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裁判所入りするヘンリー王子(写真:ゲッティ)

【独自解説】ヘンリー王子が『デイリー・ミラー』発行企業相手に民事訴訟、出廷するも質問に「わかりません」18回連発で批判殺到…なぜ王子は裁判を起こしたのか?

 6月5~7日、ヘンリー王子は「デイリー・ミラー」紙などを発行するグループ企業「MGN」を相手取った民事裁判に出廷しました(1日目は欠席)。ヘンリー王子側の主張は、「1996年から2010年にわたって『MGN』が出した約140の記事が、違法な手段で入手した情報を基にしている」というものです。王室の上級メンバーが法廷で証言したのは1891年以来で、約130年ぶりだったため、現地メディアは「異例の事態」と大きく報じました。しかし、ヘンリー王子は「わかりません」「覚えていません」を連発、批判が殺到しました。いったい何が起こっているのか、英国王室に詳しいデーブ・スペクター氏の解説です。

デーブ・スペクター氏

Q.王室はマスコミと、ある程度の良い距離感で付き合ってきたのですよね?
(デーブ・スペクター氏)
「ギブアンドテイクで、うまくやっていました。また、130年前の裁判のときは『トランプのいかさま』の件で証言しただけなので、今回とは全然違います。王室メンバーが、ここまで裁判で対決するのは初めてです」

 裁判を起こした経緯については、「私とメーガンに向けられる憎しみを止めるための方法として話し合った」としています。裁判の冒頭、裁判官から「殿下」と呼びかけられると、ヘンリー王子は「『殿下』ではなく『王子』と呼んでほしい」と伝えました。

Q.英語で『殿下』と『王子』は全然違うのですか?
(デーブ氏)
「『highness(殿下)』が正式な呼び方ですが、ヘンリー王子は王室を離脱して公務もやっていませんし、よりフレンドリーに感じてほしいというのもあったと思います」

 ヘンリー王子を弁護するデビッド・シェアボーン氏は、ダイアナ元妃やブレア元首相、エルトン・ジョン氏らをクライアントに持つ“セレブ御用達弁護士”です。一方、被告側の弁護士で「法廷の獣」の異名を持つアンドリュー・グリーン氏は、イギリス法律事務所ランキングのさまざまな分野でトップクラスにランクインしており、両者共に凄腕弁護士だということです。

Q.ヘンリー王子の弁護士は“セレブ御用達弁護士”ということですが、昔から知っていたのですか?
(デーブ氏)
「いや、ヘンリー王子は知らなかったです。偶然エルトン・ジョン氏と同じ所にいたときに、紹介されました。そのことがなければ、ここまでの裁判は起こしていなかったかもしれません。シェアボーン氏はセレブの裁判ばかりやっていますが、先日、同じく『名誉棄損』で新聞社と戦ったジョニー・デップ氏の裁判では負けています。対して、グリーン氏は『The beast(獣)』と言われているトップ中のトップ弁護士です」

 弁護士は凄腕ですが、ヘンリー王子の答弁には批判の声が相次いでいます。23年前の2000年に「ミラー」紙が報じた「イートン校在学中に親指を骨折」の記事について、ヘンリー王子は「盗聴など違法な手段で情報を入手し掲載した」と主張しましたが…。

「具体的に、誰の電話が盗聴されたのですか?」(被告側の弁護士)
「わかりません」(ヘンリー王子)
「どのボイスメールが盗聴されたのですか?」(被告側の弁護士)
「覚えていません」(ヘンリー王子)

 このような質疑応答があったといい、ヘンリー王子は「わかりません」を18回、「覚えていません」を9回も発言し(英「GBニュース」による)、「盗聴やハッキングをされた」という主張を裏付ける具体的な証拠を、提示できなかったということです。

(デーブ氏)
「現地の新聞は、被告側の弁護士・グリーン氏が言ったことと全く同じ文言を見出しにして、『完全な臆測の世界にいる』と非難しています。大体、『わからない』と言うのは原告側ではなく被告側です。ヘンリー王子側が不利なのは、『盗聴された』とか『リークされた』と言っている情報や記事が、すでに他の新聞にも出ていることです。王室の発表だったり、ヘンリー王子自身がインタビューで言ったりしたことが記事になっていて、それを『覚えていない』と言うばかりで、結果的に“印象論でしか喋っていない”というマイナスな印象になっています」

 さらにヘンリー王子は、回顧録「スペア」に記載したこととの矛盾も指摘されました。ダイアナ元妃の元執事・ポール・バレル氏は、ダイアナ元妃の死後、メディアに彼女について話したり、彼女の私物を売却したりしていました。そのことについて、回顧録「スペア」の中では「当時(2003年)、私はオーストラリアの奥地にいたが、バレル氏に会うため飛行機で帰国したかった」と書かれていたのですが、6日の法廷では「私はバレル氏に会って、売却などの理由を聞くことは望んでいなかった」と発言しました。その矛盾について指摘されると、ヘンリー王子は「2003年から回顧録を書くまで、かなり時間が経っていたので、正直なところ覚えていない」と答えました。

 また、ヘンリー王子は法廷で、「デイリー・ミラー」などの発行元の報道姿勢を批判しましたが、その発言の中に「イギリスのメディアと政府は、いずれもどん底にあると思っている」と、政府を批判するものがありました。エリザベス女王は「政治については発言しない」という方針を生涯貫いたため、関係者は、「王室は、王子の発言を非常に難しい状況だと考え、不快に思っているだろう」としています。

Q.自分を「王子と呼んでくれ」と言いながら、政府批判をするのはどうなのでしょうか?
(デーブ氏)
「もし仮に、政治的発言が建設的であれば良いと思いますが、そうではなく、裏付けも根拠もなく言っているだけです。“どん底”という表現も、何のどこが“どん底”なのか分かりません」

Q.ヘンリー王子は、感情に任せて法廷に出てしまった感じがありますよね?
(デーブ氏)
「しかも『メーガンを守るため』と言っているのに、そのメーガン妃は来ていません。普通だったら、サポートのためにヘンリー王子の傍で座っている、ということがあってもいい思うのですが」

(「情報ライブ ミヤネ屋」2023年6月13日放送)

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