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　京都市の幹部職員が保育園の前理事長から、賄賂として40万円相当の「純金の小判」を受け取っていた事件。京都市は12月5日、さらに市職員18人の懲戒処分を発表しました。この幹部と前理事長の関係は、約10年にわたっていたということですが、事件の背景には一体何があったのでしょうか？

　収賄の容疑で逮捕・起訴されたのは、京都市「子ども若者はぐくみ局」の前局長・久保敦被告（60）です。久保被告は、「セヴァ子ども学園」の前理事長（86）から、45万円相当の高級腕時計や、40万円相当の純金の小判を、『監査で便宜を図ってほしい』という意図を承知の上で受け取ったなどの疑いがもたれています。

　京都市「子ども若者はぐくみ局」は、子育て支援分野で、市の施策を推進する部局です。保育園の認可や運営指導、指導監査、また保育に関する扶助費や補助金の支給交付などに関する業務を担っています。

　久保被告の供述によると、前理事長とは2005年に、久保被告の上司の紹介で知り合ったということです。2011年には、前理事長が洋服の仕立券を送るなどして連絡を取り合うようになり、その後、物品なども贈られるようになります。2012年、久保被告が保健福祉部長に昇進した後は、より懇意になり、定期的に会食をしたり、純金の小判や現金100万円などを受け取りました。約10年間で、物品や飲食の提供は合計31回にわたったということです。

　この事件の背景には、「待機児童ゼロ問題」があったとみられます。京都市は2014年以降、待機児童ゼロを継続していますが、賄賂を贈った前理事長の保育園も、そうした京都市の要請に従い、2004年～2005年の間、定員90人だったところを120人に引き上げたということです。しかし前理事長はその後、「定員を90人に減らしてほしい」と要望したということで、その理由は、京都市からの“扶助費”が定員の設定によって変わることが背景ではないかとみられています。

　市からの扶助費は、1・2歳児一人当たりの月額は、定員が90人の設定では10万7850円ですが、定員が120人の設定では9万8860円となり、定員の設定を引き上げると一人当たりの扶助費が減る、という仕組みになっています。例えば、同じ100人を受け入れていたとすると、定員が90人の設定では扶助費の合計は1178万円余りになりますが、120人設定だと988万円余りになり、月額100万円ほどの差が出ることになります。前理事長は、「扶助費の単価が下がると事前に聞いていなかった」とし、定員を当初の90人に戻すよう要望したと言います。この保育園では、常に定員超過の状態だったことが分かっています。

　久保被告は、「前理事長は『要望を聞き入れない場合は、保育園を閉園する』と言っていた。話のできる関係を継続することを考え対応する中で、贈与物や接待を受けた」と主張しています。また逮捕容疑では、「監査で便宜を図ってほしい」という意図を承知の上で受け取った、とされていますが、久保被告としては、「贈与などの真意は分からなかった」ということです。さらに過去の上司などにも「受領していた」と言われ、「誰にも相談できなかった」とも語っています。

　さらに12月5日、久保被告以外にも京都市の職員11人が、お歳暮や高級ボールペン・弁当・菓子などを受け取っていたということで、監督責任などを含め職員計18人が、戒告などの処分を受けたほか、門川市長や副市長も減給などの処分を受けました。一方で京都市としては、保育園の定員の引き下げや監査業務、扶助費や補助金などの支給について、「業務の公正さがゆがめられた事実は確認されていなかった」としています。

Q.保育園を巡る様々な事件は、問題が根深いですね。
（清原博弁護士）
「根深いですね。ただ今回も、個別の保育園が自分の利益を図ろうとして、お金を渡したり物を渡したりしているわけで、他に抜け駆けしようというのはやはり悪質なので、収賄で起訴されたわけです。保育所側の問題も分かりますが、行政の対応も、強い行政官・トップであれば対応できると思います。しかし局長といえども、なかなか立場が弱いと思いますから、組織全体で、京都市役所全体で立ち向かっていくようにしないと、局長1人で頑張れと言われても、難しいと思います」

（「情報ライブミヤネ屋」　2022年12月7日放送）