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消息を絶ったヘリと同型機

【独自解説】陸上自衛隊の第一線で何が?師団長も乗せたヘリが離陸10分後にレーダーから消失 考えられる原因を軍事評論家が解説

 4月6日、沖縄県・宮古島沖で陸上自衛隊のUH60JAヘリコプターがレーダーから消失し消息を絶ちました。その後、窓枠など機体の一部と思われるものを発見しましたが、機体に搭乗していた第8師団 師団長坂本雄一陸将ほか9人について、現在も発見に至っていません。搭乗していた10人の捜索活動は現在も続いています。なぜ事故は発生したのか?考えられる原因を、軍事評論家の黒井文太郎氏が解説します。

消息を絶ったヘリUH60JAとは

 消息を絶った機体は、多用途ヘリコプターUH60JAです。12名搭乗可能な広い機内で、隊員や物資の輸送など、多岐にわたる任務に使用されています。夜間や悪天候でも飛行でき、災害派遣時にも使われているというものです。

軍事評論家 黒井文太郎氏

Q.多用途ヘリコプターUH60JAというものはどんなヘリコプターなんでしょうか?
(軍事評論家 黒井文太郎氏)
「UH60JAの原型は、アメリカが1970年代から運用しているUH60ブラックホークという中型ヘリで、世界中で使われています。それを陸上自衛隊仕様にしたものです。武装はしておらず、基本的には輸送任務を行うというものです。また、エンジンを2基搭載していて、1基のエンジンにトラブルがあっても飛行が続けられので、比較的安全です。世界中でも運用実績がありますし、機種に問題があるということはないと思います」

ヘリの飛行ルート

 今回消息を絶った機体は、4月6日午後3時46分、自衛隊・宮古島分屯基地を離陸し、地形を確認する航空偵察の訓練に入りました。離陸から約10分後、沖縄県・宮古島周辺を飛行中の洋上で、機影がレーダーから消失しました。民間への被害や事故原因は調査中ということです。

ヘリには第8師団長も同乗

 ヘリには、九州南部の防衛や警備・災害派遣任務を担当する陸上自衛隊第8師団の坂本雄一師団長をはじめパイロット2人・整備員2人を含む10人が搭乗していました。この坂本師団長は、3月末に着任したということで、「大変光栄に思うとともに、その重責に身の引き締まる思い」だと語っていました。第8師団は、所属隊員約5000人で、熊本・宮崎・鹿児島の6個の駐屯地と1個の分屯地に展開しています。
 師団長が航空偵察訓練のヘリに乗っていた理由について、陸上自衛隊トップ・森下泰臣陸上幕僚長は「各部隊を訓練するためにも師団長・指揮官が偵察して航空偵察することはある」としています。

Q.一般的にどういった状況になるとレーダーから消失するのでしょうか?
(黒井氏)
「上空から降下したということです。宮古島には航空自衛隊のレーダーサイトがあるのでかなり低いところまで見えるのですが、おそらくそれより低いところまで行ったということだと思います」

考えられる3つの原因

 黒井氏は現時点で、“ヘリ消失の原因”と考えられることを3つ挙げています。最初に考えられる原因は「天候」です。ヘリが消失した時間帯の宮古島の天候ですが、午後3時50分で、天気はくもり・風速5.9m/s・最大瞬間風速8.7m/s見通しも良く、雷なども観測されていないということです。

Q.最大瞬間風速8.7m/sという数字は、ヘリコプターの飛行に影響するものですか?
(黒井氏)
「それほど影響を与えるものではないです」

黒井氏は、2つめの考えられる原因として「機材トラブル」を挙げています。消息を絶ったヘリは、飛行時間50時間ごとに行う特別点検を、3月20日~28日に実施していて、問題がありませんでした。また、実際に飛行して点検する確認飛行も1時間実施し、今回の任務のために、熊本県から宮古島まで約4時間飛行していて、その時点でも問題はなかったということです。

Q.これだけの点検をしていて、機材トラブルは考えられますか?
(黒井氏)
「兆候のない機材トラブルがないとは言えないのですが、機材チェックに見落としがあったということはなさそうです」

過去に起きた同型機の事故

 過去には同型機の墜落事故が発生しています。2017年に航空自衛隊の浜松基地に所属するヘリコプター「UH60J」は離陸後、約10分でレーダーから消失しました。この原因として、防衛省は「パイロットがヘリの降下率を誤認、“空間識失調”に陥った」と発表しています。この“空間識失調”とは、機体の姿勢・位置・運動状態などをパイロットが把握できなくなった状態で、健康な人でもなるということです。

Q. “空間識失調”というのは、パイロットには起こり得るのですか?
(黒井氏)
「速度の速い戦闘機などでは時々起きます。上下の感覚がなくなるので、その場合は計器を頼りに飛ぶということが基本です。前例もありますので、戦闘機ほど速くないヘリでも起こりえるということです」

Q.パイロットが“空間識失調”になった場合、ほかの人が計器を見るという対処方法もあるのではないですか?
(黒井氏)
「パイロットが2人いるので、どちらかが対処します」

4月7日午前までに見つかったもの

 7日午前までに、「陸上自衛隊」と書かれたヘリのものと思われるドアや回転翼の一部・救命ボートなどが見つかっています。

Q.回転翼等が見つかっているということで分かることはありますか?
(黒井氏)
「状況は分かりませんが、何らかの事故で海上に墜ちたと言えます。ただ、今、『これが決定的原因だ』というのは、わからないです」

(情報ライブミヤネ屋2023年4月7日放送)

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