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12月6日に行われた 成年行事

【独自解説】愛子さま“初正装”の秘話 有識者会議では「皇族減少対策」とりまとめへ 元宮内庁職員「皇位継承問題は先送り、今は皇族の数を増やすことに専念」

愛子さまの成年祝賀と皇位継承問題

 12月1日に二十歳を迎えた、天皇皇后両陛下の長女・愛子さま。12月5日に初めて正装で成年行事に臨まれました。初披露したドレスと陛下の妹の黒田清子さんから借りたティアラにまつわる秘話や、皇室の減少を受けての皇位継承問題について、元宮内庁職員の山下晋司さんが独自解説します。

愛子さまの「成年行事」とティアラ

愛子さまの正装姿

 12月5日、愛子さまの「成年行事」が行われました。初めて“正装姿”を披露された愛子さま。白を基調としたシンプルなデザインのドレスとネックレスをお召しになっていました。

元宮内庁職員・山下晋司さん

Q.雅子さまも色々とお考えになって、愛子さまの服装をこういうテーラードジャケットにされたのかも知れませんね?
(元宮内庁職員・山下晋司さん)
「上品な雰囲気で、堂々としておられるというか、そういうものが滲み出ていますよね。もう素晴らしいとしか言いようがないですね。」

愛子さまのティアラ

 成人となった女性皇族は、ご自身のティアラを作られるのが慣例ですが、今回、愛子さまは黒田清子さんのものを借り受けて着用されました。成年行事には黒田清子さん夫妻も出席しました。

皇室 ティアラの起源

 皇室における、ティアラの歴史は明治時代に始まりました。明治時代、政府が西洋化を推し進める中、伊藤博文首相が宮中の女性の洋装化を通達。明治天皇の后・昭憲(しょうけん)皇太后のために作られた通称“第一ティアラ”が最初です。“第一ティアラ”は“地位と威厳”の象徴として代々の皇后に受け継がれています。ちなみに、大正時代・貞明(ていめい)皇后の時に“第二ティアラ”が作られ、“第一ティアラ”と共に、代々、皇后に受け継がれています。

Q.明治時代の伊藤博文首相が宮中の女性の洋装化を通達したのですね?
(山下晋司さん)
「そうですね、明治以降、西洋化を取り入れていく流れの中で服装なども外国に合わすと。余談ですが、男性の場合はスーツになっていますが、女性の場合は今でも、着物をお召しになることが多いじゃないですか、園遊会でもそうですけれども。着物というのは、外国の方からも人気があったんですよ。男性の着物はあまり人気がなかったんですけれども、女性の着物というのは日本の伝統文化というか、素晴らしいというので、非常に人気があったので、いまだに残っている。でも、宮中行事などの時にはやはり女性の正装という装いも必要になってくるので、伊藤首相は、そういったことは皇族から始めなきゃいけないという考え方だったようですね。」

皇后・雅子さまの思い

 愛子さまが成年皇族としての歩みを始められたいま、皇后・雅子さまはどのような思いでいらっしゃるのでしょうか。皇室ジャーナリストの近重幸哉さんによると…。

(皇室ジャーナリスト・近重幸哉さん)
「雅子さまの適応障害、愛子さまの登校不安があって苦しい時期を乗り越えられて今日を迎えられたわけですね。美しく落ち着いた成年皇族になられた愛子さまのローブデコルテの正装をご覧になって、雅子さまも嬉しいとともにお心に込み上げるものがおありだったんじゃないかと思いますね。」

 12月1日の誕生日当日に行われた成年行事は体調が整わず、欠席された皇后さま。このことについて、近重さんは…。

(皇室ジャーナリスト・近重幸哉さん)
「雅子さまは愛子さまのお気持ちを伺いながら、しっかりと準備されてこられたと思うんですよね。ですからお疲れもあった。そうした中で12月1日はお休みになられたんですけども、それは12月5日を雅子さまは体調がいい状況でお迎えになりたかったというお気持ちがあったと思いますね。」

 皇后さま、そして天皇陛下の愛に包まれ、無事成年の日を迎えられた愛子さま。

(皇室ジャーナリスト・近重幸哉さん)
「愛子さまの上品で華やいだ、そして優しい印象がこれからの国民にとって大変ありがたいもの、貴重なものになっていくんではないかと思われます。」

Q.雅子さまも体調がまだまだ万全でない、かつては愛子さまも登校に不安を感じる時期もあった。それで成年皇族になられたということで、皇后雅子さまもたいへん感慨深いのでは?
(山下晋司さん)
「そうですよね、一時期、ご心配な時もありました。幼稚園にお入りになる前から、女系天皇問題だとか、将来どうなるんだとかっていうことを、ご本人たちでなく周囲で、そういう議論もあった中で、育ててこられたわけですから、よくぞここまでご立派にお育てになったなと思いますし、両陛下にとっては、喜びもひとしおだと思いますね。」

今後の日程

 今後の日程ですが、12月末にある宮中祭祀に出席する可能性が高いということです。2022年1月1日の新年祝賀の儀には初めて出席される見込みです。2日の新年一般参賀は見送りで、3月中旬に大学の春休み中に記者会見を予定しています。

懸念される皇族の減少…「安定的な皇位継承」について議論

これまでの議論

 12月1日、愛子さまが成年皇族となられたことで、未成年の皇族は悠仁さま、お一人となりました。そんな中、いま議論が必要となっているのが皇族の減少です。10月に小室圭さんと結婚した眞子さんの皇籍離脱により、現在、天皇陛下と皇族方は合わせて17人。そのうち未婚の女性皇族は5人。結婚に伴って、近い将来さらに皇族が減少することが懸念されています。

 そんな中、政府は2021年3月、「安定的な皇位継承」について議論する有識者会議を設置。海外の事例などを調査するため、一時中断していましたが、11月30日、約4か月ぶりに再開しました。岸田内閣発足後初めてとなる会合で、総理は…

(岸田首相)
「3月の会議の立ち上げ以来、熱心に御議論をいただいてきたことに改めて感謝を申し上げたいと存じます。最終的な取りまとめに向けて、引き続き十分に議論していただきたく存じます。」

 政府として議論の結果を尊重するとしました。「安定的な皇位継承」を巡っては、これまでも議論が続けられてきました。2005年に行われた有識者会議では、女性天皇、女系天皇を容認することなどが最終報告書でまとめられました。政府は2006年の改正法案提出を目指しましたが、悠仁さまが誕生されたことで、提出は見送りに…。

 さらに、2012年には野田政権下で、女性皇族が結婚後も皇室に残る“女性宮家”の創設を巡る論点整理が行われましたが、その後の政権交代で議論はストップしました。

 岸田首相は、皇位継承について、2021年9月の自民党総裁選候補者共同会見で…。

(岸田首相)
「安定的な皇位継承策については、旧宮家の男系男子が皇籍に復帰する案も含め、女系天皇以外の方法を検討するべきであると考えます。女系天皇、私は反対です。」

 女系天皇に反対の立場を明言しています。有識者会議は、年内に最終答申を取りまとめることを目指します。はたして、議論の行方は…そして今後、女性天皇、女性宮家が認められる可能性はあるのでしょうか。

対応急務…皇族は「17人」に

さらなる皇族減少が懸念

 現在の皇室には、天皇陛下と皇族方が計17人。男性5人、女性12人おられます。うち皇位継承者は3人、皇位継承順位は男系男子と定められており、皇位継承の順序は、「一・皇長子、二・ 皇長孫、三・その他の皇長子の子孫、四・皇次子及びその子孫、五・その他の皇子孫、六・皇兄弟及びその子孫(秋篠宮さま、悠仁さま)、七・皇伯叔父及びその子孫(常陸宮さま)」となっています。

「皇位継承 有識者会議」の内容

 「安定的な皇位継承の在り方を検討する有識者会議」では、皇族の数を確保するための3つの案について議論されています。(1)女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持できるようにする、(2)皇統に属する男系の男子の皇族の養子縁組を可能とする、(1)、(2)を中心に議論をするとしています。

 そして(1)、(2)で十分な皇族数が確保できない場合に、(3)皇統に属する男系の男子を法律により直接皇族とする案の検討を求めています。女性天皇、女系天皇の具体的な検討は行わないということです。年内にも取りまとめて、政府が国会に報告する方針です。

今後の整理の方向性

 今後の整理の方向性ですが、「天皇陛下から秋篠宮さま、次世代の悠仁さままでの皇位継承の流れをゆるがせにしてはならない」、「悠仁さまの次代以降の皇位継承は、悠仁さまの年齢、結婚など踏まえた上で判断すべき」、「現行制度の下での皇族の方のこれまでの人生も重く受け止める」必要があり、当面は「皇族数の確保を図ることが喫緊の課題」だとしています。

Q.振り返れば.皇位継承については、これまでも何度か話が出てきましたが、議論がストップしましたね?
(山下晋司さん)
「16年前から喫緊の課題と言われているのですが、いまだに喫緊の課題と。ひょっとしたら10年、20年先も喫緊の課題と言っている可能性がありますよね。」

結婚後も“女性皇族維持”を検討

女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持する案について

それでは、“女性皇族が結婚後も皇族の身分を保持”することについて、どのような議論が なされているのでしょうか。これまでの有識者会議出席者からは、「女性皇族が婚姻にともない皇族の身分を離れることは不変の原理」という現状を維持すべきだという意見がある一方で、「皇族数の減少によるマイナス面が現に顕在化している制度を再考する必要がある」という意見もありました。

配偶者や子どもの身分については、「いささか古めいた心配だが、権威を得る手段として女性皇族を利用する男性が出現しないとも限らない」という慎重な意見がある一方、「内親王・女王が婚姻後も皇族の身分を有するのは血統に注目してのこと。血統を引いて生まれてくる子を皇族とするのは当然であり、配偶者も皇族とするのが適当」という意見も聞かれました。

配偶者や子どもの身分は?戸籍はどうなるのか?

 では、戸籍上はどうなるのかというと、例えば、結婚しても女性皇族(皇系譜)のまま、配偶者・こども(戸籍)に分かれることも考えられますが、山下さんは、「日本の家族を代表するともいえる皇室において、事実婚のような形はなじまないのではないか」と話しています。

Q. 女性皇族だけ皇族に残っていただいて、配偶者、お子さんは一般の方っていうのは、なかなか日本にはなじまないんじゃないかと?
(山下晋司さん)
「色々と難しい問題が出てきますよね。例えば、国としてお世話をするのはどうなのかとか。また一般の方であれば、極端な例かも分かりませんけど、お子さまの、名前とか顔とかも一切出すべきじゃないっていう考え方もあるかもしれません。家族といっても今までの皇族とは全く違う形の家族というものを作ろうとしているのかと、非常に疑問に思っています。」

女性皇族の“結婚”にも影響が…

女性皇族の結婚に影響は?

Q女性皇族の方も将来結婚すれば皇族を離れるものだと思ってずっと成長されているわけですから、突然、女性宮家にといわれても抵抗のある方もいらっしゃるかもしれないですね?
(山下晋司さん)
「そうですね、これは、今回の有識者会議でも議論に出ていますけれども、結婚したら皇室を出るという制度の下でお育ちになっていますので、ここに来て『制度が変わりましたから、結婚しても皇室から出られません』というのは、できないだろうと、その方のお考えを尊重しなきゃいけないだろうという意見が出ています。仮にそういうふうになったとしても、例えば、佳子内親王殿下がご結婚されるとなったときに『皇室をお出になりますか?皇室にお残りになられますか?』というのは、佳子内親王殿下の意思を尊重すべきだというふうに、おそらくなるでしょうね。」

Q.眞子さんがご結婚の際に、秋篠宮さまが、憲法の上では両性の合意をもってのご結婚だと言われました。これは今後の1つのキーワードになるような気もしますが?
(山下晋司さん)
「今の女性皇族の結婚というのはそれでいいと思います。ただ一方で、男性皇族の結婚というのは三権の長や皇族の代表が入った皇室会議で認められないと結婚できないのです。仮に、女性皇族が結婚したらその配偶者と子どもも皇室にお入りになるというような形になれば、今の男性皇族と同じように皇室会議で認められなければならないとなるはずです。今、議論している案は、女性皇族はそのまま皇室にいらっしゃるけれども、配偶者は皇室に入らないという、変則の場合はどうするのかというところですけれど、国は今までどおり、プライベートでどうぞご自由にというふうにはならないと思います。」

旧宮家(旧皇族)とは

 そして、旧宮家に残る男系男子の皇族の“養子縁組”についても議論がなされています。

 旧宮家(旧皇族)とは、1947年に皇籍を離脱した11宮家、51人の皇族のことです。GHQ(連合国最高司令官総司令部)の指令により皇室財産が国庫に帰属させられたため、経済的に皇室を維持できないための離脱でした。

 そのなかでも、男系が残るとされる旧宮家は4つあります。北朝第3代 崇光(すこう)天皇の第一皇子を初代とする伏見宮家(ふしみのみやけ)から繋がる竹田家、東久邇(ひがしくに)家、久邇(くに)家、賀陽(かや)家で、20歳以下の未婚の男系男子は少なくとも10人いるとみられています。

 しかし、皇室典範、第9条には「天皇及び皇族は養子をすることがでない」と定められおり、皇室では「養子縁組」が禁止されています。その理由は、恣意的に皇位継承順位が変更されてしまう恐れがあること、皇族費が増大してしまうという指摘があるためです。

Q. 養子縁組をするには、皇室典範を改正するのか、また特例でやるのかっていうことになって、これもなかなかハードルが高そうですね?
(山下晋司さん)
「今の上皇陛下のご退位のときと同じような話ですけれども、改正するのか、特例法でいくのかというところの議論はされるでしょうね。

男系男子の皇族の養子縁組を可能にするという案について

 旧宮家の男系男子を皇族に迎えることについて、これまでの有識者会議出席者からは「10世も20世も離れると、血縁関係はあるだろうが、それにより正統性を得ることは難しいのではないか」と、現状を維持すべきだという意見がある一方、「長い伝統ある皇族の家系に生まれ、これまでも身を慎んで暮らしてこられた男系男子の方が皇族になることは国民にとっても説得力があるのではないか」と変更を示唆する意見も出されました。

 また、養子となる対象や、その配偶者と子どもについては「本人に皇族となる意思を明確に表明してもらう必要があるので、基本的に成人を対象とすべき」という意見や「家族単位で養子にするのがいいのではないか」という意見も聞かれました。

Q. 幼い頃から将来は皇室でご公務を担うという教育を受けてそういう環境にいらっしゃる方と、成人になっていきなり皇室にと言われる方では全然違うと思いますが?
(山下晋司さん)
「皇族もしくは、準皇族みたいな形もあってもいいかもしれませんが、そういった方と皇位を継ぐ、要は天皇になる可能性が高い方を分けて考える必要もあるのかもしれないですね。旧皇族末裔の男系男子の方に皇室に入ってもらっても、その方が皇位継承権を持つのではなくて、皇室に入っていただいた以降、お生まれになったお子さんやお孫さんから皇位継承権を持つ、国民が、ご誕生のときからその方を知っている、その方も皇室の中で育つ、そういう方から皇位継承権を持つという考え方だってあるわけですから。」

安定的な皇位継承には

 安定的な皇位継承について、元宮内庁職員の山下さんによると「天皇の地位は国民の総意に基づく。国会は多数決ではなく全会一致を目指すべきだ。そのためには、ほとんどの人が納得する落としどころが必要。女性・女系天皇容認、旧皇族の末裔の男系男子の皇籍取得、男系男子優先、これら全てを盛り込むしかないのではないか。」ということです。

(山下晋司さん)
「今、有識者会議で出ていますのは、“皇位継承の問題”は先送りしましょうと。ただ、悠仁親王殿下がお一人もしくはそのご家族だけになってしまうので、宮内庁がお世話をするというのとは違う意味で、一族として精神的な支えになる皇族がいるだろうと。ですから今は皇族の数を増やすことに専念しようじゃないかということですよね。」

(情報ライブミヤネ屋 2021年12月6日放送)

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