜ公表なし?

 また、山本朋広衆院議員は「関連団体の会合で挨拶」「寄付・パーティー収入」があっただけでなく、主催に「世界平和統一家庭連合」とあるイベント、つまり本体へのパーティーに出席していましたが、その項目には名前がありませんでした。

 平井卓也衆院議員は「関連団体の会合で挨拶」「会費類を支出した」ことで氏名を公表されましたが、後に“統一教会”とAPTF香川が主催の礼拝に出席していたことが発覚しています。ミヤネ屋の取材に対して、「ご指摘の会合へは関連団体からの案内で出席しました。案内状も残っておらず、党の調査には『関連団体の会合出席』の欄に記載して報告しましたが、後ほど記載ミスが分かり、党へは修正して報告をしました」としています。

(鈴木エイト氏)
「これは誤魔化しだと思います。平井議員の場合は他にも“統一教会”との関係性において、いろいろ裏で動いていた気配があるので、ただ単に利用されたっていう政治家ではないと僕は見ています」

教団からの選挙支援は「組織的」ではなかったのか?

 教団から「選挙におけるボランティア支援」があったということで、氏名が公表されたのが17人、そして、「選挙支援の依頼」「組織的支援」「動員等の受け入れ」があったということで公表されたのは、井上義行参院議員と斎藤洋明衆院議員の2人でした。

教団から「選挙支援」受け、氏名公表された斎藤議員

 齊藤議員は、2017年の衆院選の際に、僅か50票差で惜敗をした時から、“統一教会”との付き合いが始まったとし、2021年の衆院選では、十数人程度の電話かけの手伝いなど「組織的支援」を受けて当選をしたということです。斎藤議員は「現在では問題のない団体だと認識していました。大変申し訳ないと思っています」と謝罪しました。ある自民党議員は、「斎藤は正直に回答しただけで、“斎藤レベルの支援”を受けている人は他に何人もいる」と話しています。

Q.斎藤議員は素直に話したということですよね?
(鈴木エイト氏)
「そうですね。『認識がなかった』ということは、信用できないところもあるんですが、それ以外に関しては正直に答えて、支援してくれた教会員を含め有権者にちゃんとお礼を言っているなという点では評価はできると思います」

北村議員は選挙での「組織的支援」もあったのではないか?

 一方の北村経夫参院議員は、「関連団体の会合で挨拶」「選挙におけるボランティア支援」の2つで氏名が公表されていますが、鈴木氏は「組織的支援」もあったのではないかと、これまでの取材から判断しています。鈴木氏の取材によると、2013年の参院選の際、“統一教会”の内部文書には「(安倍)首相<当時>から直々この方を後援してほしいとの依頼があり<中略>参院選後に当グループを国会で追及する運動が起こるとの情報があり、それを守ってもらうためにも、今選挙で北村候補を当選させることができるかどうか、組織の死活問題です」と書かれていたということです。さらに2019年の参院選の北村議員の演説会で、“統一教会”の関連団体の役員用の座席があり、「皆さんは世界平和統一家庭連合の方ですか」と聞くと、「そうです」と答えたということです。

北村議員は「組織的支援」を否定している

 7月にミヤネ屋が行った取材に対し、「“統一教会”の関連団体から支援はあったのか?」という質問に、北村議員の事務所は、「そうした事実はありません」と答えた一方で、“統一教会”の関連団体・世界平和連合は、「弊団体が北村氏を支援したことは事実です。支援の具体的な形は講演会の開催などです」と答えていました。

Q.北村議員について、どう思いますか?
(鈴木エイト氏)
「本人だけは認めていないという、変な状況になっていますね。2013年の参院選で、“統一教会”は北村議員の選挙戦を応援する3000人の団体を作ったと言われているんです。そういう情報もあるくらいなので、北村議員が知らないと言い切るのは、いくらなんでも無理があると思います」

Q.これだけ応援してもらっていて、本当にこの関係を断ち切れるのでしょうか?
(鈴木エイト氏)
「難しいと思います。特に地方議員のレベルになると、かなり密接な関係で、国会議員も後援会などで支援してもらっている人はかなりいるんです」

Q.議員と“統一教会”の関係はまだ出てきますか?
(鈴木エイト氏)
「まだ出てくると思います」

(情報ライブ ミヤネ屋 2022年9月12日放送)

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